| BMW M2は最も楽しいMモデルとの呼び声が高い |
さて、大阪は舞洲にて開催された「Mサーキット・デイ2018」に参加。
これは日本各地で開催されるイベントで、本来は名称の通り「サーキット」で開催される類のものですが、大阪会場では舞洲スポーツアイランド”空の広場”に「特設コース」を作ってクローズドサーキットを再現した形となります。
当日はBMW M2、M3、M4クーペ、M5、M140i、M240iクーペ、X5M、M760Li xDriveといった車が用意され、特設コースもしくは会場から出て高速道路での試乗が可能に。
ぼくは今回M2とM5の予約を入れており、ここでその試乗の様子を紹介したいと思います。
BMW M2のスペックは?
BMW M2は現代では「比較的コンパクト」なサイジングが特徴です。
M3やM4が大きくなってしまった今、日本市場にとってはけっこう貴重なボディサイズを持っているとも言えそう。
そしてエンジンは3リッター直6ターボ。
しかしM3/M4とは異なる形式で(M2コンペティションになるとM3/M4と同じエンジン形式)、これはM3/M4と差をつけるための措置であり、価格とパフォーマンスにおいてM3/M4と意図的にバランスを調整するための手段でもあります。
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6ターボ
出力:370馬力
トランスミッション:7速M DCT Drivelogic
BMW M2の外観を見てみよう
まずはBMW M2の外観をチェック(画像はM2コンペティション)。
やはりM2の特徴といえば「前後ブリスターフェンダー」。
短いボディに幅広フェンダーを装着しているため、サイズに余裕のあるM3/M4に比べて抑揚が大きくなり、まるでチューンドカーのような雰囲気もありますね。
ドアミラーはおなじみ航空機モチーフの「Mミラー」。
フロントフェンダーはグリル横から取り入れたエアが側面へと抜ける構造。
最近のハイパフォーマンスカーにはよく見られるデザインで、アウディのRSモデルにも採用されている意匠です。
BMWはフロントフェンダーの内圧を抜くためのスリットをフロントフェンダーやサイドステップに設けるなど、「意外に」エアロダイナミクスにこだわるメーカーでもありますね。
そしてぼくが気に入ったのは「リアタイヤ」。
ツライチなのはもちろんですが、ちょっと「引っ張り」気味で、かつちょっと「キャンバー」角つき。
こういったところを見ても「これがメーカー純正だとは信じられない」ようなクルマでもあります。
BMW M2を運転してみよう
さっそくドアを開けて運転席へ。
まず思うのは「意外と座面が高いな」というものですが、これはやはり2シリーズをベースにしているためでしょうね。
シートやステアリングポジションを調整し、その後ステアリングコラム左脇にあるスターターボタンを押してエンジンを始動。
そしてドアミラーを調整してセレクターレバーを「D」に入れて早速クルマをスタートさせます。
試乗したM2のトランスミッションはDCT(デュアルクラッチ)ですが、クリープはなく、チョンとペダルを踏んでクリープ状態に。※BMWのDCTはちょっと扱い方が特殊
そのまま道路に出てゆっくり加速させますが、この時点では370馬力を感じさせないマイルドさで、かなり運転しやすいという印象。
試乗コースの途中にはトラックターミナルを通ることになりますが、M2はグラスエリアが広く視界が開けているので周囲の見切りがよく、トラックに囲まれるような状況でも問題ナシ。
狭い道路で大きく曲がるようなシーンでも回頭性はよく、1855ミリの幅を持つクルマとしては異例によく曲がるとも言えそうですね。
M2のポイントは「重心が安定していること」「フロントの接地感が高い」
そのまま高速道路に乗り、状況の許す限り、そして法規制の範囲内で加速と減速とを繰り返しますが、かなり動きは「自然」。
五味康隆氏が(試乗前のトークショーで)「Mモデルはサスペンションの伸び側と縮み側との量が1:1なので重心の移動が少ない」「加速時にもフロントを浮かせずにリアを沈みこませるようにしているのでフロントの接地性が失われない」と述べていましたが、たしかに運転時にそのあたりに気をつけてみると「たしかにその通り」。
これはハンドリングに大きく影響することになり、たとえばダブルレーンチェンジやS字カーブでは「重心の移動」が少ないことが大きなメリットとなる模様。
今回のM2試乗で初めて気づくことになりますが、おそらくはアウディは伸び側が縮み側に比較して「長く」、そのために多少の重心移動が生じることになり、それで「S字が苦手」だったのかも(そしてそれをクワトロによるトルクベクタリングで補う)。
フロントの接地性についても大きなメリットとなり、ステアリングホイールを切って加速するような状況でも「駆動力でクルマの向きを変える」ことがM2では非常に容易です。
どっしりした安定性は感じないものの「そう簡単には破綻しない」という安心感があり、安心してステアリングホイールを切り、安心してアクセルを踏めるクルマでもありますね。
そしてブレーキについても同様に安心感が感じられ、そこにナーバスさはなく、高速域からの減速、街中でブレーキを踏んでから完全停止するまでもずっと一定の制動力を発揮させることに。
意外やM2はマイルドな性格を持っている
M2はジェレミー・クラークソン曰く「もっとも楽しいMモデル」だと発言していますが、ジェレミー・クラークソンの性格からして「そう言うからにはよっぽどスパルタンなんだろう」と試乗前に想像していたものの、実際に運転してみると意外やその性格はマイルドで、加速、ハンドリング、ブレーキ、そして挙動についてもまさに「自然」。
ガツンとくるような衝撃や急激な挙動の変化はなく、この点においてはM4のほうがスパルタンだと感じられるほど。
しかしながら「370馬力をここまで普通に乗れる」クルマというのを他には思いつかず、FRにもかかわらずどうやっても破綻させない安定性を持っているというのは特筆すべき点でもありますね。
加えてDCTのマナーも良く、変則ショックや低速域でのギクシャクした動きはなく、トルコンATと同じ感覚で乗ることが可能です。
ドライブモードは「Sport」がちょうどいい
なお、ドライブモードを「スポーツ」に入れた際に変化するのは「ステアリングホイールの重さ」「アクセル操作に対するレスポンス」「シフトプログラム」「エキゾーストサウンド」で、M3/M4と違うのはサスペンションの硬さが変わらないこと。
しかしながら人間の感覚とはいいかげんなもので、ステアリングが重くなってサウンドが大きくなると「なんとなく足回りも硬くなったような」気になるのが不思議です。
M2の足回りについては初期のアタリがやや硬く、そこからが柔らかい、という印象。
ちなみにアウディやポルシェは初期のアタリが柔らかく、逆にそこからが硬く(ダンピングレートが高い)感じられ、セッティングがまったく異なるのは面白いところですね。
印象としてはアウディRSモデル、ポルシェ718ケイマン/ボクスターのほうが直接的で俊敏だと感じますが、扱いやすさと乗り心地という点ではM2に軍配があがる模様。
ブレーキを踏んで荷重を移動させ、そこからステアリングホイールを切ってアクセルを踏んでクルマの向きを変えるという「FRの基本的な走らせ方」を楽しく、かつ無理なくできるという点においては「トルクベクタリングで無理やり曲がってしまう」アウディRSモデルとは大きな差異があり、ここはメーカーの考え方の差が大きく出ている部分です(どちらが良いか悪いかではなく、好みの問題ではある)。
ちなみにトヨタが「LFA」を開発する際にミドシップも検討したものの、挙動がピーキーになりすぎるとし、よって挙動がマイルドでコントロールしやすいFRレイアウトを選択したと言われますが、BMW M2はそういったFRのメリット、FRらしさを持つ優れたクルマだと言えそう。
総合的に考えると、この性能でこの価格というのはかなり「安い」とも言え、かつ中古市場を見る限り「もっとも値下がりしないBMW」と言っても良く、M2は現実的な選択としてかなりいいんじゃないか、と思った試乗でした。
BMW M サーキットデイ当日の様子、M2のほかの画像はFacebookのアルバム「BMW M Circuit Day in Japan」に保存しています。