| 現在、ほとんどの自動車メーカーは「法規制」によって柔軟に方針を変更する必要に迫られている |
自動車メーカーにとってはあまりに「厳しい」「難しい」時代に突入
さて、EVに注力していたものの規制の変更、そしてEV需要が盛り上がらないことから当初の方針を変更せざるを得なくなったフォルクスワーゲン。
当初は既存ガソリンモデルをすべて販売終了とし、代わりとして「ID」シリーズのラインアップのみで構成する予定であったものの、IDシリーズが思うように売れないために人気ガソリンモデルの名称を(EV時代になっても)引き継ぐことを決定しています。
それに加え、既存ガソリンモデルの延命についても言及していますが、今回新たに報じられているのが「現行ゴルフ8が2035年まで期間を延長し販売される可能性がある」こと。
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もしそうなればゴルフ8は「長寿」モデルに
この2035年というのは現在欧州連合が定めている「内燃機関搭載モデル販売禁止」の年ではありますが、フォルクスワーゲンは(本来の予定だと)2020年代終わり頃にピュアエレクトリック版ゴルフを発売し、それと同時にガソリンエンジン搭載版ゴルフを引退させると言われていたわけですね。
ただ、今回の報道だと予定を変更して「計画よりも5年以上長くガソリン版ゴルフを販売する」方針を採用することになり、これはつい先日ポルシェが発表した「ガソリン版カイエンを(EV版カイエン発売以降も)存続させる」という内容にも似ています(両社は同じグループに属しているので、グループ通じてのなんらかの決定があったのかもしれない)。
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今回この驚きの発言を行ったのはフォルクスワーゲンの技術責任者を務めるカイ・グリュニッツ氏で、同氏は明確に「2030年代なかばまでゴルフ8の生産が継続されるだろう」と述べています。
そして現時点から計算すると「2030年代なかば」つまり2035年は「あと11年」。
モデルチェンジを行わずにゴルフ8があと11年も生きながらえるというのにもびっくりですが、これはモデルチェンジを行わないというよりも「行えない」という可能性のほうが高く、というのもこの1年で事情が急変したように、今後何が起きるかわからないためで、今ここで「先の11年」を考えてモデルチェンジを行ったとしても、すぐに販売できなくなる可能性をはらんでいるわけですね。
よってフォルクスワーゲンは現行ゴルフ8を「だましだまし」改良しながら販売し続けるしかなくなりますが(これは他の自動車メーカーでも同様である)、ゴルフ8自体は2019年後半に発売されており、しかしこれに採用されるプラットフォームはゴルフ7とともに2012年にデビューした「MQB」。
そのため、もし2035年までゴルフ8が引っ張られるとなると、2012年のデビューから数えてなんと23年も同じプラットフォームを使用するという事実を意味します(ゴルフ8オンリーとしては15年)。
参考までにですが、ゴルフ6はゴルフ5の大幅改良版ともいうべきモデルであり、これらが使用するのは2003年に(ゴルフ5とともに登場した)PQ35プラットフォーム。
そしてゴルフ6は2016年のゴルフカブリオをもって終了しているため、このPQ35は13年という長い歴史を持ちますが、現時点でMQBは12年を数えるに至っており、しかしゴルフ8があと数年販売されることは間違いないために「ゴルフ史上、もっとも長く使用されたプラットフォーム」となるのは間違いないのかも。※カイ・グリュニッツ氏はこの「長寿ぶり」につき、MQBプラットフォームの優秀さゆえだとも言及している
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もう一つ参考までに、ゴルフ8が2035年まで存続するとなれば「16年」も続く長寿モデルとなり、しかしゴルフ1は1974年に発売され、しかしフォルクスワーゲンはこれをベースとした「シティゴルフ」を2009年まで一部地域で販売しているので、(生産されなかった期間を差し引くと)なんとゴルフ1は25年も累計にて生産されたということに。
なお、現時点では「ゴルフ8が2035年まで継続販売される予定」だといえど、ここから11年の間に何が起きるのかはわからず、カイ・グリュニッツ氏は(ポルシェ・マカンや718ボクスター / ケイマンのように)規制によって販売できなくなる可能性にも言い及んでおり、実際のところどうなるのかは「神のみぞ知る」なのかもしれません。
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