
| 同じ「296」といえどGT3車両は凄まじい迫力である |
それでも「296らしさ」を保っているのはさすがフェラーリというべきか
さて、フェラーリ 296GT3 EVO「LM Corsa(エルエム・コルサ) #60」を見てきたのでその様子を紹介したいと思います。
この車両は2026年9月に開催された「第50回 鈴鹿1000km」のPro-Amクラスにおいて優勝を果たた車両そのものであり、競技の際に車両に付着した汚れも「そのまま」。

この記事の要約
- 「第50回鈴鹿1000km Pro-Amクラス優勝車」、フェラーリ 296GT3 EVO LM Corsa 60号車が展示中
- 市販バージョンの296GTBの面影を色濃く残しつつも競技仕様へと各部がコンバート
- ドライバーの一人は元F1ドライバーのジャンカルロ・フィジケラ

フェラーリ 296GT3 EVO「LM Corsa(エルエム・コルサ) #60:概要
このフェラーリ GT3 EVO「60号車」のドライバーは以下の3名となっていて・・・
- 中西慧(Kei Nakanishi)
- 脇阪薫一(Shigekazu Wakisaka)
- ジャンカルロ・フィジケラ(Giancarlo Fisichella)
元F1ドライバーのジャンカルロ・フィジケラが名を連ねているところには要注目で、フィジケラは2000年代にF1で活躍し、ベネトン、ジョーダン、ザウバー、ルノー、フォース・インディアなどをドライブし、ルノー時代には3勝を挙げています。

ちなみに2025年の鈴鹿1000kmでは12番グリッドからスタートして26位であったため、2026年の「優勝」は文字通りの大躍進ということに。

2026年 #60 LM Corsaの戦績
GT World Challenge Asia 2026
2026年のLM Corsa #60は脇阪薫一/小河諒のコンビでGT World Challenge Asiaにも参戦し、その戦績は以下の通り。
| ラウンド | サーキット | 結果 | クラス |
|---|---|---|---|
| R5 Race 1 | 富士 | 2位 | Pro-Am 1位 |
| R5 Race 2 | 富士 | 7位 | Pro-Am |
| R7 Race 1 | 岡山 | NC | Pro-Am |
| R7 Race 2 | 岡山 | 9位 | Pro-Am |

そして最大のハイライトが鈴鹿1000km
そしてこの60号車のハイライトが2026年9月11~13日に開催された「Intercontinental GT Challenge 第4戦 第50回 SUZUKA 1000km」で、ここで60号車はみごと Pro-Amクラス優勝を達成し(総合順位は10位)、決勝では6時間30分、181周を走破することに。
総合優勝した#8 Porscheから3周遅れであったものの、Pro-Amではクラス1位であったというわけですね。

| 項目 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|
| 車両 | Ferrari 296 GT3 | Ferrari 296 GT3 EVO |
| チーム | LM Corsa | LM Corsa |
| ゼッケン | 60 | 60 |
| 鈴鹿1000km | 総合26位 | 総合10位 |
| クラス | Pro-Am | Pro-Am優勝 |
| ドライバー | 中西/脇阪/フィジケラ | 中西/脇阪/フィジケラ |
| 予選 | 12番手 | 16番手 |
| ベストラップ | 2:00.441 | 1:59.803 |

フェラーリ 296 GT3 EVOはこんなクルマ
この296 GT3 EVOは「296 GT3のアップデート版」という位置づけで、そして296GT3は「FIA GT3カテゴリを戦うレーシングカー」。
そして296 GT3 EVOは「296GT3による2年間の実戦データを反映して改良を行った」進化型で、2025年6月に発表され、2026年シーズンから実戦投入されています。

一方、ベースとなった296 GT3は2022年に発表され2023年から参戦を開始しており、わずか2年間で343レース、140勝、405回の表彰台、56ポールポジションという非常に優れた戦績を残したレーシングカー。
296 GT3 EVOは上述の通り、その実戦経験とカスタマーチームからのフィードバックを反映したもので、搭載されるエンジンは296 GT3と同じ3.0L V6ツインターボであり・・・。
- 120度V6
- 2,992cc
- ターボチャージャーをVバンク内に配置
- ミッドシップ
- ハイブリッドなし
公道用296 GTBのV6と基本的な血統は同じですが、GT3ではエンジン搭載位置が市販車より前方かつ低い位置に変更されています。

これによって低重心化+ねじり剛性向上を実現することとなり、またエンジンを2度傾けることでリアディフューザーを「より車体中央側から、そしてより深く」取ることが可能となってます。

出力に関しては、GT3はBoP(Balance of Performance=性能調整)が存在するため、固定された「最高出力○○ps」という考え方ではなく、公表されている基本値では「約600hp(447kW)」とされているものの、実際のレースではシリーズ・BoPによって出力や重量などが調整されることとなるわけですね。

最大の進化は「空力」
296 GT3 EVOへと進化する際、フェラーリが特に力を入れたのが「前の車に追従して走っているときの空力性能」だと説明されていて、というのもGT3レースでは先行車の後ろを走ると「乱流=dirty air」に入ってしまい、普通のレーシングカーではこの状態になるとダウンフォースが急激に変化して・・・。
- フロントが効かなくなる
- アンダーステアになる
- コーナー進入が不安定になる
といった問題が発生することも。

296 GT3 EVOでは、この部分を徹底的に改善したといい、フェラーリによれば、目標は「スリップストリームや乱流の中でも垂直荷重を安定させること」。
これは特に、鈴鹿1000km、スパ24時間、デイトナ24時間、ニュルブルクリンク24時間のような長時間レースでは非常に重要な要素であり、2025年からのジャンプアップはこのアップデートが関係しているのかもしれません。

フロントが大幅に変わった
296 GT3 EVOでは・・・。
- フロントスプリッター
- フロントフロア
- ボルテックスジェネレーター
- フロントバンパーの空力デバイス
- フロントフェンダーのルーバー
などを再設計しており、特にフロントフェンダーのルーバーは、リア側の吸気にきれいな空気を送るためにも機能していますが、ボンネットに2つの大きなエアインテーク/アウトレットが設けられ、これは296 GT3 EVOを見分けるうえでも重要な特徴です。

ブレーキ冷却も20%以上改善、サスペンションも改良型に
296 GT3 EVOではフロントブレーキへの冷却エアフローを従来型より20%以上増加させていますが、これは「フロントバンパーのダクト経由」「ブレーキ専用冷却ダクト」「ボンネットの2つのダイナミックインテーク」によって達成されたもので、「いかにブレーキを最後まで性能維持できるか」という耐久レースにおいては重要な要素といえそうですね。

さらには前後サスペンションのキネマティクスも変更され、その目的は以下の通り。
①部品への負荷を減らす
②信頼性を高める
③前後の動きをより自然につなげる
④ピットでのセットアップを容易にする
つまり296GT3 EVOは「速く走る」だけではなく、「長時間レースで壊れにくく、セットアップしやすいレーシングカー」へと進化したことを意味します。

フェラーリ296 GT3 EVOの「こんなところ」に興味を惹かれた
ちょっと面白いのは「レーシングカーといえど」市販車と同じフェラーリのエンブレムが取り付けられていることで、ここは「レーシングカーのエンブレムが(軽量化や空力を考慮して)ステッカーになる」ポルシェとは異なるところ。

ヘッドライト形状は市販モデルの296GTBと同一ではありますが、その「内側」はより強力は発光源に。

一方テールランプは市販バージョンの296GTBと同一です。

ドアアウターハンドルは296GTBの「プッシュ式」ではなく、一世代前のもの。

そして各パネルを固定するのはけっこうガッチリとしたロックです。

細かいところだとドアミラーも変更され、「振動解析 → 位置・角度変更 → 視認性向上」という改良が行われたそうですが、ステーの形状が「ブレード」ではなく「フラップ」つき(空気抵抗が大きそうだが、もちろん意味があるのだと思われる)。

インテリアはもちろん「超スパルタン」で・・・。

サイドシルの超絶的な高さに驚かされます。
ドアインナーパネルはカーボンファイバーの「一枚もの」で、そして下の方にはさりげなく「296」のロゴ。

ちなみにこのゴッツいカーボンファイバー製の「壁」は運転席側のみ(ということはドライバー保護が目的なのかもしれない)。

スペックをまとめると
2026年型296 GT3 EVOの基本的な仕様は以下のとおり。
| 項目 | Ferrari 296 GT3 EVO |
|---|---|
| カテゴリー | FIA GT3 |
| ベース | Ferrari 296 GTB |
| エンジン | 3.0L V6ツインターボ |
| バンク角 | 120° |
| 排気量 | 2,992cc |
| ハイブリッド | なし |
| 出力 | 約600hp級※BoPによる |
| ミッション | 6速シーケンシャル |
| 駆動方式 | RWD |
| 車重 | 約1,250~1,270kg級※規定・BoPによる |
| 全幅 | 約2,050mm |
| ホイールベース | 約2,654~2,660mm |
| フロントブレーキ | 6ポッド |
| リアブレーキ | 4ポッド |
| フロントタイヤ | 300/680 R18 |
| リアタイヤ | 330/710 R18 |

日本のSUPER GT公式資料では、296 GT3 EVOを「全長4,620.5mm×全幅2,050mm×全高1,070mm、基本重量1,270kg、ホイールベース2,654mm」と記載しており、一方でフェラーリが公開したGT3 EVOの仕様値では乾燥重量1,250kgなどの数値も示されているため、レースカテゴリーやBoP、仕様によって重量条件が変わる点には注意が必要です。

そして「296 GT3 EVO」と「296 LMGT3 EVO」は別物
参考までに、「296 GT3 EVO」と「296 LMGT3 EVO」は「似ている」ようでまったく別のレーシングカーであり・・・。
296 GT3 EVO
FIA GT3規定に準拠していて・・・。
- GT World Challenge
- IGTC
- SUPER GT GT300
- 各国GT3レース
など。

296 LMGT3 EVO
FIA WECのLMGT3規定に準拠し・・・。
- FIA WEC
- ル・マン24時間
など。
ただし両者は兄弟関係にあり、フェラーリは296 LMGT3で得た経験を296 GT3 EVOにもフィードバックしています。
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