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ポルシェが「リトラクタブルボディ」特許を出願し、全長を可変させ高速走行時にロングテール化できる技術を導入か。なぜ多くのメーカーがロングテールを取り入れるのか

ポルシェ

| 法規的な問題はあるかと思うが、EV時代の新たなソリューションとしては大いに期待できる |

現代では各自動車メーカーとも、様々な理由にて「ロングテール」を取り入れている

さて、たゆまぬ進化を自社の製品に与え続けるポルシェですが、今回はなんと「車両の全長を変化させるアクティブエアロシステム」の特許を申請したとの報道。

簡単にいえばリヤオーバーハングに”延長可能な”パーツを取り付け、それを伸縮させることで車体の全長を変化させるというもので、これは新たな領域に踏み込んだものと言えるかもしれません。

なお、この特許はドイツ特許商標庁(DPMA)に申請済みだそうですが、実際に市販車に搭載するには法的問題(車両サイズの変更を許容しない国や地域もある)など様々な課題をクリアする必要がありそうです。

いったいこの新しいポルシェのアクティブエアロはどんな構造を持っているのか

そこで今回申請されたポルシェによる新しいアクティブエアロシステムについてで、「ボディ外板の内側に格納式のボディワーク(リトラクタブルボディ)を組み合わせ、そのままリトラクタブルボディをスライドさせたり、ヒンジでフレアさせることができ」、走行する速度に応じてそれらの手段を使い分けることができるというもの(一旦後方へと延長し、その後左右に張り出すことで、もともとのボディとツライチになるものと思われる)。

構成としては、リアパネルとそれに合わせたリアサイドパネルエクステンション、そしてリアエンド全体を前後にスライドさせるアクチュエータで構成され、このアクチュエーターは伸縮可能なアームを持っており、アセンブリの隙間をカバーするためにスライド式のプレートが使用されています(つまりボディが伸びた分の隙間ができないように考慮されている)。

なお、車体伸縮を取り入れるという考え方自体は珍しいものではなく、2015年にはメルセデス・ベンツがIAAコンセプトにて今回の特許同様にリアエンドを(時速80km到達で)390ミリ延長されるというシステムを提案しており、ルノーはコンセプトカー「モルフォズ(2020年)」にて車体前後をアクスルごと400ミリも延長する(よってホイールベースも伸びる)という仕組みを取り入れ、アウディは「スカイスフィア・コンセプト(2021年)」にて、(やはりホイールベースごと)車体を250ミリ延長できるシステムを盛り込んでいます。

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ちなみにですが、ルノー・モルフォズとアウディ・スカイスフィアの場合は、高速走行時の空気抵抗削減に加え、長距離移動時の安定性を向上させる(ロングホイールベースのほうが安定し乗り心地が良い)、そして室内空間(荷室含む)の拡大といった”ツアラー”としての性格を演出する目的もあるようですね。

なぜ「ロングボディ」?

そこで気になるのが、なぜ各社ともこぞって車体の延長を行うのか。

この理由としてはひとえに「空力」のメリットを追求するということに尽き、とくに空気抵抗削減が「航続距離の伸長に直結する」EVにおいて非常に有効なソリューションだから。

一般に、気流はボディ表面に付着し、剥離することで初めて乱流となるため、ボディが長くなればなるほど気流をコントロールしやすくなり、(新幹線みたいな)長く先細りのボディワーク採用によって車両後方に大きな低圧ゾーンができる可能性を低減させることが可能となります。

つまり、車体を流れる空気の流れをよりスムーズにすることで、空気抵抗を減らし、燃費(電費)を向上させることができ、実際に「バッテリー容量増加以外の手法で航続距離を伸ばすことを追求した」メルセデス・ベンツ・ヴィジョンEQXXもやはりロングテールを採用していますね。

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なお、メルセデス・ベンツはヴィジョンEQXXにて、(上述の)IAAコンセプトに採用した伸縮式ボディを採用していませんが、これはコストや信頼性、法規の問題が関係しているのだと考えており、逆に考えればヴィジョンEQXXは「これに近い形で市販される」現実的なコンセプトカーということになるのかも。

そのほか、「太陽光だけで」バッテリーを充電し走行することが可能な、世界で最も環境にやさしいEVと言われるライトイヤー・ワンも(空力性能向上を目的として)ロングテールを採用しています。

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ただしロングボディには「問題」も

しかしながら、ロングボディがいかに空力的に優れているかがわかっていたとしても、全長が長くなると取り回しが悪化したり、前後オーバーハングが長くなったりホイールベースが長くなると段差や坂道で「車体裏面を擦る」可能性が高くなったり曲がりにくくなったりし、そこで各社が考えたのが「伸縮式ホイールベース」「伸縮式リアエンド(空気の剥離を考慮すると、フロントよりもリアを延長すべきだから)。

ただ、ポルシェの場合は単に「EVの航続距離伸長」を考慮してこういった「リアオーバーハングが伸びるアクティブエアロ」を取り入れるわけではなく、超高速域における安定性つまり「ドライビングダイナミクス」と重視しているものと思われます。

実際にポルシェはル・マン24時間レースはじめ超高速域に達するサーキットでのレースに「ロングテール(場合によってはカムバックカットオフを組み合わせた)」レーシングカーを数多く投入しており、とくに935や962ではその傾向が顕著でもありますね。

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ただ、上述のようなデメリットもあり、そして旋回性能を考慮するとロングテールが必ずしも有利なわけではなく、そこでポルシェは「コーナリングに優れるショートテール、そして高速安定性と空力に優れるロングテール」両方を組み合わせるべく、今回の特許を出願したと考えていいのかも。

現代版「ロングテール」にはこんなクルマも

なお、現代にもいくつか「ロングテール」を採用するパフォーマンス志向のスーパーカーやハイパーカーが存在し、まずはポルシェ935クラブスポーツ。

ただしこのロングテールについては、かつての935「モビーディック」へのオマージュ的側面が強いのかもしれません。

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そしてブガッティ・シロン・スーパースポーツ300+。

ブガッティは「コーナリング性能と高速走行性能は両立できない」とし、コーナリング重視モデルとしてはシロン・ピュールスポールを、そして超高速域走行用としてロングテール採用のシロン・スーパースポーツ300+を投入しています。※「コーナリング性能と高速走行性能は両立できない」理由としては、テール形状のほかに”ダウンフォース”に対する考え方の差異も挙げられる

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マクラーレンもブガッティと同様の考え方にて「超ロングテール」を採用したスピードテールを導入。

なお、LT=ロングテールなるシリーズも存在しますが、こちらはサブカテゴリの名称として(かつてのマクラーレンF1にインスパイアされた)LTが用いられていると考えられ、必ずしもテールを延長するわけではなく、ダウンフォースの強化、パワーアップ、軽量化など”総合的な”パフォーマンス向上が図られています。

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参考までに、2024年モデルの新型GT-R NISMOもエアロパーツの付与によって「ロングテール化」されていますね。

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参照:CARBUZZ

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