| ただしというか当然ながら市販化にいたらず永遠に闇に葬られることに |
BMWが自身のFacebookにて、なんと「過去にV16エンジンを開発していた」という事実を公表。
自動車史上「16気筒」エンジンは皆無ではなく、古くはキャデラック・シックスティーン、チゼタV16T、現代だとブガッティ・ヴェイロン、ブガッティ・シロンも16気筒エンジンを搭載していますね。
なお、ドバイ初のトンデモハイパーカー、デヴェル・シックスティーンも「16気筒(V8を2つ連結している)」を採用し、こちらは5000馬力を発生することで知られます。
80年代はなんでも大きくなっていた時代だった
BMWがこの「V16」をテストしていたのは1987年、そしてこのエンジンのコードネームは「ゴールドフィッシュ」。
これはBMWの持っていた5リッターV12エンジン(M70B50/299PS)をベースにして6.6リッターへと排気量を向上させたもので、出力は408PS。
排気量アップに比してパワーアップ幅が大きく、つまりこれはエンジンの発する熱が非常に大きいということになりますが、テスト車であるE32世代の7シリーズ(750iL)に無理やりV16を押し込んだ結果、クーリングシステムをフロントに搭載するスペースが無くなってしまい、冷却システムがリアトランクに増設されることに。
よって、一瞬「ミドシップなん?このクルマ?」というほどのエアインテークが車体後部に設けられることとなっています。
なお、このプロトタイプの名称は「767iL Gildfisch(Goldfish)」、もしくは「シークレットセブン(Secret Seven)」と呼ばれたそうですが、テストの結果、理由は明かされていないものの「V16エンジンは採用されることはなく、闇に葬られる」ことに。
どうやってこの形状を決定したのかも謎ではあるものの、複雑な形状をうまく作っていることがわかります。
これがV16エンジン。
片バンク8気筒、というところに度肝を抜かれますね。
そしてリアには放熱用のファン。
かつては高級車=V12だったが
今の時代からは信じられないことですが、80年代はエンジンや排気量がどんどん拡大していた時代で、「高級車になればなるほど」エンジンが巨大化(そして、さらなる巨大化を目指したのがこのV16だと思われる)。
高級車=V12エンジン搭載というのは当時の常識でもあり、よって、高級車を作るメルセデス・ベンツ、BMWはその名残で現代でもV12エンジンを採用。
ただしメルセデス・ベンツは環境規制の関係で順次V12エンジンを廃止していて、現段階で残るV12エンジン搭載モデルは「メルセデスAMG」にて2モデルを残すのみというのが現状です。
BMWについても環境規制から逃れられるものではなく、おそらくは現行7シリーズの終了とともにV12エンジンがBMWの歴史から永遠に姿を消すことになりそう。
一方でV12をそのブランドのコアバリューとする自動車メーカーもあり、その代表格でもあるフェラーリは「いかなる手段を使用してもV12を生き残らせる」方向です。
ランボルギーニもV12エンジンを存続させる意向ですが、フェラーリが「自然吸気、V12エンジン単体」での生き残りを目指すのとは異なり、「自然吸気V12エンジン+ハイブリッド」での存続を模索中。
そしてアストンマーティンはV12エンジンを「ターボ化」することで継続。
これらV12エンジンがいつまで存在できるのかはわかりませんが、今回の「V16」のようなチャレンジを行うメーカーはもう二度と現れることはないと思われ、大排気量、マルチシリンダーエンジンは「消えゆくのみ」という運命にあるのはちょっと寂しい、とも思います。