| EVへのシフトは「効率」「空力」面で自動車業界を大きく変革させることになりそうだ |
さらにガソリンエンジンやトランスミッションというレイアウト状の制約がなくなり、車体の形状そのものも変わってゆくのだろう
さて、メルセデス・ベンツは先日「一回の充電で1000km走ることができる」EVコンセプト、EQXXを発表していますが、その達成手段として用いられたのが「効率」。
つまり、「大きなバッテリーを積めば容易に航続距離を伸ばすことができるものの、それはだれでもできる方法であり、かつバッテリー容量を大きくするとそのぶん重量が重くなり、電費を悪化させるばかりかタイヤやブレーキにも負担をかけ、運動性能にも悪影響を及ぼすため」バッテリーの容量アップは同社がとるべき方法ではない、と判断したわけですね。
実査のところ、すでに市販されているメルセデス・ベンツEQSは107.8kWhの大容量バッテリーを積んでいるのに対して航続距離は770キロ、しかしEQXXは100kWh以下のバッテリーを用いて航続距離1000kmを達成しています。
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EVにとって空気抵抗は非常に「大きな意味を持つ」
そしてメルセデス・ベンツがEQXXの「効率化」に際して注力したのは「バッテリー効率」「駆動効率」「軽量化」「空気抵抗の低減」だとされますが、そのうち空気抵抗の低減は非常に大きなウエイトを占めるといい、メルセデス・ベンツによれば「Cd値が0.01削減できれば、航続距離を2.5%伸ばせる」。
なお、EQSのCd値は0.20、EQXXでは0.17なので、これだけで(計算上は)7.5%も航続距離が伸びる、ということになります。
よってメルセデス・ベンツは現在「いかに空気抵抗を小さくするか」に取り組んでおり、同社の最高技術責任者であるマルクス・シェーファー氏によれば「事実として、効率を達成するための最大の要因は、エアロダイナミクスに車両サイズの要因を掛けたものです。未来のSUVは空力向上のためにガソリン車とは異なる形状になり、空気の流れを最適化するために車体後部を低くする必要があります」とのこと。
なお、EQXXがセダンボディを採用しているのは「(セダンが)空力的に有利なボディ形状と高さを持っているから」で、しかし現在の自動車市場では「(メルセデス・ベンツの表現を借りるならば)お客様がSUVを愛している」状態でもあり、いかにSUVボディのまま空気抵抗を削減するかが課題となるようですね。
参考までに、GLSのCd値は0.32、そして一つ小さいGLEのCd値は0.29なので、車体の大きさ(前面投影面積の大きさ)がCd値に大きく影響することは間違いありませんが、一方でGLCベースのEQCのCd値は0.27、GLBベースのEQBとGLAベースのEQAは両方とも0.28。
つまり、サイズからいうとEQCのほうが「不利」ではあるものの、EQCではボディ表面やボディ形状そのもののをよりなめらかに、そして空気抵抗が低い形状とすることで「より低いCd値」を稼ぎ出しており、つまりは「車体サイズ以外にも、Cd値を下げることができる要素がけっこうある」ということに。
よって、今後メルセデス・ベンツはCd値を下げるために様々な手段を用いることになり、そしてそのヒントはEQXにある、ということなのかもしれません。
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参照: Autocar