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ポルシェは当初カイエンをVWの東欧工場で生産する計画だったものの「ドイツ製」にこだわって新しく自前の工場を建設していた!カイエン人気に合わせ20年で5回も工場を拡張

ポルシェは当初カイエンをVWの東欧工場で生産する計画だったものの「ドイツ製」にこだわって新しく自前の工場を建設していた!カイエン人気に合わせ20年で5回も工場は拡張

| ポルシェはたびたび「売れすぎ」で工場を拡張したり、他社に生産を委託したりしている |

VWグループに属するため、VW各社の設備を使用できるのは「ラッキー」だったと考えて良さそう

さて、ポルシェ・カイエンは今年で20周年を迎え、ポルシェはカイエンにまつわる様々なストーリーを公開中。

これまでには「カイエンはメルセデス・ベンツと共同開発するばずだった」「カイエン開発を知られないよう、一つの会社の社屋と敷地をまるごと買い取り、そこでポルシェの名が出ないように開発を進めた」等の事実が紹介されています。

そして今回は、「カイエンの製造とともに稼働を開始したライプツィヒ工場での(カイエンの)生産を、なぜ3代目カイエンではライプツィヒではなく、別工場にて生産するようになったのか」という背景について語っています。

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ポルシェ・カイエンはもともとフォルクスワーゲン工場にて生産されるはずだったが

カイエンはもともと「スポーティーな多目的車(パルチパーパスビークル)をポルシェのラインアップに加える」という目的のもと開発され投入されていますが、当初はメルセデス・ベンツMクラスをベースに開発する計画が持ち上がり、しかしそれがなんらかの事情にて実現せず、「プロジェクト・コロラド」としてフォルクスワーゲンと共同開発することに。

そしてフォルクスワーゲン側ではトゥアレグとして(この新型SUVが)発売されることとなるわけですが、カイエン、そしてトゥアレグともども、当初はフォルクスワーゲンの(スロバキアに建設する)ブラティスラバ工場にて行う予定だったと言われます。

ただ、当時のポルシェCEO、ヴィンデリン・ヴィーデキング氏(フォルクスワーゲン買収に失敗し解任。後にピザのチェーン店を開業したというウワサ)はポルシェのクルマについて「メイド・イン・ジャーマニー」であるべきだという考え方を持っていて、「ドイツ生産を行うことによるコスト上昇、ドイツ生産によって得られる付加価値と高利益率」とを天秤にかけた結果、最終的にドイツでの生産を選ぶことに。※カレラGTもこのライプツィヒ工場にて生産されている

02_2002_Einweihung PLG

そしてこの決断がシュトゥットガルト・ツッフェンハウゼンの本社に加え、第二製造拠点の建設の開始につながるわけですが(当時の本社工場では、カイエンの生産に対応できる設備・規模ではなかった)、様々な候補地を検討し、ライプツィヒへと工場を建設することを決定します。

このプロジェクトは社内でも極秘裏に進められたといい、ポルシェにて社内イベントの企画責任者であるフランク・ミルデンベルガー氏は「週末になる前に上司から言われたんです。週末前に上司から『月曜日に出発するが、行き先はそれまで教えない』と言われたんです」と当時の奇妙な出来事について語っていますが、はたして彼らが月曜日になって到着したのはライプツィヒ近郊の広大な土地であり、そこで初めて、フランク・ミルデンベルガー氏は「ここに新しい工場が建設されるのだ」と聞かされ、さらに「起工式を担当するように」と告げられることに。

なお、ポルシェは最近にも「フォルクスワーゲンの工場で生産する予定であった新型車を、急遽自社で生産することに」して多額の違約金を支払っていますが、その根底には「ドイツ製、そして自社製にこだわらねばならぬ」といった思想が見え隠れするように思います。

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ポルシェのライプツィヒ新工場の起工式は盛大に行われる

かくしてフランク・ミルデンベルガー氏はこの新工場の起工式を担当することになりますが、この決定が正式に発表されたのは1999年9月であり、そこからはポルシェ、ライプツィヒ市、ザクセン州が一体となり、この大規模なプロジェクトのスケジュールを達成するために奔走することに。

フランク・ミルデンベルガー氏によると、起工式については「100人のゲストを招待する予定でしたが、ポルシェがライプツィヒに関わることの重要性が徐々に伝わってきました。突然、誰もがその場に居合わせることを望むようになったのです」とのことで、最終的にはケータリング、衛生設備など、350人分のインフラが必要となったほか、工事現場用の黄色い長靴までも用意することになり、ヴェンデリン・ヴィーデキングCEO、当時のザクセン州首相クルト・ビーデンコップフ氏、ライプツィヒ市長ヴォルフガング・ティーフェンゼー氏らが、起工式でこれを履いた姿も記録として残されています。

01_2000_Spatenstich Porsche Leipzig GmbH

そして2000年2月の起工式から2002年8月20日の正式な生産開始まで、わずか2年半という期間にて工場建設が進められ、生産開始後には15,000平方メートルの組み立てホールへと、(VWの)ブラティスラヴァ工場にて塗装されたカイエンのボディが運び込まれ、ツッフェンハウゼンから運ばれてきたエンジンとともにトランスミッションを結合する「マリアージュ」を行うことに。

パーツやコンポーネントは他工場で製造されたといえど、最終的な製造をライプツィヒにて行うことにより、カイエンは法的にも「メイド・イン・ドイツ」とみなされることになったようですね。

ライプツィヒ工場は度重なる拡張が行われる

その後の「カイエンの成功」がご存知のとおりで、その需要に対応するために2004年に一回目の拡張工事が行われていますが、工場建設から20年の間に都合5回に渡る拡張工事が行われており、2009年からはパナメーラ、2013年からはマカンの生産も開始。

その後もカイエンの人気は留まるところを知らず、2022年第1四半期においても「もっとも売れたポルシェ」の座を堅持しています。

そうなるともう(いかに拡張を続けたといえど)このライプツィヒ工場ではカイエンの生産を賄うことが難しくなり、そこでポルシェは遡ること2017年に738,503台のカイエンをライプツィヒにて生産した後、ブラティスラヴァ工場へと生産の拠点を移すことになったそうですが、現時点でもポルシェの各モデルは「ポルシェの自社工場での生産では対応しきれないほど」多くの受注を集めているといい、たびたび(親会社である)フォルクスワーゲンの工場へと生産を移していることも報じられていますね(それ以前にも、ヴァルメットなど他社に生産を依頼していたことがあった)。※ポルシェのクルマは非常に利益率が高いので、フォルクスワーゲングループとしても他ブランドのクルマよりもポルシェの生産を優先したいのだと思う

06_2017_letzter Cayenne PLG(3)

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そして現在のライプツィヒ工場の様子ですが、当初の「組立工場」から本格的な生産を行う施設へ、そして自動車愛好家が集う場所へと様々な進化を遂げており、併設されるポルシェ・エクスペリエンス・センター・ライプツィヒでは、顧客が(納車される)車両を受け取り、ヒストリックカーの展示を見学し、さらにはサーキットやオフロードコースにてポルシェを走らせることも可能となっています。

なお、その視覚的な特徴は「ダイヤモンド」と呼ばれる高さ32メートルの(宝石のようなシルエットを持つ)カスタマーセンターだとされ、ライプツィヒのランドマークとしても機能しているようですね。

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参照:Porsche

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