LEXUS LC500
レクサスの澤 良宏プレジデントによると、276,000台もの予約受注を集めたテスラ・モデル3を引き合いに出し、「すべての人が現在のバッテリー技術に満足しているわけではない」と発言。
澤氏はトヨタの常務取締役でもありますが、この発言からもトヨタが全体的に「エレクトリック化には及び腰であった」という雰囲気が想像できますね。
トヨタはハイブリッド技術において先鞭をつけ、「自動車業界の流れを変えた」とも言えますが、EVに関してはなぜかこれまで注力しておらず（ハイブリッドが売れすぎて、それに頼ってしまったのかも）、最近になりようやく豊田章男社長直轄にてプロジェクトを始動させたところ。
「トヨタはEV開発には及び腰だった」。そのツケが回ってきている現状について考える
トヨタが2022年に新型バッテリー搭載のEV発売との報道。「飛躍的に走行距離が伸びる」
ポルシェは「ソリッドステート・バッテリー」の可能性を模索。「リチウムイオンバッテリーでは重すぎる」
加えて、得意のハイブリッドについてもメルセデス・ベンツやポルシェなど後発組が「燃費性能向上のためだけではなく、パフォーマンス向上のために」ハイブリッドシステムを活用し始めたのに対し、トヨタはやはり「エコの視点から」ハイブリッドを捉えたまま、と相違が生じ始めています。
レクサスの場合はLSやLC500についても、そのスポーツモデル「F」についてはハイブリッドではなく、しかしポルシェ・パナメーラにおいては（燃費だけではなくパフォーマンスにおいても）そのトップレンジが「ターボS Eハイブリッド」、今後登場してくるであろうメルセデスAMG GTの4ドア版「GT4（仮称）」についても最上位モデルは「ハイブリッド」だとされており、やはりここは「考え方の差」が出てきているところ。
ぼくが思うのは、「ハイブリッド」「EV」を許容しない人が多いのは「今のバッテリー”技術”では性能が不十分だから」ではなく、ハイブリッドカーやEVの持つ「イメージ」が原因だと思うのですね。
ハイブリッド/PHEV/EVというだけで「環境にいい」という印象がありますが、同時に「遅い」というイメージも。
モーターは瞬時に最大トルクが発生するという点においてガソリンエンジンより加速性能に優れる一面を持つものの、そのイメージがあまりにも「スポーティーでない」のが車好きの人びとに受け入れられないのでは、と考えるのですね。
ぼく自身も数年間EVに乗りましたが、やはり接した人びとのEVに対するイメージは「遅い」というもので、「何かを我慢しなくてはならない乗り物」という印象が大きいようです。
たしかに「遅い」「我慢しなくてはならない」という一面はあり、それは現在のバッテリー技術に起因するのかもしれません。
ただ、ハイブリッド/EVに対するイメージを変えてゆかねば、いかにバッテリー技術が次世代へ進化したとしても人びとのハイブリッド/EVに対する意識は変わらないのかもしれない、とぼくは考えています（自分の乗るハイブリッドカーやEVのバッテリー容量/密度、方式を理解している人がどれだけいるのか？という問題。おそらく人びとはそこに興味はない）。
そして、そのイメージを変えるのは「スペック」ではなくメーカーの取組みだと思われ、やはりメーカーが「ハイブリッド/EVは何も我慢しなくていい」「ガソリンエンジンより優れる」ということをアピールすべきだと思うのですね。
その意味だとトヨタはレクサスの（パフォーマンス的）最上位モデルをハイブリッドにすべきで、今回発足した「GR」についてもエレクトリックモデルを核に据えるなどの対応が必要なのかもしれません。
なお、テスラがここまで成功したのは、その性能（加速や環境性能、電費）が優れるからではなく、「EVは貧乏くさいものではなく、リッチな人びとこそが乗るものだ」とセレブ感を出したこと、「ガソリン車にできて、テスラにできないことは何もない」とガソリン車”以上”であることを認知させたからだと考えています。
現在の「ハイブリッド/PHEV/EV」は車に興味のない人が選ぶもので、ハイブリッドに乗る人は車好きではないという風潮があるようにも感じますが、逆に「車に興味があり、理解している人だからこそ」ハイブリッドやPHEV/EVを選択する、という環境を作ってゆかねばならないのかもしれません。