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【中国・奇瑞汽車、欧州本格進出】VW独工場の買収交渉で「現地生産」拡大へ。ついにドイツで「中国の自動車メーカー」がEVの生産を開始か

【中国・奇瑞汽車、欧州本格進出】VW独工場の買収交渉で「現地生産」拡大へ。ついにドイツで「中国の自動車メーカー」がEVの生産を開始か

Image:Chery

| 中国第4位の自動車メーカーが“ドイツの心臓部”で勝負に出る |

わずか数年前であったとしても、この事態は誰もが予想できなかったであろう

中国のチェリー(奇瑞汽車)が、ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)の工場2ヶ所の買収交渉を進めていることが明らかに。

これは欧州での現地生産体制を強化し、中国製EVへの関税回避を狙うと同時に、ブランドイメージの向上と市場拡大を目指す戦略を推し進めるもので、実現すれば欧州の自動車メーカーにとって「大きな脅威」となりそうです。※VW自身の首を絞める行為にもなりかねないが、もはや背に腹を替えることもできないのであろう

VW
VWが閉鎖する2工場に対し中国の自動車メーカーが「興味津々」。これらを手に入れれは世界進出の足がかりとなり、VWは工場を売却することで「中国メーカーを間接的に支援」してしまうことに

| そして工場を売却することで中国の自動車メーカーにチャンスを与えてしまえば、二度と失地を取り戻すことはできないであろう | VWとしても現在は「究極の選択」に迫られているものと思われる さて、現在欧 ...

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対象となるVW工場と交渉の背景

現在、チェリーがこれらの施設取得に向けて最終調整段階にあると報じられていますが、まだ正式な契約には至っておらず、この成り行きには様々な方面からの注目が集まっていると考えていいのかも。

  • 対象施設:
    • ドレスデン工場(Dresden)
    • オスナブリュック工場(Osnabrück)
  • VWはコスト削減の一環として閉鎖を計画中
  • 2024年1月より中国複数メーカーが関心を示していた
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チェリーの狙い|「欧州現地生産=三方良し」

チェリー・インターナショナルの副社長、チャーリー・チャン氏は次のようにコメントし、今回の工場買収によって達成可能となる3つの戦略にも言及し、いずれもチェリーの「今後」を占ううえでは重要なものとして位置づけられている、と強調しています。

「ドイツでは労働組合、法規制、供給網、コストなど課題が多く、詳細な調査が必要です。最終決定はその後になります。」

  1. EU関税対策
     中国製EVには高関税がかかるが、欧州内での生産により回避可能。
  2. ブランド信頼性の向上
     “ドイツ製”として生産することで、信頼性と品質イメージを確保。
  3. 地域ニーズへの対応力強化
     現地でのカスタマイズや短納期への対応が容易に。
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新ブランド「Lepas(レパス)」で欧州市場を攻める

もし交渉が成立すれば、チェリーは新ブランド「Lepas」の車両をドイツ国内で生産する計画を実行に移すと言われていますが、その概要は以下の通り。

  • Lepasは2025年4月に立ち上げたばかりの新ブランド
  • Cheryの「Tiggoシリーズ」をベースに欧州仕様に再構成し発売
  • 対象モデル:
    • コンパクトSUV×2種
    • ミッドサイズSUV×1種
  • パワートレイン:
    • ガソリン(ICE)
    • プラグインハイブリッド(PHEV)
    • バッテリーEV(BEV)

なお、チェリーは2024年からスペイン・バルセロナの旧日産工場でも以下のブランド / モデルを生産していて、今回フォルクスワーゲンの工場取得に成功すれば欧州での生産そして拠点づくりにいっそうのはずみがかかることになりそうですね。

  • Tiggo PHEVEV
  • Omoda(オモダ)
  • Jaecoo(ジャクー)

現在チェリーは全世界で2,603,916台を販売するにいたり(2024年)、擁するブランドは今のところ「9」。

そして今回の欧州戦略は、単なる輸出ビジネスや欧州での販売を有利にすることを狙っただけのものではなく、ドイツの工場、スペインの工場、複数のパワートレインラインナップを駆使し、「欧州自動車産業の中枢に直接入り込む」というものです。

よって、フォルクスワーゲンが自社の工場を明け渡すことには相当なリスクが潜んでいるわけですね(ほかの欧州の自動車メーカーも今回の工場売却を歓迎しないであろう)。

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チェリー(奇瑞汽車)とは?

そこでこのチェリーについて説明しておくと、奇瑞汽車(Chery Automobile)は中華人民共和国の自動車メーカーで、中国国内では「ビッグ5」の一社に数えられている大手です。

その概要は以下のとおりですが、技術革新と品質向上に力を入れていること、グローバル市場にいち早く着目し海外展開を強めてきたことでも知られます。

  • 1997年3月18日に設立
  • 蕪湖市政府が出資する地方国有企業。
  • 会長兼社長は尹同耀(ユン・トンヤオ)氏
  • 中国の自主ブランドメーカーとして、早くから海外輸出を開始
  • 2023年の世界販売台数は過去最高の188万台に達し、そのうち約半数の93万台が海外市場での販売
  • 2022年時点で、80の国と地域に1,500以上のディーラーとサービス拠点を持ち、10ヶ所の海外工場を保有。
  • 英語表記の「Chery」は、英語の「Cherry」に由来し、中国語の「奇」には「とりわけ」、「瑞」には「万事めでたく順調」という意味があり、「とりわけ万事めでたく順調」という意味に

奇瑞汽車が所有する主なブランド、主な車種は以下の通り。

  • 奇瑞 (Chery): 主力となるブランドで、幅広い車種を扱う
  • 星途 (Exeed): よりプレミアムなブランドとして展開
  • 捷途 (Jetour): SUVやクロスオーバーSUVを中心としたブランド
  • iCAR: 新エネルギー車(NEV)を中心としたブランドで
  • Omoda: グローバル市場向けの新しいブランドで、スタイリッシュなデザインが特徴
  • Jaecoo: 都市型オフロードSUVブランドとして展開されている
  • Karry: 商用車ブランド
  • Lapas: 新たに発表されたエレガントな技術を特徴とするブランド

主な車種(一部)

  • Arrizoシリーズ: セダン
  • Tiggoシリーズ: SUV
  • Omodaシリーズ: クロスオーバーSUV
  • Fulwinシリーズ: プラグインハイブリッド車(PHEV)
  • eQシリーズ: 電気自動車

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