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| もちろん、技術が一定の頂点に達したこともあるが「環境規制」も大きく関係しているのだと思われる |
この数年、「革命的」とも言える技術はあまり多くは登場していない
さて、フェラーリは最新スペシャルモデル「296スペチアーレ」を発表したところですが、現時点で日本仕様のスペック(フェラーリは国や仕様地によって装備を変えており、これまでの経験上、日本仕様はカーボンパーツがプラスされることが多い)や価格は未発表。
ただし公式サイトでは数値的な詳細が発表されており、ここで296スペチアーレの数値、そしてベースモデルとなる296GTBの数値とを比較してみたいと思います。
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フェラーリ 296スペチアーレ(Speciale) / スペチアーレAついに正式発表:ドライビングの興奮に関する新ベンチマークとその魅力
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新型フェラーリ296スペチアーレでは「パフォーマンス面での数値が向上」
そこでまずは動力性能に関する数値ですが、(出力向上にもかかわらず)最高速は同じ、しかし加速が向上していて、これはつまり「中間加速が向上している」ということを意味します(実際、0-200km/h加速は大きくタイムが圧縮されている)。
ちなみにフィオラーノ・サーキットのラップタイムはSF90ストラダーレと同タイムであり、「4WD、1,000馬力の」兄貴分に対し、「後輪駆動、880馬力で」対等に渡り合える実力を持つということになりますね。※296GTB比で20%増強され、250km/h次点で435kgに達するダウンフォースが効いているのかも
296GTB | 296スペチアーレ | |
最高速 | 330km/h | 330km/h |
0-100km/h加速 | 2.9秒 | 2.8秒 |
0-200km/h加速 | 7.3秒 | 7.0秒 |
200-0km/h | 107メートル | 106メートル |
フィオラノ・ ラップタイム | 1分21秒 | 1分19秒 |
296スペチアーレのエンジン特性は「扱いやすく」?
296スペチアーレでは、エンジン単体で37馬力ものパワーアップを果たしていますが、注目すべきは「ピークパワーを発生する回転数を引き上げてこの数字を稼ぎ出したわけではない」ということで、フェラーリは499PやF80に採用された技術やパーツ等を採用していると説明しており、たとえばチタン製コンロッドの採用、クラインクシャフトの軽量化、エンジン単体の切削加工による軽量化、シリンダーヘッドを固定するボルト類へのチタンの採用、等長エキゾーストマニホールドの採用など。
つまるところ、「効率化(フリクションや可動部品の重量低下、排気効率向上など)」によって出力の向上が図られているわけですね。※エンジン単体では9kgの軽量化が果たされている
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さらにはフェラーリのスペシャルモデルの常として、シフトアップ時に「かかる時間」が短縮されていることにも言及されており、これはラップタイム「直接」影響しているものと思われます。
ちなみにバッテリー容量や電動航続距離に差はないものの、エレクトリックモーターのピークパワーが増大しており、これは新たに追加された「エクストラ・ブースト・モード(ドライブモードを”クオリファイ”に入れたときのみに動作可能)」によるものだと考えられます。
296GTB | 296スペチアーレ | |
エンジン形式 | 120度V6 / 2,992cc | 120度V6 / 2,992cc |
最高出力(エンジン) | 663馬力 | 700馬力 |
最大トルク(エンジン) | 740Nm / 6,250rpm | 755Nm / 6,000rpm |
許容回転数 | 8,500rpm | 8,500rpm |
リッターあたり出力 | 221馬力 | 234馬力 |
エレクトリックモーター出力 | 167馬力 | 180馬力 |
システム合計出力 | 830馬力 / 8,000rpm | 880馬力 / 8,000rpm |
バッテリーサイズ | 7.45kWh | 7.45kWh |
Eレンジ 航続距離 | 25km | 25km |
パッケージはすでに「限界」に到達か
そして次はボディサイズやディメンション。
296スペチアーレでは「フロントスプリッターとリアディフューザー」「リアのスプリットウイング分」だけ長く広くなっているようですが、トレッドを見てもわかるとおり、「車両構造としては変更なし」。
参考までに、(フェラーリだけではなく世間一般の)スポーツカーにおいてはちょっと前に大きな考え方の変更があり、それは「フロントトレッドとフロントタイヤの幅を拡大する」という流れ。
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よって、それまでは225幅くらいが通常であったフロントタイヤが一気に245くらいにまで拡大されてグリップを最大化したというトレンドが発生し、フェラーリではF12ベルリネッタからF12tdfへと移行した際にこれが反映されています。※GRスープラもかなりフロントタイヤが太い部類である
これはおそらく、電子制御デフ(Eデフ)による「駆動力の左右配分最適化によって無理やり車両を曲げる」という技術との兼ね合いによるものだと推測していますが、296GTBではこの考え方が最初から取り入れられていたためにフロントトレッドとフロントタイヤが広く、よって296スペチアーレでも「これをそのまま踏襲」しているもよう(ただしタイヤは変更されているようだ)。
296GTB | 296スペチアーレ | |
全長 | 4,565ミリ | 4,625ミリ |
全幅 | 1,958ミリ | 1,968ミリ |
全高 | 1,187ミリ | 1,181ミリ |
ホイールベース | 2,600ミリ | 2,600ミリ |
フロントトレッド | 1,665ミリ | 1,665ミリ |
リアトレッド | 1,632ミリ | 1,632ミリ |
車体重量 | 1,470kg | 1,410kg |
パワーウエイトレシオ | 1.77kg / 馬力 | 1.60kg / 馬力 |
重量配分 | 40.5:59.5 | 40:60 |
車両制御 | 新ABS EvoeSSC | ABS Evo / EBDSSC9.0 |
タイヤ / ホイール | 245 / 35 ZR20 9.0J305 / 35 ZR20 11.0J | 245 / 35 ZR20 9.0J305 / 35 ZR20 11.0J |
ブレーキ | 398 x 223 x 38mm360 x 233 x 32mm | 398 x 223 x 38mm360 x 233 x 32mm |
スポーツカーは「次の要素」を模索する段階に
そのほか、296スペチアーレでは大きく軽量化がなされていることもわかり、しかし「エンジンパワーに大きなジャンプアップがない(488GTB→488ピスタでは50馬力の出力向上がある)」「トレッドやタイヤサイズが同じ」「ブレーキサイズも変更なし」というところを見るに、様々な面において、296GTBの段階で「ある種の限界に到達していた」のではないかと推測可能。
そして296GTBから296スペチアーレに至るまでの間には「車両(電子)制御」「エンジン関連技術」「トランスミッション」「ブレーキ」などの”スポーツカーを構成する要素”において大きな進化や新技術の登場がなかったのかもしれません。
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ただ、仮に「性能を大きく向上させる」技術があったとしても、すでにハイエンドスポーツカーの性能は「人間が対応できる限界」に達しており、これ以上の数値の追求は意味をなさない可能性がありそうです。
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そうなると今後のスポーツカーは「感性」に訴えかけるという新しい方向性を模索する必要が生じ、実際にフェラーリはこの意味において「マニュアル・トランスミッション投入の可能性」に言及したことも。
ただ、実際にMTが投入されるにしても、それは「まだまだ先」となりそうで、しかしひとまず296スペチアーレにおいてはエンジンフィール、サウンド、ダウンフォース、視覚といった「数値に表れない」部分における進化が(数値で見える部分より)優先されたのかもしれません。
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参考までに、これまでフェラーリはその製品の紹介において(プレスリリース、公式サイトなどでは)「まずエンジン」をまっさきに紹介することが常であり、これはフェラーリ創業者、エンツォ・フェラーリの「我々が売るのはエンジンであって、車体はそのオマケである」という考え方に由来するのだと考えています。
しかしながら296スペチアーレでは、そのトップにあるのが「ドライビングの興奮」という、数字や技術ではなく「感覚」として捉えるべきものとなっていて、これはフェラーリにおけるひとつの大きな変化、そして新しい時代の幕開けを示している可能性が高く、その意味で296スペチアーレは「新しい世代のスペチアーレ」であるとも考えています。
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