
Image:Porsche
| 現在、マニュアル・トランスミッションを積む「ライバル」は見当たらない |
可能性があるとすればGMA T.50もしくはT.33くらいである
さて、ポルシェはニュルブルクリンクでのタイムに非常に強いこだわりを持っており、「レーシングカー」「EV」「サルーン」「SUV」「市販車全て」において最速ラップタイムを記録したことがあり、一部では未だそれを維持しています。
ただし近年では「反則級の」市販ハイパーカーも登場していて、市販車総合トップの座は”そういった”ハイパーカーのひとつであるメルセデスAMG Oneの手にわたってしまっていますが(この記録を破るのは容易ではない)、そのためか今回ポルシェは「ニッチ」な分野でのニュルブルクリンク最速を記録したと発表。
8年間破られなかった“バイパー神話”を撃破
その+「ニッチな」記録とは「マニュアルトランスミッション搭載車としてのニュルブルクリンク最速ラップタイム」で、これはポルシェが少し前に予告した「公約」を達成したということに。
ポルシェが使用したのは、新型911 GT3(2025年モデル)、ステアリングホイールを握ったのはワークスドライバーのヨルグ・ベルクマイスターだとアナウンスされ、そのタイムは驚異的な6分56秒294。
これは従来のマニュアル車最速記録を大きく塗り替えただけでなく、PDK(7速DCT)を搭する先代911 GT3のタイムすら上回るという快挙です。
参考までに、これまでマニュアル車最速の称号を持っていたのは、ダッジ・バイパーACR(7分01秒3)で、この記録はなんと8年間も破られていないまま。
ただし、当時のタイムはニュルの計測方式が統一される前のもので、約20.6kmのショートラップに基づいたものだったため、現在の基準である12.8kmだと7分6秒くらいということになりそうです。
なお、現在は20.8kmのフルラップのみが正式に認められるため、両者を「12.8km」どうしで比較すると、(ポルシェ911GT3のマニュアル・トランスミッション仕様は)実質的にバイパーより10秒以上速いと考えることも可能です。
しかも、911 GT3はバイパーより約140馬力少ない条件下での記録なので、やはりポルシェ911は完全に次元が違う、ということになりそうですね。※ただ、バイパーの名誉のために補足しておくと、つい最近マスタングGTDが記録を破るまで、バイパーACRは”ニュル最速のアメ車”だった
「ほぼ全てのコーナーで前世代の911 GT3よりも速かった」
そして今回、ヨルグ・ベルクマイスターは走行後、以下のようにコメントしています。
「新型911 GT3は、前モデルよりも限界域での信頼性がさらに増した。ほぼすべてのコーナーで速くなっている。GT3 RSの開発から多くのことを学び、とくにシャシーは大きく進化している。バンプや縁石でも安定感があり、ギア比が8%短くなったことで、同じエンジン出力でもリアへの駆動力が明確に増している。たしかにPDKを使えばあと数秒は速く走れたかもしれない。でも6速マニュアルでのアタックは操作量も多く、楽しさも格別だったよ」
このポルシェ911GT3はヴァイザッハ パッケージ&最速タイヤで武装
今回記録達成に使用された車両は、軽量化パーツやカーボントリムが含まれるオプション「ヴァイザッハ・パッケージ」装着車。
さらに、装着タイヤはミシュラン・パイロットスポーツカップ2 R――新型GT3に装着可能な中で最もハイグリップなタイヤです。
つまり、本気のポルシェが本気で出したマニュアル車最速ラップということで、これは(MRキット装着車で挑まない限り)しばらく破られそうにありません。
実際のところ、「マニュアル・トランスミッションを積む」スポーツカーでポルシェ911GT3を超えることができそうなクルマはざっと見渡しても存在せず、唯一可能性があるのは(そして挑戦すれば間違いなく記録を更新するであろう)ゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)T.50、もしくはT.33くらいかもしれません。
ポルシェがマニュアル・トランスミッション搭載の911GT3にてニュルブルクリンクの記録を更新する動画はこちら
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参照:Porsche