>フェラーリ

ついに大御所がフェラーリ・ルーチェの独占レビューを公開。全く異なる視点から語られる「ブランドの未来を守るための戦略的な防衛策」とは【動画】

ハリーズ・ガレージによるフェラーリ ルーチェのレビュー

| さすがはハリー・メトカーフ、やはり視点が全く異なる |

フェラーリの歴史にとってルーチェは「必然」である

フェラーリが歴史上初となる100%電気自動車(EV)「ルーチェ(Luce)」を発表し、世界中の自動車ファンやコレクターの間で激しい議論が巻き起こっているのは御存知の通り。

「フェラーリがEVを作るなんて邪道だ」「伝統のV12サウンドがなければフェラーリではない」という批判的な声がある一方、なぜ跳ね馬はあえてこの巨大なリスクに挑んだのかという視点から語る評論家も存在します。

そこで今回、自身のYouTubeチャンネルへとへとレビューを公開したのはEVOマガジン創業者にして著名な自動車ジャーナリスト、ハリー・メトカーフ氏。

同氏による独占レビューではルーチェの驚くべき空力デザイン、革新的なメカニズム、そしてフェラーリがEVを発売せざるを得なかった”本当の背景”についての考察がめぐらされていますが、簡単に言うと、この「ルーチェ」の誕生は単なるトレンドへの追従ではなく、フェラーリが誇る「V12エンジンなどの内燃機関を生き残らせるため」の緻密な規制対策であり、ブランドの未来を守るための戦略的な防衛策であると結論付けられています。

この記事の要約

  • 徹底した空力最優先デザイン:これまでのフェラーリの象徴だった「ダウンフォース」を一切排除し、航続距離を伸ばすための超低空気抵抗(Cd値0.24)を追求
  • 5人乗りの実用性と高級感:プロサングエ以上の広さと高級感を備えた初の5人乗りレイアウトで、新規顧客層(全体の80%を想定)の開拓を狙う
  • 排ガス規制(1万人・1万台の壁)対策:年間販売台数が1万台を超えたフェラーリが欧州の厳しいZEV規制をクリアし、V12モデルを存続させるための「免罪符」としての役割
  • 約8,000万円の超高級EV:2027年末まで既に完売しているものの、エモーション(感情的興奮)の欠如について専門家からは冷ややかな視線も
ブルーのフェラーリ・ルーチェ(ブルー、リア、静止)

Image:Ferrari

フェラーリ「ルーチェ」とは何者なのか

そこでまず、ハリー・メトカーフ氏はフェラーリの本拠地マラネロで行われたルーチェの発表イベントに潜入し、実車を前にして「その異質なデザインとメカニズムについて」語ることに。

空力を極限まで高めたエクステリア

ルーチェのデザインは、一目でフェラーリだと認識するのが難しいほどにこれまでのモデルとは一線を画しており、その理由は「徹底したドラッグ(空気抵抗)の削減」に起因しています。

ジョニー・アイブ氏(元Appleのチーフ・デザイン・オフィサー)が関わったとされるこのデザインは、フロントバンパーからフロントガラス、そしてリアへと流れるような1枚の巨大なエアロウィングのような構造を持っていて、ワイパーは風の流れを邪魔しないよう通常とは異なるサイドに配置されるなど異例の設計が施されており、その結果「フェラーリとしては驚異的な」Cd値 0.24を達成。

一方で、これまでのフェラーリが最も重視してきた「ダウンフォース」についての言及は一切なく、そのデザインのみではなく、キャラクターそのものも「異質」というわけですね。

フェラーリのEV、ルーチェのエクステリア〜フロント正面

Image:Ferrari

ジョニー・アイブが手がけた、デジタルとアナログの融合インサイド

インテリアは、非常に洗練された贅沢な空間に仕上がっていて、かつてのフェラーリ(プロサングエなど)で不評だった「タッチパネル式で操作しづらいシートヒーター」などの不満点が改善されたほか、ステアリングホイール中央には直感的に操作できる物理的な金属製の「マネッティーノ」スイッチが復活。

さらにアイコニックな「イエローキー」をダッシュボードの専用スロットに差し込むと”キーのカラーが車内に吸い込まれるように消え、代わりにギアセレクター周辺が黄色く発光して始動準備が整う”というApple製品を彷彿とさせる非常にスマートでエモーショナルな演出が用意されています。

フェラーリ ルーチェのセンターコンソール

Image:Ferrari

フェラ―リ
フェラーリのステアリングホイールと“マネッティーノ”の進化とは?:F1から学んだ究極のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)

| ステアリングホイールは進化しない?フェラーリが変えた“操る感覚” | フェラーリの市販車の進化は常に「レーシングカー」とともにある クルマの四隅に取り付けられるホイール(車輪)と同じく、ステアリン ...

続きを見る

フェラーリ ルーチェ:車種概要、性能・デザイン・スペックなどの特徴、市場でのポジショニングなど

車種概要とスペック

フェラーリ・ルーチェは、ブランド初となる100%ピュアEVであり、初の5人乗りラグジュアリーGTカー。

床面にバッテリーを敷き詰める構造を採用しているため、全高はやや高く感じられますが、超低重心化を実現しています。

フェラーリ・ルーチェ(Luce)基本スペック

  • 車体タイプ:5人乗り・ラグジュアリーGT / クロスオーバー
  • 空気抵抗係数(Cd値):0.24
  • 駆動方式:4WD(フロント2モーター、リア2モーターの計4モーター構成)
  • 出力比率:リアアクスルが全体の約70%のパワーを担う
  • ホイールサイズ:フロント23インチ / リア24インチ(空力特性を高めたエアロホイールも選択可能、航続距離が5%向上)
  • サスペンション:プロサングエや12チリンドリ(12Cilindri)にも採用された、アンチロールバーを不要にする電動アクティブサスペンションシステム
  • 予定販売価格:7623万円
フェラーリ ルーチェのカーコンフィギュレーター〜エクステリア編(ボディカラー、イエロー)

Image:Ferrari

伝統を壊してまで「EV」を発売した市場の背景

なぜフェラーリはEVを作らなければならなかったのか?

その答えは「年間販売台数の増加」にある、とハリー・メトカーフ氏は述べており、というのも2010年代前半までフェラーリの年間生産台数は7,000〜8,000台程度に抑えられていて、しかし2019年には1万台を突破し2025年には13,600台にまで急増。

さらに2030年には年間2万台に達すると予想されています。

現在の欧州(EU)の規制では、年間販売台数が1万台を超えると自動車メーカーとしてのCO2排出量規制が劇的に厳しくなり、パガーニのように年間数百台しか生産しない小規模メーカーや、EU圏内での販売が1万台未満の自動車ブランドは規制が猶予されますが、大成功を収めて「大企業」の仲間入りをしてしまったフェラーリは「ゼロエミッション車(ZEV)をラインナップに加えなければ、莫大な罰金を科されるか、クルマの販売自体ができなくなってしまう」というわけですね。

つまり、ルーチェというEVをラインナップの13〜14%ほど販売することで、メーカー全体の平均CO2排出量を引き下げ、大本命である「V12気筒自然吸気エンジン」などの内燃機関スーパーカーの寿命を1日でも長く延ばすことが本当の目的である、というのが同氏の見解です。

フェラーリのエンジン
Life in the FAST LANE.

たしかにこれには異一理あり、事実これが「真実」だとすれば、そして真のフェラーリファンであるならば、ぼくらはフェラーリの真意を察し、「黙って」ルーチェの注文書にサインを書き込むべきなのかもしれません(ただ、それにしては金額が大きすぎるが)。※そしてもちろん、フェラーリはルーチェの購入を「強制」はしないものの、そういった「フェラーリを支えてくれる」顧客に恩を返してくれることは間違いないであろうと思われる

フェラーリのエンブレム
フェラーリが「ルーチェ」の購入強要疑惑に対しついにコメント。「様々な報道がなされていますが、それらは誤りです。顧客への圧力はブランドを傷つけます」

Life in the FAST LANE | ルーチェの購入は限定モデル購入への「ファストパス」ではない | もちろん「買わなければ」他の限定モデルを販売しないという”踏み台”でもない フェラーリ初 ...

続きを見る

競合比較と市場でのポジショニング

現在、ハイパーカー市場には「リマック・ネヴェーラ」や「ピニンファリーナ・バッティスタ」、「ロータス・エヴァイヤ」といった超高性能EVが存在しますが、これらは「2シータースポーツ」であり、実は市場での需要が非常に低く、各社とも販売に苦戦しています。

フェラーリはこの失敗を冷徹に見つめ、あえてスポーツカーではなく、日常使いができる「5人乗りのボリュームゾーン(実用的なGT)」としてルーチェを投入することに。

これにより、ルーチェの主要購買層につき、既存のフェラーリオーナーよりも、これまでフェラーリの購入を(不便さなどから)ためらっていた新規客が多数を占める(具体的には80%)と予測しており、実際のところ2027年末までの生産分はすでに完売していることも明らかになっています。

フェラーリ
これぞフェラーリの思惑通り?タイの若い富裕層はルーチェを支持。「伝統的なフェラーリらしくない。だからこそ、買う価値があるのです」

Life in the FAST LANE. | フェラーリ初の最高峰EV「ルーチェ(Luce)」に富裕層が熱狂する全内幕とは | ある意味では「フェラーリの狙い通り」だと考えていいだろう 「これは本 ...

続きを見る

結論

フェラーリ・ルーチェは、これまでの跳ね馬に期待されていた「エンジンサウンド」や「地を這うようなアグレッシブなスタイリング」というエモーション(感情的興奮)には欠けているかもしれません。

フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜サイド

Image:Ferrari

そこはハリー・メトカーフ氏も「実用的だが、自分の部屋にポスターを飾りたくなるようなフェラーリではない」と率直に評しており、しかし、このクルマは(上述の通り)フェラーリが次の時代を生き抜くために仕掛けた「最も賢く、最もリスクのある壮大なビジネス戦略」の象徴でもあって、ルーチェが静かに道を切り拓くことにより、ぼくらはもうしばらくの間、あの官能的なV12エンジンの咆哮を聴き続けることができるというわけですね。

フェラーリF80のサイドアンダー
【安心のガソリン継続】フェラーリCEOが明言。初のEV「ルーチェ」発表後も内燃機関エンジンを捨てないマルチ戦略に言及、「内燃機関を諦めるわけではありません」

Life in the FAST LANE | ベネデット・ヴィーニャCEOが語る「ラストワンマイルまで顧客の好みに応える」姿勢 | ルーチェを発表したからと言って、今後すべてが「ルーチェ風」になるわ ...

続きを見る

新しい知識と気付き

自動車業界では現在、カーボンニュートラルの手段としてEV一辺倒から「マルチパスウェイ(複線的アプローチ)」へとシフトしていて、フェラーリもまたEV(ルーチェ)を開発する一方、F1由来の「サステナブル燃料(e-fuel)」の検証や、水素燃料エンジンの特許出願など、あらゆる可能性を模索しています。

「EVの発売=内燃機関の諦め」ではなく、「内燃機関を守るための盾としてのEV」という視点を持つと、現代のスーパーカー選びや業界の動向がより深く理解できるようになるのかもしれません。

フェラーリ・アマルフィに搭載されるV8ツインターボ
Life in the FAST LANE.

そして現代は自動車メーカー自身の「戦略」に固執できる時代ではなく、「政府の方針によって戦略が左右される」時代でもあり、すでに「ガソリンエンジンを生産したくとも作れない」時代に突入しているのもまた事実。

そしてガソリンエンジンを作るならば、「CO2排出量を(そのメーカー全体で)抑えることができる」EVや合成燃料(Eフューエル)の導入が必須ということになり、つまることろ、どの自動車メーカーも「EVを作りたくて作ってるわけではない」のだろうと考えています。

合わせて読みたい、フェラーリ関連投稿

フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜フロントサイド
米自動車界の重鎮と大物フェラーリコレクターが「ルーチェ」を斬る。「電気自動車には見えるが、フェラーリには見えない」。ただしこれはフェラーリにとって最大の賛辞かも

Image:Ferrari | 歴史的EV「ルーチェ」へ寄せられる、大物コレクターの本音 | 自動車界の大物が放った「美学と多目的性」への違和感 フェラーリが世界に解き放ったブランド史上初の100%電 ...

続きを見る

フェラーリ ルーチェの車体構造〜インナーボディ
フェラーリ・ルーチェの「中身」はこんな姿だった。「アップルのマウス」と揶揄されたボディの下には”フェラーリらしい”ウェッジシェイプが隠れている

| フェラーリ ルーチェのデザインには(当然ながら)ちゃんと意味がある | もしかしたら「アウターボディ」のデザインだけを変更することもできるのかもしれない さて、フェラーリ・ルーチェに対する否定的な ...

続きを見る

フェラーリのEV、ルーチェ(イエロー)のエクステリア〜テールランプ
フェラーリがルーチェのデザインをジョニー・アイブに依頼したのは「間違い」?「非日常の存在(跳ね馬)を、日常的なツールのデザイナーに任せるべきではなかった」

Image:Ferrari | 天才ジョニー・アイブの「引き算の美学」が跳ね馬の魅力を帳消しにした理由とは | なぜLoveFromの「マジック」がフェラーリでは機能しなかったのか さて、「ルーチェ・ ...

続きを見る

参照:Harry's garage

->フェラーリ
-, , , ,