| 当時の人気不人気に関わらず、個性の強い車は人々に記憶されやすい |
さて、時々欲しくなる中古車、「Mクーペ(Z3 Mクーペ)」。
これはZ3クーペの車体にM3と同じS型エンジン(初期はS50、後期はS54)を搭載したMモデルですが、相当に珍しい車です。
ただ、珍しいという理由も「少量限定車だった」からではなく、「あまりに人気がなく売れなかった」から。
ベースとなるZ3クーペも同じで、これらは「クーペ」と名がつくものの、実際はワゴンのようなシューティングブレークのようなボディ形状を持っています。
当寺からマニアに人気はあったが
なお、このMクーペは当時のM3(E46)に比較し、同じエンジンを積む割には軽量で、その理由はZ3そのもののベースが一世代までのE36だったため。
3シリーズはE36からE46にスイッチするにあたって大きく内容を刷新しており、ボディサイズの拡大に加えてサスペンションやブッシュ等の変更によって「乗り心地がマイルドに」変化しています。
よって、マイルドになったE46世代の3シリーズをベースとするM3より、「軽量で締め上げられた」Mクーペを好む人も多く、ただしそのあまりに珍奇な外観、実用性の乏しさから殆ど売れなかった幻のクルマでもありますね(当時の新車価格は700万円ちょっとだと思う)。
ただ、BMWもMクーペはおろか、Z3クーペ自体が売れるとは考えていなくて、当時の「Love it, or leave it(愛するか、でなければ立ち去れ)」というコピーからするに一種の市場調査もしくは挑戦として発売したフシも。
よって当然のごとく売れず、現在に至るまでZ3クーペの後継は登場していません(金輪際発売されることはないだろう)。
そんな「希少なZ3クーペの、さらに希少なハイパフォーマンス版であるMクーペ」ですが、日本市場に存在するのはなんと2台。
一台が389万円、そしてもう一台は「応談」となっています。
それでもこの価格は世界的に見てもそう高くはないようで、というのも海外で同年式のMクーペを見ると「500万円前後」が多いため。
加えて、このMクーペはコレクターによる「値上がり車認定」を受けていると言われ、販売数に対しての登録数が非常に少ない(半分くらいらしい)という統計もあり、つまり多くの人が「値上がりを待つためにガレージに保管している」ものと考えられます。
しかしながらこのクルマについては当時「テールハッピーなために事故を起こしやすく、日本のMクーペは全部事故車」と言われたりしたことがあり(真偽はわからない)、実際にフロントヘビー、かつリアサスペンションが非常にソフトだった、とも。
ぼくは当時Z3ロードスターに乗っていたのですが、実際にBMWは前後重量配分の改善に苦しんでいたようで、車体後部(バンパー裏)にはなんと20kgくらいの錘が仕込まれていたのも驚かされるところです。
こういった逸話を持つMクーペではありますが、そのスパルタンさ、デザイン的な潔さは現代のクルマ、そして未来の車にはとうてい望めないものであり、そこが「コレクターズアイテム」として認定されている理由なのかもしれませんね。
「Z3クーペ」も値上がり中
参考までに、MクーペのベースとなるZ3クーペはカーセンサー上で2台の登録があり、価格はそれぞれ125万円と148万円。
オープンモデルのZ3ロードスターに比較してかなり高い相場を維持しており、Z3クーペもどうやら「コレクターズアイテム化」しつつあるようです。
「Mロードスター」の国内在庫は1台のみ
なお、Z3ロードスターのMバージョンとして「Mロードスター」も発売されており、こちらのほうがMクーペよりは「まだメジャー」。
しかしながら国内在庫はカーセンサー上だと1台のみとなっていて、こちらの価格は328万円とけっこう高価。
ちなみにこの車両は足回りにチューンが施されているようですね(当時、スタディはじめ多くのショップがMロードスターを改造していた)。
BMW Z8も価格高騰
そしてZ3と同世代であるZ8もゆるやかに価格高騰中。
こちらの新車価格は1750万円くらいだったと記憶していますが、現在の価格は新車価格を上回っており、なかなかの人気だと言えそう。
ただしこちらも当時人気だったとは言えず、「想定したほど売れなかった」と聞いているものの、「当時は不人気で売れず、よって販売台数が少ないためにあとで希少価値が出て人気化した(ホンダ・エレメントのような)」例に該当するかもしれませんね。
参照:カーセンサーEdge