
| ワイパーは多くの自動車メーカーにとって「悩みのタネ」でもある |
EV時代に突入するとともに、これまで不変であったワイパーにも「再発明」の波が訪れる
フェラーリが満を持して発表した歴史上初の100%電気自動車(EV)「ルーチェ(Luce)」。
その革新的な電動パフォーマンスやスタイリングに世界中が沸き立つ一方で、多くの自動車ファンやジャーナリストが首を傾げたディテールが存在し、それがフロントウインドウ左右に「直立する」形で停止しているワイパーです。
正直なところ、これはけっこう「目立つ」ものではありますが、今回CarBuzzが発見した特許によると、ルーチェ、あるいは別のニューモデルに採用されそうな「さらに奇妙なワイパー」の存在が明らかに。
フェラーリがなぜこのような風変わりな設計に踏み切ったのか、その空力的な背景と、高級車として致命的になりかねない構造的な弱点について考えてみましょう。

Image:Ferrari
この記事の要点
- 物議を醸した直立ワイパーの謎: フェラーリ初の市販EV「ルーチェ(Luce)」の発表時、テスラ・サイバートラックのようにフロントガラスに直立した状態で配置されていたワイパー。これには、さらなる「裏の計画」が存在した
- 「ボンネットの上に格納する」という新特許: ほとんどの現代車がボンネットの「下に」隠すのに対し、フェラーリが取得した特許は「ボンネットの『上に』設けた隙間にワイパーを収納する」という前代未聞の構造
- 空力(エアロダイナミクス)と美学のジレンマ: EVにおいて航続距離を伸ばすための空力性能は最重要。しかし、従来の横置きは気流を乱し、縦置きはフェラーリ自身が「外観を著しく損なう」と認めるほどの諸刃の剣
- 「ピアノブラックのボンネットが傷だらけに?」という懸念: 二重構造のボンネットの隙間にワイパーを滑り込ませる設計のため、砂や埃を巻き込んでボディ表面を傷つけ、筋状の跡(スクラッチ)だらけにしてしまう致命的なリスクも
すべてはEVの命である「空力性能」のために
フェラーリが新たに取得した特許のタイトルは、「Rest Position On The Hood(ボンネット上に静止位置を持つワイパーを備えた自動車)」というものです。
通常、現代の車は空気抵抗を減らし、見た目をスッキリさせるために、ワイパーをボンネットの後端(フロントガラスとの隙間)の下側に隠すように格納するのですが、しかしルーチェは非常に特殊な「2階建て(ダブルデッカー)」ボンネット構造を採用しています。メインのボディワークの下に、もう一枚ロアパネル(コアボディ)が走るような近未来的なレイアウトですね(Sダクトをボディ全体で再現しているとも表現できる)。

Image:Ferrari
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そしてフェラーリのエンジニアが風洞実験で突き詰めた結果、ルーチェの滑らかなフロントからガラス面へと流れる気流は「従来の横置きワイパーによって大きく乱されてしまう」という事実が判明し、1キロメートルでも航続距離を伸ばしたいEVにとってこの空気抵抗(ドラッグ)は無視できない大敵でだと見なされ、結果的にルーチェのワイパーはかような配置となることに。
しかし、だからといってワイパーを常に直立させておく(縦置きにする)のはフェラーリ自身の特許書類の言葉を借りれば「車両前部全体の美観を著しく損なう」行為であり、つまりフェラーリはこのルーチェのワイパーの位置に(空力は改善するが美観的に)納得していないもよう。
そこで彼らが導き出した解決策が「普段は直立させておき、使わないときはボンネットの二重構造の隙間(ポケット)内へと真下に向け、180度回転させて格納する」という驚きの可変システムです。※ちょうどルーチェのワイパーが180度反転し、ボディパネルとコアボディとの間に下を向いて格納されるという感じ
参考までに、テスラ・サイバートラックのワイパーが「直立」しているのもやはり空気抵抗を意識した結果だと思われ、そして過去にマクラーレンは「素敵を超音波で飛ばす」というワイパーレスに関する特許を出願したことがあり、この「ワイパー」は自動車メーカーにとって悩みのタネで、しかし未だに有効な解決策が見つからないパーツということになるのかも。
Image:Life in the FAST LANE.
新しく特許が出願されたのワイパー構造とクリアすべき課題・競合比較
この前代未聞のシステムは一見すると「空力」と「デザイン」を両立した天才的なアイデアに見えますが、市販化にあたってはクリアすべき大きな「罠」が存在し・・・。
フェラーリが直面する「ピアノブラックの悲劇」
もしこれをルーチェに採用するならば、ルーチェのボンネット内部(格納スペース周辺、つまりコアボディ表面)には、現代の高級車のインテリアによく見られるような、艶やかで美しい「ピアノブラック(光沢のある黒)」のような仕上げが施されています。
どんなに優れた機構であっても、雨天時や泥はねがある状況でワイパーが作動し、この光沢のある黒い表面の上をラバーブレードが往復、あるいは滑り込んで格納されるとなれば、瞬時に砂や埃を引きずり、ボディに無数の「引っかき傷(スクラッチ)」や筋状の跡を作ってしまうのは火を見るより明らかです。
しかしこの特許の中には「ボディの美観をどうやって守るか」についての明確な解決策は記述されておらず、こちらは「また後に」対策が考えられ、特許として出願されるのかもしれません。※傷防止のため、この部分の素材を「ガラス」へと変更することも可能ではあるが、それだと重量が増加してしまう

Image:Ferrari
ワイパーの配置・構造における他社スーパーカーとの比較
| 車種名 | パワートレイン | ワイパーの配置方法 | メリット / デメリット |
| フェラーリ・ルーチェあるいは新型車 (Luce / 特許案) | EV (電気自動車) | アクティブ可変式(直立 ⇔ ボンネットとコアボディとの隙間へと格納) | 【◎】使用しない時は完全格納で空力最強 【×】格納時にボディへ傷がつくリスク、構造の複雑化 |
| テスラ・サイバートラック (Cybertruck) | EV (電気自動車) | ガラス脇に巨大な1本ブレードを常時縦置き | 【◎】構造がシンプルで壊れにくい 【×】常に巨大なブレードが見えるため美観を損なう |
| ブガッティ・トゥールビヨン (Tourbillon) | ガソリン(ハイパーカー) | ガラス中央に1本ブレードを常時縦置き | 【◎】ル・マンのレーシングカーのようでスパルタン 【×】一般の公道モデルとしては視界の問題もあって好みが分かれる |
| 一般的な現代の高級車 | 内燃機関 / HVなど | ボンネット後端の下側に横置き格納 | 【◎】最も目立たず、日常使いで傷がつきにくい 【×】フロントガラス下部に気流の渦を発生させ、空力を乱す |

参考までに、構造をシンプルに保つため、ルーチェは通常のクルマのように1つのモーターで2本のワイパーを動かすリンク機構を使わず、左右のワイパーにそれぞれ独立したモーターを1つずつ(計2個)搭載していますが、これもまたコストや重量、そして故障リスクを引き上げる要因となる可能性をはらんでおり、しかしフェラーリはそういった懸念よりも「空力を優先し」ルーチェにあの構造を与えたということになりますね。
EVシフトがもたらす「100年変わらなかった自動車部品」への再発明
今回の特許は「なぜルーチェのワイパーはあの位置に?」というトピックに留まらず、自動車産業全体が直面している本質的な変化を感じさせるもの。
1内燃機関の消滅が、フロントの造形を自由にしすぎた
これまでのガソリン車やハイブリッド車には、フロントに巨大な「エンジン」、そしてそれを冷やすための「ラジエーター(グリル)」が鎮座していて、そのためワイパーを隠す場所はフロントガラスの付け根のバルクヘッド付近と決まっていたわけですね。
しかし、EVにはエンジンもラジエターもなく、よってルーチェのようにフロントに空気を逃がす大胆なダクトや二重構造のボンネット(エアロ・インテーク)を作ることが可能になった結果、100年以上変わっていなかった「ワイパーの定位置」すらもゼロベースで再発明できるようになったというのが今回の特許における「見逃せないポイント」です。
Image:Life in the FAST LANE.
結論
フェラーリが初のEV「ルーチェ」で試みようとしているのは、最高峰のパフォーマンスブランドとしての「空力性能」と「フェラーリらしい美学」を極限まで融合させるための、文字通り血の滲むような試行錯誤のプロセスです。
現時点では、発表時のプロトタイプのように常に上を向いたままの「直立スタイル」でいくのか、あるいはこの特許のようにボンネットの隙間に吸い込まれる「可変スタイル」でいくのか、最終的な市販モデルの姿はまだ確定していません。
フェラーリが誇り高き跳ね馬のバッジを冠する初のEVにおいて、この小さな、しかし重要なパーツに対してどのような最終アンサーを出すのか。彼らが美学を守り切るのか、それとも空力のために新たなギミックを搭載してくるのか、今後の展開には注目したいと思います。
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参照:CARBUZZ













