| アストンマーティンの経営方針はこれまでになく明確であり、その未来はおそらく明るい |
完全な変革を終えるまでには数年がかかるだろうが、非常に強固なブランド基盤を形成するだろう
さて、先日「フェラーリ(296GTBが位置するセグメント)に対抗するミドシップ計画を凍結した」と発表したアストンマーティンですが、さらに「今後ミドシップモデルは限定としてしか提供しない」とコメント。
補足しておくと、アストンマーティンは(ヴァルキリー以前に)ミドシップカーを発売したことはなく、よって前々CEOであったアンディ・パーマー氏は「フェラーリ(やアストンマーティン、ランボルギーニ、マクラーレン)に対抗すべく」計画を練り、ヴァルキリー→ヴァルハラ→(ミドシップ化された)ヴァンキッシュという順でミドシップスポーツを発売しようとしていたわけですね。
ただしその後にはアストンマーティンの状況が暗転
なお、この順番は「インパクトが強い順」となりますが、新規市場参入する際に取られることが多い手法でもあり、というのも「最初に安価なものを発売してしまうと、そこから上に行くことが難しいから」。
たとえばテスラの場合、ロードスター→モデルS→モデルXといった順に発売がなされ、その次にモデル3とモデルYとがリリースされることとなっていて、モデルSやモデルXが高価で優れた製品であったがために、その半分以下の価格のモデル3とモデルYについても「非常に優れた製品で、しかもお買い得」だと多くの人の目に映ったわけですね。
よってアストンマーティンもこの手法を採用したものの、コロナ禍に突入して販売が鈍るとともに資金が枯渇してしまい、買収によって体制がガラリと変わることに。
そして新しくアストンマーティンの経営権を握ったのが現在の会長であるランス・ストロール氏なのですが、同氏はそれまでのアストンマーティンの「拡大」戦略を良しとせず、むしろ「販売規模が小さくとも利益が取れる」「ほかメーカーとは競争しない」という方向性へとシフトすることに。
ただ、開発が進みすぎて後戻りできなかったヴァルキリーはそのまま発売し、閉鎖するほうがお金がかかると判断された(開設したばかりの)アサンの新工場についてはそのまま継続して運用することになり、さらにヴァルハラについても(おそらくヴァルキリーと同じ理由で)発売が決定しています。
ただ、ヴァルハラの後に控えていた「新世代ヴァンキッシュ」についてはキャンセルしたほうが得策だという判断にてこの計画が凍結されることとなった(その前にも、アストンマーティンが自社で開発していたV6エンジンがお蔵入りとなっている)というのが現在の状況です。
アストンマーティンのミドシップカーはすべて限定生産に
そして今回新たに報じられたのが「アストンマーティンは今後”普通の”ミドシップカーは製造しない」「アストンマーティンが販売するミドシップカーはすべて限定生産になる」ということ。
なお、前者について、ローレンス・ストロール氏がいう「普通」とは30万ドル位を指しており、つまり日本円にするならば(現在の為替レートで)4200万円くらい。
よって、今後アストンマーティンがミドシップカーを発売するとすれば、これよりもはるか上の価格になるのは間違いなく、そしてヴァルキリーやヴァルハラに得たノウハウを活用するうことになると思われるため、「スーパーカー」ではなく「ハイパーカー」レベルとなりそうです。
実際のところ、ローレンスストロール会長は、アストンマーティンのミッドエンジン車について「量(販売台数)は重要ではない」と述べ、代わりに収益性と独占性に焦点を当て、排他性と高い残存価値を維持するために意図的に生産を制限するフェラーリの戦略に倣うことになるだろう、とコメント。
加えてこれらミドシップスポーツについては「最も忠実な顧客のみ」に提供することでブランドロイヤリティを高め、ブランドのイメージを向上させることを第一に考えているという戦略を採用するもよう。
そして一方、「一般向けに販売する」クルマはフロントエンジン車になるといい、つまりDB12や次期ヴァンテージ、フロントエンジンのままモデルチェンジを迎えると思われるヴァンキッシュやDBS、そしてDBXとなりますが、ただ、これらについても安く販売する意図は全く無く、ローレンス・ストロール会長は「パフォーマンス、ラグジュアリー、F1」といった要素を排他的条件として組み合わせ、これによって利益率の高いモデルを販売するとも語っています。
つまり、現在のアストンマーティンは「コロナ前」とは全く異なる経営思想を持っていると考えてよく、この明確な戦略を見るに、アストンマーティンの未来は非常に有望も見え、今後に大きく期待ができると考えています。
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参照:CARBUZZ