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【動画】ポルシェ・ケイマンが例により店から出て数秒後にクラッシュ。なぜこういった事故が起きるのかを考える

2019/06/15

| ボクらはクルマがいかに危険で、人の命すらも奪いうる乗り物だということを忘れがちだ |

ブラジルにて発生したという、ポルシェ981ケイマンSの事故動画。

この事故の様子について、ぼく自身もこれに似た状況を経験したことがあり、ちょっと思うところがあるために取り上げてみようと思います。

簡単に言うと、今回の事故は「勢いよくショップから飛び出したはいいものの、テールスライドを抑えきれずに標識にぶつかった」というもの。

今回の事故はこういった状況で発生

ここでまず事故の様子を見てみたいと思いますが、ショップ(チューニングショップなのかレンタカーショップなのかはわからない)からケイマンSが勢いよくスタート。
そして道路に出るにあたり、ステアリングを右に切ります。

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ただしここでテールスライドが発生してクルマが横向きに。

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ドライバーはここで一瞬ブレーキを踏み、カウンターを当てますが、姿勢は制御しきれず「タコ踊り」状態。

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そして少し離れた標識にドカン。

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ぼくの経験上ですが、こうなると「アクセルによる姿勢制御」は非常に困難(よほどの時術がない限り)。
よってテールがスライドしたらすぐにブレーキを思いっきり踏んで「停止すること」に専念したほうが良いと考えています。

そしてステアリングホイールをしっかりと握り、その方向と視線は「自分が停止したいと思う方向」。
そうすれば、現代のクルマは非常に優秀なので、なんとか止まってくれるはずです(状況にもよる)。

動画を見ると、このドライバーは一旦ブレーキを踏むも、すぐにそれを離しているようで、もしかするとその後アクセルを踏んでいるのかも。
そのためか、かなり長い距離を費やしても姿勢を建て直せず、ずいぶん先にある標識に当たってしまったようですね。

そしてもうひとつ重要なのは、テールスライドしている間、そして姿勢を立て直そうとしている間にも、クルマはけっこうな距離を進みます。
その間の「二次災害」を防ぐ意味でも、無理にクルマをコントロールしようとせず、とにかく「停まる」ことだけを考えたほうが良さそうです。

そしてもうひとつ経験からアドバイスできるとすれば、「タイヤが温まるまでは急加速や急ハンドルは厳禁」。
たとえ気温が高い日であってもそれは同じで、ショップから出た直後、駐車場から出た直後の事故が多いのは、これを意識しない人が急加速や急ハンドルといった操作を行うからだと考えています(ぼくらが考える以上に、タイヤの重要性は大きい)。

クルマはボクらが思う以上に危険な乗り物だ

ここでぼくは、以前によく似た経験をしたことを思い出します。
恥を忍んでいうと、当寺ぼくはポルシェの性能を試したくて、自分の技術やクルマのことを考えず、同じように道路に出る際に思いっきりアクセルを踏み、ハンドルを切ったわけですね。

そして当然、この動画のようにクルマは横を向いて制御不能に。
ただ、ぼくの場合は即座にアクセルを緩めてブレーキを思いっきり踏んだために「かろうじて」停まることができたのですが、それでも左右にテールが振られ、ストップしたのもガードレールに当たる「一歩手前」(ブレーキを思いっきり踏んでいても、上述のように”思ったより長い距離を”クルマは走る)。

つまりは何もなく停止できたということになるものの、ちょっと対応が遅れると車の破損はもちろん大惨事となった可能性もあったわけで、この経験はぼくにとってトラウマになるとともに、「より慎重な」運転を心がけるようになった契機となっています。

そして、このとき思ったのが「クルマは自分が思うよりもずっと大きなパワーが出ている」。
つまり、意図しなくても簡単にテールがスライドするほどパワーが出ていて、しかし普段はクルマがそれを知らぬ間に制御しているため、「本来、自分だけでは制御できない」ということにすら気づかないわけですね。

現代のクルマは200馬力や300馬力が当たり前になって、ともすると600馬力や700馬力を発生する場合も珍しくはありませんが、そういった馬力を持つクルマを簡単に運転できるのは「電子制御」のおかげだとぼくは考えています。

つまり、ハイパフォーマンスカーを走らせることができるのは、けしてぼくらの腕がいいからではないということを理解せねばならず、一定の限界を超えると突如としてクルマは牙を向いて襲いかかることがある、ということを常に認識しなくてはなりません。

たとえば都心において積雪があると事故が増加するのもそのひとつで、積雪状態でいつもと同じように運転すると「車輪が空転してクルマが進まない」ということになったり、はたまた曲がらなかったり、止まらなかったり。
ぼくらはあまりに運転しやすくなったクルマ(というか電子制御)に慣れ親しむうち、クルマとは操作したとおりに動くものであると安心し、そしてクルマとは本来どういった扱いをするべき乗り物であるのかを忘れてしまっているのかもしれません。

なお、マニュアル・トランスミッション車であればクラッチを繋ぐという行為が「そのクルマのパワーを知る」という上では重要だと考えていて、この”儀式”によってクルマと密接な関係を構築できるのだとも考えていますが、現在の状況のように「MTが絶滅」しつつある状況だとそれも叶わず、ますますぼくらとクルマとの距離が遠くなってゆきそうですね(その距離を埋めるのが電子制御ですが)。

事故に「もし」は存在しない

そしてもうひとつ、ぼくが「事故」について心に留めておこうと考えていることがあります。

それは以前、アウディ主催の「アウディ・ダイナミック・ドライビング・エクスペリエンス」に参加したときのこと。
このイベントでは、ひととおりクルマの限界性能(加速、ハンドリング、ブレーキング)を試した後、タイムアタックが行われます。

そしてタイムアタック終了後にインストラクターの人がぼくらにこう聞くことに。

「もし、もう一回走れば、もっといいタイムを出せると思いますか?もう一回走ってみたいと思う人は手を挙げてください」。

もちろん参加者のほとんどは挙手するものの、インストラクターの人はこう言うわけですね。

「皆さん、”もう一回”があると思ってらっしゃいますが、事故には”もし”も、”もう一回”もないんです。事故を起こしてしまえば、それで終わりなんです」。

実際のところ、ぼくらはいつも「次がある」「今日と同じ明日がやってくる」と無意識のうちに信じ込み、今生きているその一瞬をないがしろにしがちなのかもしれません。

そして、事故が起きてしまえば、当然やってくると考えていた「今日と同じ明日」はやってこず、かわりにやってくるのは苦悶と後悔の日々ということになります。

こういった事故を見たり、今までの経験を思い起こしたりするに、今現在自分が五体満足でいることや、事故によって他人を傷つけていないことの幸運を実感するのと同時に、その幸運を一瞬で失わないよう、一層の注意を払い、いま生きている一瞬を大切にせねばならない、と改めて感じさせられます。

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