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豪快かつ繊細。自分史上最高価格&最高馬力のフェラーリF12ベルリネッタに試乗する

2015/07/11

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| やっぱりボクは「フロントエンジンのフェラーリ」が大好きだ

フェラーリF12ベルリネッタ。
現行フェラーリの中でもっともぼくが好きな車であり、機会があるならばぜひ手に入れたい、とすら思える車ですが、このたび試乗する機会に恵まれることに。

先代である599GTOに比べるとずいぶんフロントが短く見え、前傾姿勢が強まったようで筋肉質に感じますね。
おそらくは「FF」という4座が誕生したことで、思いっきりスポーツの方向へ振れるV12モデルを開発できるようになったためだと思いますが、とにかくこのF12ベルリネッタは今までのフェラーリV12モデルと異なる印象があります(V8モデルにおいて、カリフォルニアと458/488GTBのようにフロントエンジン/ミドエンジンで性格を分けることが出来たのと同じ現象だと思う)。

メカニカル的なことで言えば、F12ベルリネッタに積まれるエンジンの圧縮比が13.5:1という高い比率であることも特徴(中国のガソリンだとノッキングを起こしそう)。
プラットフォームはアルミ製で、599に比べてねじり剛性は20%向上。
それにもかかわらず70kgのダイエットに成功しているようですね。

フェラーリF12ベルリネッタはこんなクルマ

全長は4618、幅1942、高さは1273ミリ。
V12エンジンを搭載する車としては比較的コンパクトと言えます。
重量は1525キロ、トランスミッションは7速DCT、エンジンは6.3リッターで740馬力を発生。
価格は3590円で、この車は価格、馬力共にぼくが運転したなかではもっとも高いもの。

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2012年のジュネーブ・ショーで発表された時に、「加速、ラップタイムふくめ、あらゆる面において史上最速のロードゴーイングフェラーリ」と公式にアナウンスがあったことは今でも覚えており、そして方々から「とんでもなく速い」という話は聞き及んでいるので、正直運転するのはかなり怯みます。

さて、尻込みしていてもはじまらないので早速試乗に移りますが、ぼくの乗る個体はビアンコのボディカラーに眩いばかりのロッソの内装。
特に内装はピラー、ルーフ、カーペット、シートベルト、シートベルトの留め具部分までロッソ、というかなりお金がかかっていると思われる仕様です。

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フェラーリは内装のオプションが豊富で、比較的自分の実現したいような仕様を選べるのが良いですね。
イグニッション・キーをシリンダーに差し込んでひねり(これ重要。キーを差し込んでひねるのは神聖な儀式のようなもの)、ステアリング上のスタートボタンを押すとかなり大きめの音とともにエンジンが目覚めます。
フェラーリらしい乾いた音で、ポルシェやランボルギーニの重低音とはまた違う音質。
そしてランボルギーニやポルシェに比べると、「はるかに」大きな音ですね。
しかし振動は非常に少なく、不快に感じるようなところは皆無です。

さっそくクルマをスタート

右パドルを引いて1速に入れ、アクセルペダルを踏んで車をスタートさせますが、クリープのあるVWアウディグループの車に慣れているので、クリープの無いFCAの車(アルファロメオ、フェラーリ、アバルトなど)に乗ると一瞬戸惑います。
F12ベルリネッタはパワーが大きいせいか、比較的発進時の応答を遅らせているようで、けっこう踏まないと車が動き出さず、それまでにはかなり(アクセルを踏むことになるので)大きな排気音を発することに。

着座位置はかなり低いはずですが、ベルトラインが低く、かなり見切りは良いですね(このあたり、ベルトラインの高いカリフォルニアとは対照的)。
斜め後方の視界も良く、フロントがかなり長いことを除けば日常使いも問題はなさそうです。

ステアリングは非常に軽く、ロック・トゥ・ロックが2.0ということもあり、かなり小回りがきく印象。
敷地内をゆっくり出ていざ高速道路に乗りますが、料金所を出てアクセルを踏むと異常な加速を見せつけます(0-100キロ3秒以下はダテじゃない)。
このときモードは「RACE」に入れており、エンジンもとんでもない雄叫びをあげていますね。
暴力的とまで言える加速ですが、面白いのはフロントの接地感を失わないこと。
フロントに巨大で重いV12エンジンを載せているので当然と言えば当然ですが、フル加速してもしっかりフロントが接地しており、ステアリングのフィードバックも非常に正確。

フェラーリの特徴というと「ステアリングの繊細さ」があるとぼくは考えており、ポルシェのどっしりとしたハンドリング、最新ランボルギーニのゲームのような(現実味を超越した)切れ味を持つステアリングとはまた異なるものです。
ポルシェはロードインフォーメーションが非常に正確で、かつ情報量が多く、その情報に基づいて車を操作し、また車も反応を返す、というイメージ。
ドライバーに判断の時間を与えるという意味なのか、ポルシェはロック・トゥ・ロックもスポーツカーとしては異例にスローな3回転から3回転弱という数値になっています。

対してフェラーリはパワーとスピードが高く、ドライバーが反応するのを待っていると間に合わないということなのか、ドライバーが力任せに操作してもまったく無理なく曲がる、という印象を持っています(とくに458スペチアーレはその印象が強い)。

このあたりメーカーの考え方に差があるところで、とにかくフェラーリは強烈なパフォーマンスを誰にでも楽しめるだけのセッティングがなされているとぼくは思うのですね。
ポルシェはハンドリングとそれに対する反応を楽しむというところがトッププライオリティではないかと思いますが、フェラーリの場合は加速とハンドリング、というのが第一義にあるようには思います。

そしてフェラーリはけっこう人間工学に基づいたデザインを持っているというか、内装も一見未来的で他の車のは異なる操作系を持っているように見え、他の車にあるものがなかったり違う位置に付いていたりするのですが、それでも走り出すとすぐにそれに慣れてしまい、ずっとフェラーリに乗ってきたかのような馴染みを感じさせるのもまた興味深いところ(とくにステアリング上のウインカー)。

シートも同様で、硬いとも柔らかいとも感じさせず、どこか出っ張りが気になるところもまったくありません。
要は「なにも違和感を感じない」レベルにまで自然であり、これは非常に驚くべきことである、とも思うのです。
そして「なにも違和感=過不足がない」のは、どのような速度域、加速中、コーナリング中、段差越えでも同じで、いかなる状況においてもまったくドライバーに負担をかけないシート、と言えますね。

フェラーリというと「雲上ブランド」で敷居が高く、手の届かない美女のような印象もありますが、実際に運転してみるとあまりにユーザーフレンドリーで、まったく違和感や恐怖を感じさせずにパフォーマンスを余すところなく楽しめる、というのが実際に乗った感じです。

上述のように「今まで乗った中ではもっとも馬力の高い」車で、乗る前はかなり心配していたのですが、いざ乗ってみると恐怖を忘れて純粋に「楽しい」と思わせるところがありますね。

スーパーカーは乗りにくいというイメージもあるが

スポーツカーというと「乗りにくい」というイメージがあり、その乗りにくいのを御してこそスポーツカー乗り、という風潮があるかもしれませんが、ぼくは乗りにくい車では「楽しめない」と考えており(おいしい料理でも食べにくければ魅力も半減するように)、乗りやすく楽しいのがスポーツカー、と考えています。

フェラーリの場合は458イタリア以降からぐっとその傾向が強くなっていると感じており、ランボルギーニでもガヤルドからウラカンに以降するにあたり、そこは飛躍的に変わったところでもありますね。

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なお、以前にメーカーによって足まわりに対する考え方が異なるという記事をあげましたが、フェラーリもまた独自の足回りを持っています。
BMWグループは初期が硬くダンピング弱め、アウディやランボルギーニ、ポルシェは初期のあたりが柔らかくダンピングが強めなのですが(明らかにそれは意識させられる)、フェラーリは初期のアタリ、ダンピングともにシートと同様にどんな状況でも「意識させられる」ことは少ないようです。

これは非常に不思議で、試乗を終えても柔らかいとも硬いとも記憶に残っていないのですね。
ただこれは印象が薄いのではなく、自然すぎてなにも感じさせないわけです。
よって、ほとんどの人がフェラーリの試乗を終えた後の感想としては「速かった」「運転しやすかった」という曖昧なものになると思います。

他の車であれば思ったよりもハンドルが切れれば「よく曲がる」、ゴツゴツした乗り心地であれば「足回りが硬い」、カーブで体が横に流れるようであれば「シートのサポートが不足」という印象を受けると思うのですが、正直フェラーリの場合、なにもかもが自然すぎて「優れていることにすら気づかない」レベルのシート、足まわりを持っているのだと考えるのですね。

そのためにまったく不安なくアクセルを踏めて躊躇なくステアリングを切れるわけですが、その意味でもフェラーリは「加速とハンドリング」を存分に集中して楽しめるよう、足回りやシートや操作系をチューニングしているのだと思うのです。

誰がどんな環境でどう操作してもまったく破綻なく余裕で受け入れてみせる懐の深さがあり、ステレオタイプなピーキーなスポーツカーとは正反対と言って良いでしょう。

そしてこれは優れた加速性能とハンドリングを持つからこそできる技で、そしてフェラーリにしかできないことだとぼくは考えています(たぶんこのシートだけでも、他メーカーがフェラーリを超えるのは難しいだろうとぼくは思う。ましてやハンドリングや加速性能は言うに及ばず))。

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F12は現行フェラーリのフラッグシップですが、そのフラッグシップにふさわしいパフォーマンスに加え、日常性というところも非常に高いものだと思います(シートの後ろに荷物を置く場所まである)。

逆に気になったのは不正路で加速したり曲がったりすると若干ボディが揺れるように感じること。
このあたりホールベースの長さ、エンジンの質量を考えると、コンパクトなV8モデルに対して剛性感の差異を感じるのはやむをえないところかもしれませんね。

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なお低回転のトルクが太く、すぐにギアは7速まで上がります。
そこから加速しようとアクセルを踏んでも、トルクが太いのでキックダウンせずに7速のまま加速。
これをキックダウンさせようとすると、床までアクセルを踏まないとギアが下がらないようなのですが、F12のパワーで床までアクセルを踏むのはかなり勇気の必要な行為です。
よってギアを落として加速しようとするときはアクセルによるキックダウンではなく、左パドルを引いてギアを手動で落とすのが良いでしょうね(もちろん7速からの加速でもまったく不満はない)。

関連投稿:フェラーリ試乗会にて。F12ベルリネッタの画像

コーンズさん主催のフェラーリ試乗会にて、フェラーリF12ベルリネッタ。
前回に試乗しているので今回は試乗せずですが、現行のフェラーリの中ではかなりアグレッシブなルックスであり、かなり惹かれる一台。

歴代V12モデルの中ではかなり人気が高く、そのためか中古でもかなり高価で、同じフェラーリのFFとは(V12エンジン搭載という共通性を持ちながらも)かなり価格差がありますね。

実車を見てみると、フロントバンパーからフェンダー、リアバンパーに至るまで、本当によく出来たデザインだと思います。

ドアミラーの色が上下分割となるのは秀逸ですが、これは外側からだけではなく、乗車している時にも分割されている様子がわかるのが面白く、運転席に座った時に「特別な車」である、という印象を受け取ることができます。

なおF12ベルリネッタのボディカラーはレッドが多いようで、イエローは比較的少ない模様。

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