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ポルシェがGT3系のレッドゾーンを市販車最高レベルの9500回転に引き上げ?NAでパワーを出すにはこれしかない

2018/05/05

| パワーで先行するライバルに対抗するには回転数を上げるしかない |

ポルシェGT部門におけるロードカーエンジン担当者、トーマス・メイダー氏がメディアに語ったところによると、「ポルシェは自然吸気エンジンの可能性を捨てず、超高回転型エンジンの採用を検討している」とのこと。
具体的には4リッター・フラットシックスエンジンのレブリミットを(新型911GT3の9000回転から)9500回転に引き上げることを考えており、出力向上、信頼性においてチェックを重ねている、とのこと。

911GT3系のエンジンはもはやエンジニアリング的限界に?

なお、現在911GT3系に使用されるエンジンはポルシェのレーシングカーである911RSR、911GT3 R、911GT3 Cupに使用されるエンジンとほぼ同じで、異なるのは園周辺のエアボックス、エアフィルター、エキゾーストシステムくらい、とのこと。
現実的に911RSRでは9500回転がレブリミットとなっており、となるとロードカーのGT3系も「9500回転」を問題なく達成できそうですね。

ただ、上述のメイダー氏によると、「500回転上げるだけと言っても、それは容易ではない。なぜなら911GT3/GT3RSはロードカーだからだ」としており、この「高回転化」がドライバビリティを損なうことを懸念している模様。

たしかにホンダS2000でも初期型は250馬力/レブリミット9000回転だったものが「あまりに乗りにくい」ために242馬力/8000回転に引き下げられており、単にエンジンは高回転化すればいいというものではない、ということですね。

加えて現在の「レブリミット9000回転」は911GT3系にとって「パーフェクト」だとしており、500回転これを引き上げるだけでもシステム全体の調整が必要だとしています。



レブリミット引き上げはポルシェのエンジンにおけるパワーアップ達成の唯一の手段?

なお、ポルシェがエンジン回転数を引き上げようと考えているのは「パワーを上げたいがため」。
自然吸気エンジンにとってパワーを上げる要素は2つあり、一つはトルク、そしてもう一つは回転数。
パワー(主力)は一般に「出力(馬力)=2π × 回転数 × トルク」で求められ、トルクか回転数、もしくは両方を上げれば出力が向上することに。

トルクについては排気量が大きければ大きいほどトルクは大きくなるものの、ポルシェ911の場合はパッケージング上「6気筒」以上を積むことは難しく、そして1気筒あたりの排気量が667ccと「設計上の上限」に近くなっており、これ以上排気量を増やすことは相当に困難。
1気筒内の排気量はボア×ストロークで決まりますが、これを大きくするにはボアもしくはストロークを大きくする必要があり、ボアを大きくすると熱効率、ストロークを大きくするとサイズや振動といった問題が出てきて(そして回転数が高くなればなるほどこれらは問題に)、そう簡単に排気量を拡大できないわけですね。※ポルシェは過去に4気筒3リッターというエンジンを作っていたことがある

よってトルクを大きくできないなら回転数を上げればいいじゃないということになりますが、高回転になると問題になるのが各部の精度や耐久性。
ブガッティ・ヴェイロンが「時速400キロ」を突破するに当たっての一番の問題は「パワー」ではなく駆動系の精度と耐久性であったと言われますが、高回転を維持して走るというのは相当な負担がかかることに(しかしすでにレーシングカーでこれを達成しているので、ポルシェにとっては大きな問題ではなさそう)。
しかしながらあまりに高回転化すればロードカーとしての乗りやすさを損なうことになり、これもまた難しいということですね。

じゃあターボを装着すれば?ということになる、しかしそこで問題となるのは「ターボラグ」。
911GT3のようなクルマ(のドライバー)にとって「ターボラグ」は許容できるものではなく、今のところポルシェにとってもっとも有効な解決策が「許容回転数を上げる」ということになるのだと思います。
自然吸気エンジンを諦めれば911GT2RSのように700馬力も可能ではあるものの(もちろん容易ではない)、今回の「レブリミット9500回転化」はそもそも「ターボ化しない」ということが前提条件のはず。


現在、ライバルとも言えるマクラーレンやフェラーリは8気筒エンジンを積んでおり、しかもミドシップ。
ポルシェ911はリアエンジンで気筒数を増やせない、しかし回転数ももうギリギリ、ということでターボエンジンで巨大なパワーを手に入れてゆくライバルに対して「数字上」見劣りしていて、ここをなんとかしたい、ということなのでしょうね(ポルシェのパッケージングは限界に達しつつあるものの、フラットシックスやリアエンジンという、911を911たらしめる要素の重要性が大きすぎ、それらを変更できない)。

なお、レブリミット9500回転というエンジンを積むのはスズキ・カプチーノとレクサスLFA、マツダRX-8。
高回転で知られるランボルギーニ・ウラカン、アウディR8は8750回転がレブリミットとなっており、現時点で量産車において9500回転を超えるレッドゾーンを持つエンジンを積むクルマはおそらく無いと思われます(特殊なモデルを除いて)。

なお、こちらはポルシェ911RSR、911GT3Rのサウンド。

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