| 批判はあれども、そのメリットも大きかった |
ITメディアにて、レクサスが好調ということ、そしてその理由について考察した記事が公開。
これによると、欧州市場では2019年上半期において2年連続で前年実績を上回り、日本市場でも台数を順調に伸ばし、2018年のプレミアムカーセグメントにおいてはBMWの51,000台を抜いて54,000台を販売し、メルセデス・ベンツの68,000台に迫る勢いだとされています。
この成功の理由はいくつかあると思われますが、まず記事では「レクサスがスポーツやアートイベントのスポンサーを務め、かつ限定ながらもカフェやショップ、グランピングイベントの展開など、そのプレゼンスを強化した」ことが理由のひとつだと推測。
なぜレクサスは成長を続けるのか
ただし記事ではもっとも大きな成長の原動力として「デザイン」を挙げており、レクサスでは「デザイン畑出身の人物がトップに就任したことが大きい」と解説。
このデザイン畑出身の人物とは、それまでレクサスのグローバルデザイン統括部長、現レクサスインターナショナルのプレジデントである澤良宏氏(トヨタ/レクサスでは、事業部やプロジェクトのトップをプレジデントと呼ぶ)。
澤良宏氏はスピンドルグリル採用を進めてきた人物ですが、当初はトヨタ本社ならびに市場には理解されず、2012年にスピンドルグリルを身にまとって登場した「GS」は強い批判を受けた、とも語っています。
ただ、それについては「レクサスブランド確立のために、リスクを取った」とも。
製品一つ一つを見ると理解し難い、また説明できないデザインを持っていたとしても、その後にいくつかの製品が出揃ってくると「つながりや、まとまり感が出る」のがレクサスの手法だと語っていますが、たしかに(レクサスではなくて)トヨタブランドのクルマは「一台づつ見ていると、それなりにデザイン上の理由や納得性があるが、トヨタのクルマを並べてみると統一性がない」。
これはアウディやメルセデス・ベンツ、BMWといったプレミアムカーメーカーとは持ったく異なる部分で、しかしレクサスは当時、「そういった不整合性をなくし、レクサスブランドとしての統一性を出す」ことで国際競争力を持たせようとした、ということになります。
実際にレクサスはこのスピンドルグリルについて、どんなに批判を浴びようとも「進化」させ続け、LSに至っては「スピンドルグリルの設計だけで数ヶ月を要する」とされるほど複雑なものを完成させています。
このあたり、最近だとBMWが「巨大なキドニーグリル」について猛烈な批判を浴びながらも「そうしないわけにはゆかないのだ」と反対を押し切ってまで突き進むのと似ていますが、そこまでしないと、近年の厳しい競争を勝ち抜いて行けないということなのでしょうね。
現在、レクサスの最新ショールームは床(カーペット)から壁、デスクなどの美品に至るまですべて「スピンドルグリル」ですが、批判の大きかったスピンドルグリルの継続を(やめさせず)認め、結果的に世間にも認知させ、ここまでレクサスを成長させたトヨタの「懐の深さ」は大したものだ、と思います。
もしも最初の段階で、批判を浴びたからと言って「スピンドルグリル禁止。もっと客受けのいいのにして」という決定を下していたら、現在のレクサスはないとも言えるわけですね。
レクサスは「アート」分野にも注力
さらにITメディアはレクサスが「自動車の枠を超えた」イベントやアート方面へと進出していることについても触れ、これが「感度の高い人々へのアピールに成功」した、とも。
例として「アップルやダイソン」を引き合いに出していて、それらもやはり「デザインで買われている」と指摘。
実際にアップルやダイソンよりも「機能的に」優れた製品はいくつもあれど、それでもアップルやダイソンの製品を購入してしまうのは「デザイン」や、それが持つ「イメージ」だということですね。
現在のところレクサスは様々なアートイベントのスポンサーに付いたり、イベントそのものを主催したり。
これらは直接の販売増加に貢献するわけではありませんが、所得の高い知識層、好奇心の強いアーリーアダプター層への訴求には欠かせない、ということになりそう。
加えてレクサスは「日本の匠」の反映させた製品を多数販売しており、急速に「和」へのシフトも。
これはかつてのドイツ車コンプレックスを脱したことの証でもあり、独自の、そして世界に誇れる価値観を確立しつつあるということなのだと思います。
更にレクサスは「ヨット(LY650)」を発表し、自動車を超えた「ライフスタイルブランド」へと発展しようとしていますが、レクサスの”次の一手”には興味が尽きないところですね。
VIA:IT media