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(後編)久々にオールマイティで完璧なクルマが出てきたな。ヒョンデ アイオニック5 Nを特設サーキットと公道で試乗、ドリフトも体験してみた【動画】

ヒョンデ アイオニック5 N

| いくつかの懸念事項は存在するものの、現段階でアイオニック5 Nは「限りなく完璧に近い」と考えていい |

ヒョンデがここまでのレベルのクルマを作ることができるとは考えてもみなかった

さて、ヒョンデ アイオニック5 N試乗イベント「IONIQ 5 N トラックデー」参加レポート、今回は「後編」。

前編ではそもそもアイオニック5 Nとは何者なのかについてお伝えしており、今回は実際に試乗した印象などをお伝えしたいと思います。

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ヒョンデ IONIQ 5 N トラックデーはこんなイベント

そこでまずはこの特別試乗会、「IONIQ 5 N トラックデー」の内容について紹介したいと思いますが、1セッションあたりには8組が参加し、この8組が半々に分かれて「公道試乗」「特設会場での限界走行とドリフト」を行うわけですね(それぞれのプログラムを終えた後に入れ替わる)。

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ちなみに会場は「N」のコンセプトカラーでもあるパフォーマンスブルー一色。

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様々なグッズ、配布される品々などすべてがこのカラーに統一され・・・。

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こちらは「Nキャンデー」。

これらのグッズを見てもヒョンデの力の入れようがわかります(ぼく的にはこのキャンデーは大ヒットである)。

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ヒョンデ アイオニック5 Nの試乗はこんな感じで進められる

そこでぼくはまず「特設会場での限界走行とドリフト」を先に行う組へと振り分けられ、そして滞りなくすべての試乗を行えるようIONIQ5 Nが(少なくとも)8台も投入されており、実際のところ試乗に関しては待ち時間など発生せず、すべてがスムーズであったと思います(そのほかスタッフの配慮や対応、進行など全てにおいて優れたイベントであったと思う。誠に感謝)。

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ちなみに現時点ではIONIQ 5 Nは正式に発売されておらず、よって価格も「未定」です。※650馬力にちなみ、6月5日に発表され、その際に価格(予価は900万円前後)が発表されるとのこと。

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まず限界走行ではインストラクターの運転にてコースを1周まわりながら説明を受け、その後に自身の運転にて走行することになりますが、ここから特設コース内での試乗は(同乗であっても)すべてグローブにヘルメット着用となります。

もちろん肌の露出はNG、衣類は「綿製品を推奨」、さらにドライバーだとレーシングシューズ推奨というハードコアぶり。

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その後はインストラクターとシートをスイッチすることになりますが、当日はあいにくの雨でもあり、しかし僅かな距離の移動であっても雨に濡れないようにスタッフの方が傘をさしてくれるという親切対応ぶり。

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そして習熟のためにまずはゆっくりとコースを走り、その後はローンチコントロールやNグリン・ブースト、限界走行を試すことになるのですが、ローンチコントロールでは「失神しかねるほど」の速さを見せ、文字通り血液が体の後ろへと持ってゆかれる感じです。

なお、アイオニック5 Nの0-100km/h加速は3.4秒なので(ハイパフォーマンスEVの中では)さほど速い部類ではないものの、そのトルクとパワーの出方が尋常ではなく、「エンジン回転とともにパワーとトルクが上昇する」ガソリンエンジンとは全く異なり、イキナリ「ガツンと」来るという印象。

参考までに、ぼくがこれまで自分で運転した中で「もっとも加速が速かった」のはテスラ・モデルX(かつてのパフォーマンス)ですが、これは0−60マイル加速1.9秒を誇っていたものの、感覚的なものだとアイオニック5 Nはこれよりも速いように思えます。

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ちなみにですが、ヒョンデはアイオニック5 Nについて「数値のみの速さを追求するのではなく、運転する楽しさやコントロール性を追い求めた」としていて、たしかに運転した印象では「気持ち悪い速さではなく、”楽しい”と感じる速さ、そしてクルマを支配下における速さ」という印象も持っていて、そのコントロール性は(ヒョンデの目論見通り)非常に優れていると言って良いかと思います。

なお、同じヒョンデのEVであっても、コナはフロアが高く、車線変更や段差超え、加速や減速時には(その重心の高さに起因してか)揺れを感じたものの、アイオニック5 Nではまったくそういった挙動が感じられず、ビシリと安定したまま。

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とにかくアイオニック5 Nのサスペンション(ホイールGセンサーと6軸ジャイロ内蔵)の出来は素晴らしく、そしてこの安定性はトルクベクタリングとセットになっているものと思われ、コーナリング時には外側のサスペンションの減衰力を高めつつ、外輪にトルクを大きくかけることで車両を安定させながら車体を強力に(物理の方を速無視して)曲げてゆくようですね。

そしてアクセルを抜くと回生ブレーキ(これだけで0.4Gのストッピングパワーを発生させる)によって自動的にフロントに荷重が移り、そこでステアリングホイールを切ってアクセルを踏み込むと(リヤアクスルに内蔵された)電制デフによって車体の向きがガクンと変わりますが、セッティングとしては「弱アンダー」、つまり非常にコントロールしやすくスピンしにくい設定です。

参考までに、N「グリン」ブーストのグリン(Grin)とは「ニヤリとする」という意味があるそうで、たしかにこれを押すことでかかるブースト(ターボチャージャーやスーパーチャージャーよりも瞬時に、かつ強力にブーストが掛かる)を体験すると「ニンマリ」してしまいます。

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そのほか特筆すべきは「8速デュアルクラッチ」を模した仮想トランスミッション(もちろん実際にトランスミッションは装備されない)設定を持つことが挙げられ、この「疑似トランスミッション」はパドルにて操作でき、その感覚は文字通り「8速DCT」。※パドルが短く、位置をちゃんと把握していないと「空振り」してしまう。ぼくはステアリングコラムからパドルが生えるクルマに慣れているので、盛大に空振りしてしまった

シフトダウン時のサウンド(V8っぽい低く太い、ビートの効いた疑似サウンド)、そしてシフトダウンによって上がった「仮想エンジン回転数」によるガツンという加速もガソリン車そのものであり、このクルマにEVだと知らずに乗ったならば、「EVである」と気づくことはまずないかもしれません。

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ヒョンデ アイオニック5 Nはドリフトコントロールも容易だった

アイオニック5 Nには「ドリフトモード」が内蔵されており、これを使用すれば比較的簡単にドリフトを行うことも可能です。

停止状態もしくは極低速にステアリングホイールを思いっきり切ってアクセルをベタ踏みすると、いとも簡単にリアを降り出すことになりますが、その後のアクセルコントロール次第では360度ターン、ハンドル操作を加えて8の字を描くこともできるわけですね(ぼくはようやく360度回ることができたくらいであるが、テールの振り出しはまず誰でもできる)。

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そしてその後はプロのドリフターの運転するドリフト仕様車(ドリフト用に軽量化し、安全のため位にロールケージ、後輪をロックさせるために油圧ブレーキを追加し、タイヤを小径化した以外はほぼ市販モデルと同じらしい)に同乗しドリフト体験。

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助手席に乗り込み・・・。

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ハーネスによって縛られて究極のドリフトを体感できます。

なお、何周もくるくる回っていると、自分が回っているのか風景が回っているのかわからなくなり、完全に方向感覚を失ってしまうのですが(自分でドーナツターンをしていても同じ感覚に陥った)、それでもプロのドライバーは完全に車両をコントロールしており、「さすがプロ」といった印象です。

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最後はアイオニック5 Nの「公道試乗」でシメ

そして本日の試乗プログラム「最後」は公道試乗。

ここでもうひとつ驚かされたのは「特設コースにおいて、あれだけハードな走りを見せた」レーシングカーのようなアイオニック5 Nではあるものの、公道に出て普通に走ればまるで高級車のような振る舞いを見せること。

これはやはり優れた足回りに起因するものと思われ、文字通りのフラットライドであり、ここまで安定した姿勢を保つことができるクルマはそうそうないかもしれません(アイオニック5 Nのホイールベースは3メートルもあり、これも関係していることは間違いない。ただ、これに起因して配点半径は6メートルを超える)。

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そして各ドライブモードの「変化の幅」の大きさも特筆モノで、アイオニック5 Nに備わる「エコ」「コンフォート」「スポーツ」ではそうとうに大きく出力特性と足回りの変化幅が大きく、とくに出力特性は「激変レベル」といって良いかと思います。

これについては(エンジン特性という物理的な壁を超えることができない)ガソリン車では実現できない範囲だと思われ、逆に「電気自動車だからこそ」できた芸当だと考えていいのかも。

つまりアイオニック5 Nは「ガソリン車に対抗しようとした」スポーツカーではなく、「電気自動車にしかできないこと」をそもそもの設計の原点に置いている可能性が高く、多くの「ガソリンエンジンをエレクトリックモーターに置き換えた」だけのエコロジー志向のEVとは一線を画す存在であるとも捉えることが可能です。

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そのほか「高い静粛性」についても言及する必要があり、つまり車内が非常に静かということ。

EVなんだから当たり前じゃないと思うかもしれませんが、EVはノイズの発生源という点ではガソリン車に対してアドバンテージを持つものの、航続距離を稼ぐために軽量化を行わなければならず、よって遮音材などを省かれる傾向があり、盛大にロードノズを拾うケースがあるわけですね。

実際のところ、騒音計で車内のノイズを計測してみると、高速道路走行時(時速80km/h)では電気自動車であるBMW i3と、V10ガソリンエンジンを積むランボルギーニ・ウラカンの数値が同じだったということがあり、電気自動車は実際に道路を走り、かつ高速走行になればなるほど車内がうるさくなることも(一部の高級EVはこの限りではない)。

ただ、アイオニック5 Nについては、試乗時の雨天という「ルーフを叩く雨の音、タイヤが跳ね上げる水の音」が車内に入りやすい不利な状況下においても高い静粛性を保っており、フロア、ルーフの防音がしっかりしているということがわかります。

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正直言うと、「もうここまでくればIONIQ5 Nに欠点や懸念はないんじゃないか」とも考えており、あるとすれば日本における知名度(ならびにブランドバリュー)の低さ、読めないリセール、拠点の少なさ、電気自動車としての充電問題といったところですが、ぼくとしてはゴルフR(ゴルフ7世代)以来の「オールマイティで完璧に近いクルマが出てきたな」とも考えています。

ちなみにですが、公道試乗時の注目度は抜群であり、周囲を走るクルマから熱視線を注がれることになるものの、ぼくの体感上では「スーパーカーよりもよく見られる」。

ただしそれはボディ形状(シルエット)よりは、”アイコニックな”ピクセルLEDを採用したデイタイムランニングランプやテールランプ、ウインカーによるところが大きいのかもしれません。※実際のところ、ヒョンデの乗用車におけるデザインは、このピクセルLED登場後に一変しており、ヒョンデの新しい歴史を作ったデザインでもある

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そして最後に記しておきたいのは「試乗イベント中、故障が生じなかったこと」。

これも経験上ですが、こういったハードな試乗イベントにおいて、そして誰がどう操作するかわからないイベントでは、多くの場合で「試乗車が物理的に故障したりエラーが出る」ものの、アイオニック5 Nではいずれの車両にもなんら問題が生じなかったようで、これもまた驚かされたところです。

その他の画像はFacebookのアルバム「ヒョンデ IONIQ5 N」に保存しています(157枚)。

ヒョンデ IONIQ5 N試乗イベント「アイオニック 5 N トラックデー」の様子を収めた動画はこちら

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