| 新型マスタングは全体的にはシンプルでクリーン、段差も抑えて質感を大きく向上させてきたようだ |
オプションも充実しパーソナライズにも広く対応
さて、デトロイト・モーターショーが開幕し、大きな盛り上がりを見せていますが、大きな流れとしては「EV」があるように思われ、各社ともここぞとばかりに新型EVをメインに据えて展示を行っているもよう。
ただ、これまでとは異なり「EV一辺倒」というわけではなく、うまく「ガソリンと電動化車両」とをうまく切り分ける自動車メーカーも多いようで、フォードもその一つであるように思われます。
ちなみにフォードはちょっと前に「モデルe」「ブルー」という2つの事業に(自動車事業を)分割すると発表しており、モデルeでは電動化車両、「ブルー」ではガソリン含む内燃機関を担当し、それぞれにしかできないことを追求し、多様化するライフスタイル、自動車の楽しみ方に対応するとしています。
フォードはおそらく最後の「ガソリンエンジン」搭載のマスタングを発表
そして今回のフォード、さらにはデトロイト・モーターショーの目玉の一つが間違いなく「新型マスタング」。
9年ぶりのモデルチェンジとなりますが、そのスタイリングは1964年から1970年にかけて生産された初代マスタングを彷彿させるもの。
エンジンラインアップは2.3リッターEcoBoost(4気筒)と5.0リッター自然吸気Coyote(V8)が先代から引き継がれ、現時点ではハイブリッド「なし」。
これはガソリン時代最後の「ファンへの贈り物」だとも捉えることができますが、上述のように事業を分けたことで可能になった戦略なのかもしれません(一方の”モデルe”事業にはマスタング・マッハEがラインアップされる)。
今回の新型マスタングの発表に際し、フォードCEO、ジム・ファーレイ氏は「マスタングの新世代への投資は、競合他社の多くが内燃機関車のビジネスから撤退している今、大きな意味を持つ」とコメントしており、これは今年限りで生産を終了させ、次世代をピュアエレクトリックへと移行させる最大のライバル、ダッジ・チャレンジャーを揶揄したものだと思われます。
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この新型マスタングはコードネームS650にて開発されていたものですが、全体的には初代マスタングの雰囲気を残しつつ、さらにマッスルに、しかしクルーンでシンプルになったように思います(車体を構成するパーツ、面、線を極限まで減らしているようだ)。
なお、ボディ形状はクーペ(ファストバック)とコンバーチブルが用意されており、ファストバックだと「ヘルメットを着用しての乗降も考慮した」とのこと。
4気筒搭載モデルとV8搭載モデルとでは若干デザインも変更され、4気筒モデルだとグリル(分割されていない)、ロワーグリル(小さい)、フロントフード(エアアウトレットがない)がシンプルになり、こちらのデザインを好む人も多いかもしれませんね。
こちらはV8モデルのフロント。
グリルが3分割されていますが、「面」が揃い、フラシュサーフェス化されていることがわかります(そのため、ゴチャゴチャして見えない)。
リアだとV8モデル(GT)にはウイングが装着され、テールパイプが左右4本出しに。
ウイング形状も薄くシャープに、そして立体的な形状へと変更されていますね。
4気筒モデルはウイングレスでテールパイプは左右二本。
なお、いずれのモデルにもブロンズホイールやブロンズバッジが含まれるピアランスパッケージ、「ブロンズデザインシリーズ」、そしてフロントストラットブレース、トルセンLSD、フロント390mm、リア355mmのブレンボ製ブレーキ、リアホイール&タイヤのワイド化をセットにしたオプション「パフォーマンスパック」が設定されています。
ちなみにパフォーマンスパックを装着した場合、さらにマグネライドアダプティブダンパー、レカロシート、アクティブエグゾーストを追加することができるようですね。
新型マスタングには「ドリフト用電子ブレーキ」も
V8モデルにパフォーマンスパックを装着すると、ブレーキ冷却ダクト、オイルクーラー、アクティブ・ポットホール・ミティゲーション、そして”電子ドリフトブレーキ”が追加され、これは一見すると手動式パーキングブレーキのようにも見えますが、これを引くとエレクトリックモーターにて後輪を一時的にロックさせることができ、「初心者ドライバーがドリフト技術を学び、上達するために設計されており、同時に熟練ドライバーにとっては競技に適したシステムとなる」のだそう。※納車が始まったら、マスタングのドリフト動画と事故動画が増えそうだ。アメリカでは、マスタングはドリフト失敗→クラッシュの多いクルマとして知られている
ホイールサイズはベース車で17インチ、V8搭載のGTは19インチにアップグレードされ、20インチもオプションで選択可能。
ちなみにブレンボ製ブレーキキャリパーは3色を選択でき、ボディカラーは11色、さらにはストライプやグラフィックも豊富に揃い、様々なパーソナライズに対応している、とアナウンスされています。
新型フォード・マスタングのインテリアはこうなっている
そして新型マスタングでは大きくインテリアが変更されており、ちょっと前のメルセデス・ベンツやBMWっぽいインフォテイメントシステムが装着され、メインのメーターは12.4インチサイズのフル液晶に(インフォテイメントシステムはアマゾン アレクサに対応している)。
雰囲気としてはこれまでの「レトロ路線」と大きく変わっていますが、見たところ質感は非常に高そうで、ドイツ製のプレミアムカーとも渡り合えるかもしれませんね。
ブレーキには大きく「Brembo」の文字が描かれ、シートにも「RECARO」の文字が刺繍されており、フォードがこういった他社のブランド名を押し出すのはけっこう珍しいかも。
ただ、内外装においては多大なる労力を使用して行った調査の結果が反映されているというので、これらはマスタングのオーナー、ポテンシャルオーナーが望む仕様だと考えて良さそうです。
このほかだと、オプションではワイヤレス電話充電パッド、アダプティブクルーズ、道路標識認識機能、リバースブレーキアシストなどの安全システム一式がアナウンスされているほか、USBポートが頭上に設置されているためにサーキット走行用のアクションカメラなどをフロントガラスに取り付けた場合の配線が容易に(これはけっこういい装備。ここまでやるとは、そうとうにフォードはマスタングのインテリアについて練り込んできたようだ)。
トランスミッションは6速マニュアル(レブマッチ機構付き)と10速オートマチックとが用意されますが、いつ発売が終了するかわからない「V8+MT」という組み合わせに人気が集中するのかもしれません。
今回の新型マスタング発表に際してはすべての情報が公開されたわけではなく、たとえばエンジンパワーは「非公開」。
ただし新型マスタングに搭載される自然吸気V8エンジンは吸気効率を最適化した"革新的なデュアルエア吸気ボックスとデュアルスロットルボディ "を持つといい、その出力には期待したいところですね。