| テスラにはモデルチェンジという概念が存在せず、同じ外観でも「中身を入れ替えることで」その性能を大幅に上昇させている |
さらにテスラにおいて最も重要なのは「ハード」ではなく「ソフト」である
さて、テスラは現在「モデルS、モデルX、モデルY、モデル3、サイバートラック」という5つのラインアップにて展開を行っていますが、発売間もないサイバートラックはもちろんのこと、ほかの4モデルにおいてもフルモデルチェンジを行ったことはなく、そして現行モデルでもっとも古い「モデルS」はすでに10歳を数えています。
そしてこのモデルSはテスラを「すぐに消えるであろう新参者」から「既存自動車メーカーが追いかけるEVのリーダー企業」へと変化させることになった立役者でもあり、それはポルシェが「タイカン」そしてメルセデス・ベンツ「EQE」をモデルSのライバルとして発売したことからでもわかるかと思います。
テスラは第2世代のモデルSを発売しないのか?
そしてこのモデルSにつき、今現在世間で話が出ているのが「第2世代のモデルSが登場するのかどうか」。
その答えは一見するよりも複雑で、その理由の1つは、モデルの変更と更新に対するテスラの独自のアプローチ方法にあるのですが、まずモデルSの歴史を見てみると、これはテスラが設立された4年目である2017年に企画されたモデルです。
当時のテスラは最初のモデルであるロードスターの製造2年目に入ったところであり、モデルSの開発コードネームは「ホワイトスター」。
当初デンマーク人デザイナーのヘンリク・フィスカー(BMWやアストンマーティンでもデザイナーを務めている)がプロジェクトを率いており、しかしその後ヘンリク・フィスカーは後に自身のスタートアップを立ち上げることとなり(イーロン・マスクとの衝突が原因だと言われている)、これを期に現在のテスラのチーフデザイナー、フランツ・フォン・ホルツハウゼンがデザイン面を、そしてピーター・ローリンソンがエンジニアリングを担当しています(ピーター・ローリンソンもまたテスラを辞してルシードを立ち上げ、イーロン・マスクとテスラを声高に批判している)。
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ピーター・ローリンソンはテスラに在籍していた頃には文字通りの24時間体制で働いており、モデルSは同氏の退職後となる2009年にようやくカリフォルニア州で発表され、その3年後にトヨタから譲り受けた工場での生産が開始されていますが、この半年後には最初のモデル、ロードスターの生産が終了しており、このロードスターはサンフランシスコ近郊の元シボレーディーラーのサービスベイで細々と行われていたにとどまるので、テスラはこのモデルSを境として「本格的な量産自動車メーカー」へと変貌を遂げたと考えていいのかもしれません。
参考までに、最初に生産されたモデルSの1,000台には限定版の「シグネチャー」仕様が与えられ、搭載されていたシングルモーターは362馬力を発生し、0-60マイル加速は5.6秒。
さらにはシグネチャーパフォーマンスと呼ばれるより強力なバージョンもあり、こちらのエレクトリックモーターは416馬力絞り出すことで0-60加速はわずか4.6秒に短縮されています。※バッテリー構成は60kWh、85kWhの2つだった
そしてモデルSにもたらされた最初の改良は2年目に行われたもので、「P85D」登場し、この「D」はデュアルモーターを表しており、この名が示す通り「フロントモーターの追加」が大きなトピックです。
このデュアルモーター構成は現代のEVの標準とも言える仕様となっていますが、このP85Dは4WDと691馬力というスペックをもって0-60マイル加速はわずか3.2秒というスーパーカー並みの数字を誇ることとなり、この下には70kWhバッテリーを積む「70D(514馬力)」が登場することに。
さらに2016年には90kWhバッテリーを積むフラッグシップモデル「P90D」が登場し762馬力にも達します。
その後は1,000馬力を超える「プレッド」が登場することによってその加速能力はスーパーカーを超えてハイパーカーの領域に踏み込むこととなりますが、こういった具合にテスラは「モデルチェンジさせることなく」モデルSを進化させており、それはモデルXやモデルY、モデル3も同様です。※多少外観は変わっているが、基本的な変更はなされていない
つまりテスラにはモデルチェンジという概念はなく、実際のところモデルYは発売当初に比較すると「完全に中身が入れ替わっている」と言われていますが、こういった経緯を見るに、テスラは今後もモデルSを「フルモデルチェンジ」させることなくその中身を入れ替えることとなりそうですね。
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