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【試乗:アウディS1】ホットハッチではぶっちぎりでナンバーワン、”グレート”な一台

2017/09/12

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さて、アウディS1に試乗。
「S1」は相当にニッチな車と言ってよく、知らない人も多いと思うのでざっとおさらい。

簡単にいうと「A1のハードコアモデル」ということで、「S」という文字がつくとおりアウディスポーツによる「リアルスポーツカー」。
なおカタログにはひたすら「グレート」の文字が並びます(のちにこれが嘘偽りではないことが判明する)。

アウディS1のボディ形状は二種類

ボディ形状は3ドアハッチバックの「S1」と、5ドアハッチバックの「S1スポーツバック」がありますが、今回試乗するのは3ドアハッチバックの「S1」。

全幅1740ミリ、全長3990ミリ、全高1425ミリというコンパクトなサイズに、アウディTTと同じ2リッターターボエンジン(230馬力)を押し込み、さらに4WDシステム「クワトロ」で武装したという、よく考えると「ムチャクチャな」モデル。

サイズとしてはミニクーパーS(3ドアハッチ)が1725、3860、1430ミリなのでこれに近く、しかし、よく考えるとA1自体がミニをライバルとして企画されているので、サイズが近いのは当選と言えば当然ですね。

現行ミニクーパーSは2リッターターボ(192馬力)、FFとなりますが、ジョンクーパーワークス3ドアがちょうどS1と同じレベルの「231馬力」を発生するので、ジョンクーパーワークス3ドアが4WDになったと思えば、その「無双ぶり」も想像つくかと思います。

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ただしアウディS1の重量は1360キロと意外と重く、これはアウディTTの1370キロに近く(TTはデュアルクラッチということを考えるとやはりS1は重い)、ジョンクーパーワークス3ドアの1250キロと比べてもやはり「重い」数字ですね。

しかしながら現在「アウディ唯一のマニュアル・トランスミッション」を持つという価値は大きく(S1にはAT/デュアルクラッチは存在しない)、この車を日本で発売してくれたアウディ・ジャパンには喝采を送りたいところ。

馬力はジョンクーパーワークス3ドアと同じくらいで、価格もS1が423万円、JCWが429万円なので、このS1はジョンクーパーワークス3ドアに真っ向からぶつかる車ということになりますが、とりあえず試乗へと移りましょう。

まず外観は「意外と」通常のA1との差異はなく(ニスモのように派手なエアロやアクセントカラーによる差別化が無いという意味で)、前後バンパー形状が専用となりドアミラーハウジングもS専用のアルミルックに、そして大型リアディフューザーとマフラーエンドがハイパフォーマンスモデルであることを主張する程度。
ホイールも変更されブレーキキャリパーも「レッド」となるものの、全体の雰囲気はA1らしさを色濃く残しています(そこが”羊の皮を被った狼”的でいいのかも。よくよく考えるとこのほうがアウディらしい)。

インテリアについてもそれは同じで、スポーツシートやアルミ調の加飾を除けば比較的普通。
ただしSモデルやRSモデルにおけるアウディの文法からゆくと、これも「アウディらしさ」が貫かれたところではあります。

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アウディS/RSモデルの美点として、「一見してハイパフォーマンスカーとはわからない」ということがありますが、これは意外と重要で、「(色々なしがらみがあって)目立ちたくない人」、「治安の悪い国に住んでいて、見た目からして高価なスポーツカーとわかる車に乗ると誘拐の危険性がある人」などで、しかしハイパフォーマンスカーに乗りたい場合、Sモデル、RSモデルはまさにうってつけ。
そう言った需要もあるためにアウディのS/RSモデルは外観やインテリアにおいて「比較的大人しめ」の路線を採用しているのでしょうね。

まずはシートポジションを合わせますが、この車は「マニュアル・トランスミッション」であるため、クラッチを基準にシートの前後を合わせます。
クラッチの踏みしろは大きくも小さくもなく、一定の力で奥まで踏み込めるようですね(車によって、踏み始めが重いものがある)。
そしてアクセル、ブレーキペダルがしっかり踏めること、ステアリングホイールがちゃんと回せることを確認してドラポジの調整は完了。

その走りはまさに驚くべきレベル

その後はミラー類を調整していざエンジンスタート。
エンジンを始動させて思うのは「意外と静か」ということ。
サウンド、振動共に「相当に低いレベル」に抑えられており、これはTTと比べても「相当に小さい」と言えます。

ベースとなるA1がそもそも快適性を考慮しているためかと思われますが(インシュレーターなどが多く、それで重量が増しているのかも)、ボトムレンジとは思えない上質な印象ですね。

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クラッチがどこで繋がるのか、回転数はどのくらいがいいのかはこの時点ではもちろんわからないので(そこがマニュアル車試乗の面白いところでもある。この瞬間は結構重要)、まずはアイドリングでクラッチをゆっくり繋ぎますが、あまりの扱いやすさにちょっとびっくり。
ミートポイントがわかりやすく、クラッチもさほど重くないので半クラ状態を維持するのにも足がプルプルすることもなく、いとも簡単に「ポン」と繋がる、という感じです。

最近運転したマニュアル車だとアバルト124スパイダー、マツダ・ロードスター、スバルWRX STI、フォルクスワーゲン・ゴルフRがあり、所有してきたスポーツ系マニュアル車だとポルシェ・ボクスター(986)、ポルシェ911(997)、ミニクーパーS(R56)がありますが、シフトフィールとしてはポルシェ・ボクスターの「ワイヤー式」に近く、ほとんど力を要せずに文字通り「手首の返しだけで」シフトチェンジが可能。

反対にシフト操作に結構力が必要な車もあり、そういった車は「そこに気を取られて」運転自体を楽しめないケースもあるので、S1のシフトフィールは「大変素晴らしい」と評価できますね。

ぼくの知る限り、マニュアル・トランスミッション車でこれほどシフト操作とクラッチ操作が容易でスパっと決まる車は記憶になく、初めてアウディのMT車を運転したことにはなりますが、「よりハイパワーでシャシー容量の大きな(TTRSなど)RSモデルのMTだととんでもなく楽しいんだろうな」ということも想像できます。

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ちょっと慣れたところで少し速度を上げてゆきますが(ドライブモードはいきなりダイナミックで)、まさに痛快といった表現がぴったりで、これはマニュアルトランスミッションならではのダイレクトさに加え、優れた足回り、やはり優れたエンジン、そして何よりクワトロが貢献している模様。

というのも低いギアでレッドゾーン手前まで引っ張っても(過剰な出力を持っているわけではないので回転上昇を読みやすい)トルクステアが全く発生せず、しかしこれくらいの馬力を持つFF車だとまず挙動が不安定になるところ。
出力の高いエンジンながらも、それをクワトロシステムによって「確実に」路面に駆動力として伝えることができているという印象があり、「どこまでも踏めるわコレ」と感じさせるものがあります。

なおカタログにはクワトロの表現として「ガムテープで路面に張り付く」図がありますが、まさにこんなイメージ、と言ってよいでしょう。

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(法定速度の範囲内で)車線変更を行い、走行している他の車両を「縫うように」走るのもお手のもので、とにかく手足のように、そして意のままに操れる車。
正直「こんな車があったとは」「もっと早く出会っていれば」と思わせられ、「なぜこの車が話題にならないのか」と不思議になるほどで、これまでに運転したハッチバックの中では間違いなく「最高評価」。

クラッチやシフト操作に気を使うことなく、むしろ積極的なシフトチェンジによって性能を引き出し、思った通りに走行させることができる車であり、峠だろうと高速道路だろうとシーンを問わずに”楽しめる”車でもありますね。

一方で「流す」のも得意なようで、ターボエンジンの豊富なトルクにものを言わせて低回転でゆったり走る、という使い方もこの車には合っているようです。
実際に走行してもロードノイズの侵入やエンジンの振動、不快な騒音は極めて小さく、やはりTTよりはるかに快適な車だという印象がありますね。

JCWもハイスピード、ワインディング、タウンスピードにて難なく走り抜けてしまう車ではありますが、その意味でもライバルはやはり完全に「ジョンクーパーワークス3ドア」だと言えそうです。

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ありきたりな表現ではあるものの、「使いきれるパワー」「路面に吸い付く」「手首の返しで決まるシフト」「意のままに操れる」車で、そう言った表現はこのアウディS1のためにある、と言ってもいいくらい(そういった表現がこれほどぴったりな車を他に知らない)。

価格はちょっと高めではあるものの、この価格で購入できる車でここまでの楽しさ、走行性能を持つ車は他にはなく、間違いなく「買い」だと断言できる一台です。

なお車をお借りしたのはアウディ東大阪さん。
レアなS1を試乗車で用意しているのには驚きですが、おかげで楽しい体験ができ、改めて感謝です。

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