アナリスト「ポルシェの上場は最悪のときに行われることになる。最大では40％ほどの価値を損なうことになるだろう」

｜ ただしポルシェは上場するならば「今しかない」と考えている ｜

電動化に資金が必要な今、このタイミングを伸ばせばライバルに（電動化で）先を越される可能性も

ポルシェは9月以降にIPO（株式新規公開）を行うものと見られていますが、この上場はもしかすると「最悪のタイミング」の中で行われるんじゃないかという推測が広がっているもよう。

最悪のタイミングとは「インフレ、エネルギー不足、ロシアのウクライナ侵攻、コロナウイルスのパンデミック」といった状況を指していますが、ポルシェ（の最高財務責任者であるルッツ・メシュケ氏）としては、このような状況下にて納車台数が5％減少しても、2022年の収益は2021年の330億ユーロ（336億ドル）から380億ユーロ（約386億ドル）に増加するため、財務的な弾力性があり、ポルシェの魅力は損なわれないと見ているもよう。

ただし市場の評価はそうではない？

しかしながら投資家や銀行家、アナリストたちの評価はそうではなく、ポルシェ含むフォルクスワーゲングループ側では「900億ユーロ〜1000億ユーロの市場価値がある」と見積もっているのに対し、アナリストらの試算では550億ユーロ〜800億ユーロにとどまり、妥当なところでは時価総額600億ユーロで上場するだろうという意見が主流となっているようです。

加えてポルシェの既存株主たちは今回の上場に対して賛成しかねる人々もいるといいますが、上場すれば自身が持っている株価も（まず）上がるので資産が増えることになるものの、自身の持つ影響力が下がってしまうことを懸念している、とも伝えられています（当然ながら使い切れないほどのお金を持っているものと思われ、お金のことはあまり気にしていないようだ）。

ただ、ポルシェ（というかフォルクスワーゲン）としてはどうしてもポルシェを上場させたく、その理由は「電動化シフトに際して大量の資金が必要であり、IPOによって得た資金を電動化（2030年までに80％をエレクトリック化）へ回すことを前提にした計画を持っているため。

もちろんポルシェだけではなく、フォルクスワーゲンも（現在保有している）ポルシェの株式をリリースすることで大金を手にすることができ、今こそがまさに上場のチャンスである、というわけですね。

市場にリリースされるポルシェの株式は少量、かつ議決権を持たない

そしてこういった事情を反映し、「上場させたくない」株主、「上場させたい」フォルクスワーゲンの意向を調整した結果、IPOによって売りに出される株式は既存株主の権利を損なわない範囲の少量であり、かつ議決権が付与されていないといい、こういった「妥協案」もまたポルシェの上場に際して株式の価値を下げることになるとも指摘されていて、もしかするとポルシェの評価額は「予想よりずっと下」となる可能性もありそうです。

現時点ではまだ上場の時期について最終的に決まっていないといい、しかし関係者間にて8月末に市場の状況を調査し、決定はその後に開かれるポルシェの取締役会にて決定されると言われ、関係者によると、フランクフルト証券取引所でのIPOの日程は第3四半期の終わりか第4四半期の初めになる可能性が高い、とのこと。

なお、バーンスタインのアナリストは比較的高い750億ユーロに評価額を設定していますが、「ポルシェが素晴らしい会社であることに変わりはない」としながら「しかしポルシェはフェラーリではない」とも。

この意図としては、ポルシェは高級車ブランドではあるが、フェラーリのような「超」高級車ブランドではなく、フェラーリとは異なって不況の影響を受けやすく安定性に欠けるというものであり、現在のような状況においてはフェラーリほど強くはなく、そこがまた最高の評価を与えることができない理由の一つだというわけですね（それでも他の自動車メーカーよりは遥かに不況に強く、フェラーリに次ぐ強さを持っているとも考えられる）。

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