| 「独立」を貫いている自動車メーカーも結構多い |
さて、現在は自動車メーカー間によって自動車ブランドの売買が頻繁に行われ、「どのブランドがどのグループに属するのか」わからなくなってくる場合も。
ブガッティのように「フランスで設立→イタリアで復活→またフランスで新会社設立」という例や、ミニのように「ブランドだけBMW(ドイツ)の管理下におかれ、主たる生産は英国のまま」であったり、「ブランドと国」との結びつきも希薄になっているのが現代だとも言えそうです。
なお、こういった「グループ化」が加速しているのは自動車の開発コストの増大が原因だとされ、小規模メーカーはコストをかけて先端技術を開発することが難しいため。
よってどこかの「グループ」に属して開発コストを削減したり、「提携」によって他社との間で開発コストを平準化するわけですね。
ここで、どのブランドがどのグループに属しているのかを見てみましょう。
フォルクスワーゲングループ
現在のところ、世界で最も販売台数が多いのがフォルクスワーゲングループです。
大衆車や商用車、そしてスーパーカー/ハイパーカーブランド、バイクブランドまでも傘下に収め、世界中のあらゆる要望に対応していると言えるでしょう。
現在は12ブランドを保有し、デザインカンパニーとしてイタルデザイン(ジウジアーロ)の株式も所有しています。※実際に株式を所有しているのはランボルギーニだと言われる
Volkswagen(フォルクスワーゲン) Audi(アウディ) Bentley(ベントレー) Bugatti(ブガッティ) Lamborghini(ランボルギーニ) Porsche(ポルシェ)・・・リマックに15%超を出資 SEAT(セアト) Skoda(シュコダ) MAN(マン) Scania(スカニア) Volkswagen Commercial Vehicles Ducati(ドゥカティ) Italdesign(イタルデザイン) |
なお、フォルクスワーゲングループは「ディーゼル不正事件」の影響を強く受け、日本ではもう忘れ去らているものの、欧州や米国では未だにこの事件が暗い影を落としており、エンブレムや経営陣の一新にてイメージ回復を図っています。
トヨタ自動車
現在「世界二番目」の販売規模を誇るのがトヨタ自動車。
直接傘下に収めている自動車ブランドとしてはダイハツ工業と日野自動車のみですが、マツダ、スズキとの提携を行っていて、スバルについては高い比率(20%)にて出資しており、よってスバルも事実上の「トヨタ傘下」と言えるかもしれません。
トヨタ自動車 ダイハツ工業 日野自動車 |
なお、トヨタはいかなる状況にあってもリストラを行わないことを信念として持っており、「カネを使わず知恵を出せ」というモットーのほか、行動指針として「豊田綱領」も掲げています。
一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし
一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし
一、華美を戒め、質実剛健たるべし
一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし
一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし
トヨタ自動車
ルノー・日産・三菱自動車連合
カルロス・ゴーンの逮捕そして逃亡など、ネガティブイメージの尽きない日産。
それでも世界的に見れば、連合(アライアンス)全体で「ナンバー3」の販売規模を誇ります。
電動化を進めていることでも知られますが、2020年にはエンブレムの変更、そして「再建プラン」の立案と実施によって再起をかけています。
Nissan(日産) Mitsubishi(三菱) Dacia(ダチア) Alpine(アルピーヌ) Infiniti(インフィニティ) Datsun(ダットサン) Lada(ラーダ) Renault-Samsung(ルノー・サムスン。韓国のみ) Venucia(ヴェヌーシア/中国) |
GM(ゼネラルモーターズ)
現在、販売台数において世界4番目の規模を誇るのがGM。
ただしGMというブランドそのものはなく、様々なブランドの集合体がゼネラル・モータースを形成している、ということがわかります。
なお、かつて保有しており、しかし廃止となった「ハマー」ブランドを復活させることを発表済みですが、新生ハマーは「一つのブランド」ではなく、GMCブランドの中に格納されるサブブランドとして機能することになるようですね。
北米市場に限ってですが、ホンダとも業務提携を行っています。
Buick(ビュイック) Cadillac(キャデラック) Chevrolet(シボレー) GMC Autobaojun(中国) Jiefang(中国) Wuling(中国) Holden(ホールデン。すでに廃止) |
ステランティス
「ステランティス」とは聞き慣れない名ではあるものの、これはPSA(プジョー・シトロエン)とFCA(フィアット・クライスラー)とが合併することによって誕生した新会社。
規模的には「世界第4位」に位置する、と言われます。※まだ新会社での決算は発表されていないので、”仮想”4位ということになる
なお、この新会社名はラテン語の動詞「stello」にちなんだもので、「星たちとともに輝く」という意味を込めているのだそう。
Chrysler(クライスラー) Dodge(ダッジ) Jeep(ジープ) Ram(ラム) Fiat(フィアット) Alfa Romeo(アルファロメオ) Fiat Professional(フィアット・プロフェッショナル) Lancia(ランチア) Maserati(マセラティ) Peugeot(プジョー) Citroën(シトロエン) DS Opel(オペル) Vauxhall(ヴォグゾール) |
ヒュンダイ(現代自動車)グループ
日本からは撤退済み(再参入もウワサされる)なのでいまひとつピンときませんが、現在世界で5番目の規模を誇る自動車グループ。
デザインを重視した戦略を取り、ランボルギーニやブガッティ、ベントレー等から多くのデザイナーを引き抜いていることでも知られます。
ただ、そのデザインの素晴らしさに対して品質がついてこず、ここ最近は様々なトラブルが報じられている模様。
なお、海外自動車メーカーの要人を獲得することは多いものの、海外自動車メーカーのブランド買収に興味はないと見え、あくまでも自社そして韓国のブランドを主軸に展開してゆくようですね。
参考までに、そのエンブレムは「人と人とが向かい合って握手をしている」姿を表現している、と言われます。
Hyundai(ヒュンダイ) Kia(キア) Genesis(ジェネシス) |
ダイムラー
メルセデス・ベンツを筆頭に展開するのがダイムラー。
メルセデス・ベンツ(AMGとマイバッハもここに内包)とスマート以外は基本的にバスや商用車ブランドばかりという構成を持ち、何度かの合併や社名変更を繰り返していますが、そのルーツとなる「ベンツ社」はカール・ベンツによって1883年に設立されています。
Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ) Smart(スマート) Mercedes-Benz Trucks Fuso(ふそう) Mercedes-Benz Vans(メルセデス・ベンツ・バン) Mercedes-Benz Buses(メルセデス・ベンツ・バス) Setra Thomas Built |
なお、現在の筆頭株主は中国は吉利汽車の創業者である李書福氏であり、スマートの株式については半数を吉利汽車に譲渡した、と報じられています。
BMWグループ
かつてはベントレー、ランドローバーを保有していたものの、現在は「BMW」「ミニ」「ロールスロイス」に絞って展開中。
自動車業界の中ではかなり早い段階からエレクトリック化を進めてきた会社であり、それは今後も同様だと思われます。
創業は1916年で、長年そのエンブレムは「プロペラを表す」とされてきたものの、近年になってBMWが公式にそれを否定しています。
BMW アルピナ MINI(ミニ) RollsRoyce(ロールスロイス) BMWモトラッド(バイク) |
なお、BMWはアルピナの株式を取得しており、2026年から新組織として活動することも決定していますね。
フォード・モーター
ゼネラル・モータースの直接のライバルではあるものの、意外や保有しているのは「フォード」「リンカーン」の2ブランドのみ。
かつてはマツダやアストンマーティン、ジャガー・ランドローバー、ボルボの株式を保有していましたが、マツダの株式はマツダへ、アストンマーティンはクウェートの投資グループへ、ジャガー・ランドローバーはインドのタタへ、ボルボは中国の吉利汽車(正確には持ち株会社の浙江吉利控股集団)へと売却しています。
本国では「(マスタングを除く)乗用車から撤退してSUVとトラックに集中」という驚きの戦略を採用していますね。
Ford(フォード) Lincoln(リンカーン) |
TATA(タタ)
ジャガー・ランドローバーを取得したことで有名になったインドのタタ。
「世界一安い車」を作ることでも知られますが、その経営手腕はたしかなもので、タタ移行後のジャガー・ランドローバーの復活は周知の通り。
Land Rover(ランドローバー) Jaguar(ジャガー) Tata Daewoo Commercial Vehicle Company |
吉利汽車
ボルボやロータスを取得したことで名を挙げた中国の吉利汽車。
いまのところ傘下に入ったボルボ、ロータスとも好調であり、新ブランドも快調な滑り出しを見せていますね。
Geely Auto(ジーリー) Volvo(ボルボ) Lotus(ロータス) Proton(プロトン) London EV Company (ロンドンタクシー) Polestar(ポールスター) Lynk & Co Yuan Cheng Auto(中国の商用車) Terrafugia(空飛ぶ車の会社) |
そのほか、「独立系」だとこういった自動車メーカーも
そして上記のような「グループ」に属さないメーカーも存在し、代表的なのはフェラーリ。
以前はFCAに属していたものの、上場後にFCAが(資金が必要だったので)フェラーリ株を放出し、その結果フェラーリは晴れて独立系自動車メーカーへと復帰しています。
ただ、事実上フェラーリをコントロールしているのはフィアット創業者一族のアニエッリ家なので、FCAと強い関係性を保っています。
そのほかアストンマーティンはカナダの富豪であるローレンス・ストロール氏、マクラーレンは投資家グループによる所有。
日本だとホンダ、マツダ、スバル、スズキは独立系です(いずれも他社と業務提携関係にはあり、スバルはトヨタと資本提携関係にある)。
ケーニグセグ、パガーニ、リマックといった小規模ハイパーカーメーカー、テスラ、モーガンも独立を貫いていることで知られます。※リマックはポルシェから15.5%の比率で出資を受け入れている
中国の自動車メーカーと海外の自動車メーカーとの「合弁」はこうなっている
なお、中国国内にて自動車を生産する場合、基本的に現地企業との「合弁企業」を設立する必要があり、ここでどういった組み合わせがあるのかをピックアップしています(海外メーカー1社あたり、現地企業2社までを対象に合弁を設立できる)。
第一汽車(FAW)・・・フォルクスワーゲン、トヨタ、ダイハツ、マツダ、アウディと合弁を展開 上海汽車(SAIC)・・・フォルクスワーゲン、アウディ、GM、セアトと合弁を展開。MGブランドを保有東風汽車(DFM)・・・日産、ホンダ、プジョー/シトロエン、キアと合弁を展開 長安汽車(CHANGAN)・・・フォード、スズキ、三菱と合弁を展開。イヴォークのパクリ車を製造するLANDWINDブランドを保有 奇瑞汽車(CHERY)・・・合弁はなく自社ブランドのみで企業活動を行う珍しいパターン 北京汽車(BAIC)・・・メルセデス・ベンツ、ヒュンダイとの合弁を展開 広州汽車(GAC)・・・ホンダ、トヨタ、フィアット、三菱と合弁を展開 吉利汽車(GEELY)・・・ボルボ、ロータスを買収、新ブランドLynk&Co.を展開 長城汽車(GREATWALL)・・・BMW(MINI)と提携しアメリカに工場建設 比亜迪汽車(BYD)・・・メルセデス・ベンツとEV生産で合弁 華晨汽車(BRILLIANCE)・・・BMWと合弁 浙江衆泰控股集団(ZOTYE)・・・ポルシェ・マカンほかのパクリメーカー。フォードとEV生産で合弁設立 江淮汽車(JAC)・・・フォルクスワーゲンとEV生産で合弁 一汽轎車・・・マツダと合弁 |