
| EV価格が“米国の格安車”以下の値段に…そして政府が動き出した |
ちなみに米国で最も安価なクルマは日産ヴァーサである
さて、しばらく前から報じられていた、中国国内で激化しているEV(電気自動車)価格戦争。
これも先日報道があったように「ついに見直しの段階」に入ろうとしており、火付け役の一社であるBYD(比亜迪)が「この価格競争は持続可能ではない」と公に認め、さらに中国政府が業界に“自己規制”を求める公式な要請を行うという事態に発展しています。
なお、これまでの価格競争の結果、中国のEV価格はアメリカでもっとも安価なクルマであるニッサン・ヴァーサよりも安い水準にまで下落してしまい、業界全体にとって「自滅的」とも言える状況に陥っていたわけですね。
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政府からの要請:「価格競争を止めよ」
中国の市場監督管理総局(SAMR)は今月、主要な自動車メーカーと会談を行ったのち「内巻(インボリューション)」競争の是正を業界に要請。
この“内巻”という言葉は、成長のない中で無理な努力を続け、業界全体が疲弊する現象を意味し、李強首相も使用した言葉として注目を集めています。
これに続く政府からのメッセージはシンプルに以下の通り。
「業界は成熟し、大人の対応をすべき時だ」
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BYD副社長:競争は“極端”、再編は避けられない
さらにはロンドンでにて開催されたブルームバーグが主催したイベントにて、BYD副社長を務めるステラ・リー氏は次のようにコメント。
「現在の競争は非常に極端で厳しい。明らかに、このままでは持続不可能です。」
そして中国のEVメーカー同士の“再編”が近い将来に起こる可能性が高いと示唆しており、BYD自身も市場シェア拡大の恩恵を受ける一方、同社の時価総額は直近で220億ドル(約3.4兆円)も下落していることも明らかになっています。
こういった状況を見る限り、中国の自動車メーカーは「政府が提供する補助金」を価格引き下げの原資に使用しており、そしてBYDの好調ぶりは「安売り」によって牽引されていたという事がわかりますが、この状況が「是正」されると中国の自動車メーカーは一気にその競争力を失ってしまうのかもしれません。
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中国政府は自国EVメーカーに対し2308億ドルもの補助金を出していたとの報告。その額は年々増加し、それでも数社を残して新興EVメーカーは倒産すると見られている
| こういった報道を見るに、中国の自動車メーカーが不当な保護を受けていると捉えられても仕方がない | 政府の支払った補助金は産業の保護にはならなかったかもしれないが、内需の拡大にはつながったであろう ...
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海外では攻めの姿勢を継続:欧州でテスラを上回る販売
国内での価格競争を抑制しようとする一方、BYDは海外市場での攻勢を加速しており、欧州市場向けに2種類以上の新型プラグインハイブリッド(PHEV)を年内に投入予定とするなど「EV単一戦略からの脱却」も視野に入れた動きを見せていますが、この「EVからPHEVへの流れ」は中国国内においても顕著であると報じられていますね。
- 2024年5月、欧州におけるBYDの販売台数がテスラを上回る
- 月間販売は前月比169%増
- 対するテスラは49%減
今後の注目ポイント
ポイント | 解説 |
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📉 国内価格の下落が限界に | 多くの企業が赤字覚悟で販売、資金難に |
🏛️ 政府の介入強化 | 自己規制・業界再編の促進 |
🌍 BYDの国際展開 | 欧州でのシェア急拡大、新型車の投入続く |
🤝 業界再編 | 中小EVメーカーの淘汰・合併が進む可能性 |
まとめ:価格競争から“持続可能な成長”へ
EVの価格戦争で覇権を握った中国が、いまやその副作用と向き合う時を迎えているというのが現在の状況ですが、BYD自身が警鐘を鳴らし、政府が介入することで、より健全で持続的な成長へと舵を切ることが求められています。
ただしすぐに市場が「正常化する」とは考えられず、しかし今後はゆっくりと時間をかけながらも「価格ではなく品質・性能・ブランド価値」が勝負の軸になっていく可能性が高く、BYDをはじめとする中国EVメーカーの“第2章”がいま始まろうとしている状況なのかもしれません。
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