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「欧州の排ガス規制が厳しすぎるため」トヨタ、マツダ、フォード、GMがテスラに助けを求め、テスラは2025年に1600億円近くも臨時収入を得る可能性が報じられる

テスラ

| これまでにもテスラは「規制未達企業」のためにクレジットを販売してきたが |

EV不振の流れを受け、それが大きく膨らむ可能性も

さて、排ガス規制が「厳しすぎ」、それによってテスラにとっての思わぬ収益が発生するかもしれない、との報道。

順を追って説明してゆくと、ヨーロッパで厳しい新しい排出規制が施行され、自動車メーカーはその対応に苦しんでいるわけですが、この規制では「各企業に対し、販売台数に基づいた特定のCO2排出目標(制限)が設定され、さらに販売のうち約20%はEV(電気自動車)でなければならない」というもの。

ただし昨今報じられるとおり、いずれの古参自動車メーカーも(EVへの完全方針転換を宣言したメーカーですら)「EVが売れないので、EVよりもハイブリッド」へと路線を転換しており、規制を守ったがために販売を失ってしまうことを恐れた行動を取っています。

現在、自動車メーカーは「規制」を守ることで倒産してしまう可能性がある

つまり自動車メーカーは「規制を二の次」にしているわけですが、これは「規制をも守ったとしても会社や従業員を守れない」「そのための手助けを政府が行ってくれない」からで、自動車メーカーは、政府が勝手に定めたこの基準を満たすことに疑念を抱いているわけですね。

よって、多くの自動車メーカーは意図的に規制を守らないという道を選択していて、しかしこれには当然リスクが伴っており、そのリスクとは「高額な罰金」。

規制値をオーバーする毎にいくら、という罰金が決められているわけですが、罰金を払ってでも守りたくない(守れない)のがこの規制ということになり、ただ、この罰金については回避する方法が存在していて、いわゆる「プール」なる手法を用いれば罰金を回避あるいは軽減することが可能です。

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規制未達による罰金回避のための「プール」とは

そこでこのプールについて説明しておくと、「規制をクリアした企業は、規制を下回った分の数値をクレジットとして販売できる」という制度とその活用を指しており、たとえばその企業が下回ったぶんの(マイナスの)CO2排出量を別の企業に「販売し」、それを購入した企業は「超過分と総裁できる」という仕組みです。

こう聞くと裏技のようにも見えますが、ちゃんと公的に認められた方法であり、つまり規制値を下回れば、罰金を支払わなくてもいいだけではなく、「利益」を得ることもできるというのが大きなポイントでもあるわけですね(政府としては、このクレジット販売による利益を目当てとして企業が電動化を加速させることを目論んでいるのかも)。

テスラはまったくCO2をそのラインアップから発生させない

そこでテスラの話が出てくることとなり、テスラのラインアップは全車種EVなので「CO2排出量がゼロ」。

よって規制値を大きく下回っていて、そのぶん「販売できる」クレジットが大量に存在し、実際にフォード、ステランティス、マツダ、スバル、さらにはトヨタなどの大手自動車メーカーへとそのクレジットを販売しています。

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まだ2025年は始まったばかりですが、自動車メーカーは「プール」を組むかどうかを決める必要があり、規制(目標)値に達しなかった場合に備え、今のうちにクレジットを購入しプールしておくことが得策だとされています(もちろんこのクレジットは安価ではないが、罰金を払うよりはずっといい。そしてクレジットの価格が”変動制”であれば、できるだけ早くクレジットを購入しておくべきである)。

参考までに、規定を超える排出ガス量に対しては「1グラムあたり105ドル」の罰金が科せられ、この罰金はあっという間に膨らむ可能性があるため(販売台数が多い自動車メーカーであればあるほど、この数字は雪だるま式に大きくなる)、テスラからクレジットを購入しプールすることが、「現在のところ」最も賢い経済的選択肢となるものと見られています。

そして現在の時点で、多くのアナリストは「2025年の年末までに、各自動車メーカーがクレジット購入のため、テスラへと支払う総額が10億ドルに達する」可能性があるという予測を出しており、「EVが売れない」「よってEVではなくハイブリッドをより多くラインアップする」という現在の風潮は、テスラに取って思わぬ収益の源になるかもしれないというわけですね。

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