実際にそんなに多くの人がEVを買うとは考えられない
現在は欧州の自動車メーカーを中心にどこも「エレクトリック重視」傾向が顕著ですが、アメリカの会計事務所にして世界四大会計事務所のひとつ、デロイトが分析したところでは「2030年には電気自動車の在庫が膨れ上がり、ディーラーのバックヤードは売れずに残ったクルマの山になるだろう」とのこと。
つまりデロイトは「自動車メーカーは市場の動向を見誤っており、電気自動車は売れない」と考えているわけですね。
現在の「EVブーム」は異常?
実際のところ、まだ現実的にアウディもメルセデス・ベンツもフォルクスワーゲンもポルシェもEVを納車していないにもかかわらず「2025年にはエレクトリックモデルの販売比率を50%にする」としています。
ただ「エレクトリックモデル」にはハイブリッドも含まれるために「EVが半分になる」わけではありませんが、それにしてもそこまでドラスティックな変化を打ち出すというのは「ちょっと異常」。
なお、デロイトによれば「10年後には1400万台の供給過剰になる」ともしており、これはちょっと看過できない数でもあります(世界最大の自動車メーカー、フォルクスワーゲンの年間販売台数よりも多い)。
現在の技術では「EVはどうやっても高くなる」のは間違いなく、EVは何かを我慢したり犠牲にしないと乗れないクルマ(EVに3年乗ったぼくが言うのだから間違いない)。
よって、金銭的にEVを買える人、EVを無理せず乗れる人というのは「かなり限られて」いて、そういった人びとを取り合おうとしているのが現在のEV市場。
つまり「新型車を出せば新規顧客が獲得できる」わけではなく、ほかメーカーのEVに乗っていた人がそっちに流れるだけなので、一定の需要を満たしてしまえばそこから販売が伸びるとは思えず、また中古市場にもEVがダブつくことになりそう。
そうなるとEV重視の欧州自動車メーカーの財政状況が一気に悪化する可能性があり、逆にEVにさほど注力していない日本の自動車メーカーやアメリカの自動車メーカーが浮上する可能性も。
EVに力を入れないと「流れに乗り遅れる」と考えているのかもしれませんが、逆に「取り返しのつかない失敗を犯してしまう」ことにもなりかねず、ここは自動車メーカーの幹部たちも実際は「悩んでいる」ところなのかもしれません。
逆に「EVこそ未来」と信じて疑わない経営者もいるかも知れず、しかし「EVで盛り上がっている」のはメーカーだけで、多くの消費者は実際にEVを欲しがっているわけではなく、「消費者不在」の製品開発はちょっと危険なんじゃないか、とも思います。