| 投稿された情報が正しいという確証はどこにもない |
昨今話題となっている「あおり運転」。
NEWSポストセブンによると、こういったあおり運転などを行う「悪質車両」のナンバープレートは「8888」が多い、とのこと。
これは、投稿型悪質車両ナンバー掲載サイト「ナンバーデータ(現在は非公開)」の集計結果だそうですが、非公開とする前には1万件以上ものデータが集まったといい、投稿される悪質車両の中にはスピード違反、信号無視、当て逃げ、迷惑駐車などの違法・悪質行為のほか、発生日時や地域・場所、種類、車両等まで投稿されるため、様々な条件にて検索ができるようになっている、と報じています。
すでにネット上のデマに踊らされたことすら忘れ去られようとしている
もちろんサイト開設者に悪意はなく、「危険な情報を共有できれば」という善意に基づくものであったことは理解できますが、ここで注意すべきは「利用者が適切に運用できているかどうか」。
つまり、投稿の真偽を確かめる手段はなく、今回のあおり殴打事件のように「自分に都合の良いような内容で」投稿する人もいるでしょうし、共犯女性の誤認(ネット上でのデマ)のように、「他の人がそう言っていたから」という理由で誤った情報を投稿することがあるかもしれません。
そのほかにも「気に入らないから」「ムカついたから」等の理由や、正当な理由があってそうしている車両についても事実を確認しないまま「懲らしめてやる」という勘違いした正義感によって投稿を行うことも考えられます(後ろから見ると違法駐車に見えても、前から見ると身障者用の許可証を掲示したクルマかもしれない)。
日本はフェイクニュース耐性やネットリテラシーが高いとは言えず、「他の人がそういっているから」「ネット上に書いてあったから」という理由で、事実と異なることであっても調べもせずに鵜呑みにする人が多く、共犯女性と誤認された事実無根の女性のように、誰もが「朝起きたら犯罪者にされてた」という危険性もあるわけですね。
加えて、最近では監視社会化が高度に進み、監視カメラ、ネット上での監視に加え、日常的な仕事においても「他人からの評価」「多面評価」「360度評価」などが重視される傾向にあり、加えてなにかモノを購入した後には、そのショップ経営元(本社)からすぐさまアンケートが届くことも。
人は「主観による判断」しかできない
アンケートの内容は「店員の対応はいかがでしたか?」的なものですが、自動車メーカーだと、購入した後のみならず、ショールームへ訪れた後、サービス(整備)を利用した後など、様々な回答依頼が届きます。
これらについても同様で、ちょっと気に入らないことがあったりすると間違った正当性や行き過ぎた正義を振りかざす(しつけてやろうちう気持ちで)ことになり、正しい評価ができているとはいい難い状況に。※ちょっと前、ファーストクラスに乗った乗客が、”誕生日なのに祝ってもらえなかった”と大々的に航空会社を批判したことがある
こういった状況についてぼくが思い出すのは、五木寛之著「ガウディの夏(1987年)」。
何から何までもが監視され、「夫が妻を、妻が夫を、子が親を」密告するような社会を描いたものですが、当時これを読んだとき、いいしれぬ不安を感じ、「いずれはこうなるうだろうな」と考えたわけですね。
たとえ「正しく」生きていても、周りの勝手な判断で「間違った人」にされることも
つねに正しく、品行方正に生きていればいいじゃないという意見もあるかと思いますが、上述のように「冤罪」そして「根拠のないガセ」「悪意をもって相手を陥れる」ということがあるのが現代社会の怖いところで、情報の正当性がないままに監視社会課、妙な評価システムが横行するのはちょっとな、とは思います。
こうなると社会に出ていても息苦しさしか感じないようになり、ヒロシ著「働き方1.9 君も好きなことだけをして生きていける」のように、社会とは距離を置き、一人でやっていこう、という人が増えてくるのかもしれません。
ちなみに「8888」以外の悪質車両に多いナンバーですが、「・・・1」、「8008」「・・・5」「・・・8」が続いており、ナンバーの地名別だと「横浜」「名古屋」「浜松」「熊谷」「大阪」の順。
ただ、当然ながらこれらナンバーをつけたクルマのすべての運転が悪質なわけではなく、しかしこういった認識が拡散してしまうと、「8888ナンバーはすべて悪質」「大阪ナンバーは素行が悪い」と無条件で多くの人々が信じることになり、たとえ正しい行いをしたとしても、誹謗中傷されることになるのかもしれません。
VIA:NEWSポストセブン