
| EVシフトの裏に隠された致命的なリスクと大転換の全貌 |
まさに「弱り目に祟り目」なのが今のポルシェでもある
自動車業界が大きな変革期を迎える中、ポルシェは極めて大胆、かつリスキーとも言える決断を下しており、それが「屋台骨の一つでもあるマカンの生産終了」。
ポルシェが直近で行った決算発表によると、はこれまで同社の最量販モデルとして圧倒的なシェアを誇ってきたコンパクトSUV「マカン」の純ガソリンエンジン(ICE)仕様の生産を2026年7月をもって完全に終了することになり、今後は2024年に投入された「マカンEV(電気自動車)」へと(一時的に)一本化される形へと移行します。
この決定は現在のラグジュアリーEV市場の冷え込みを考慮すると、あまりにタイミングが「悪すぎ」、なぜこの時期なのかと専門家の間でも大きな波紋を広げているというのが今の状況。
なぜポルシェは「今最も売れていて、最も利益を生み出しているドル箱」を自らの手で葬り去るのか。その背景、そしてポルシェが直面している冷酷な現実について考えてみましょう。

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この記事の要約・ポイント
- ガソリン版マカンがついに終了: 2015年の登場以来、ポルシェを支え続けた最量販コンパクトSUV「マカン」のガソリンエンジン(ICE)モデルが2026年7月をもって生産終了に。
- 数字が示す「不可解なタイミング」: 2025年の実績では、ガソリン版マカンは新型マカンEV(電気自動車)の「2倍」の売れ行きを記録。収益性の悪化に苦しむポルシェにとって、最大の資金源を自ら断つ形となる。
- 数年間に及ぶ「空白期間」の発生: ポルシェはガソリンエンジンを搭載した「次世代マカン後継車」の開発を明言しているものの、その登場は数年先。それまでの間、マカンを求めるユーザーは「マカンEV」か、より大型で高高価な「カイエン」の二択を迫られる。
- EVキャズムと戦略のジレンマ: 米国でのEV補助金終了や需要の踊り場が直撃する中での生産終了。ライプツィヒ工場の生産枠をさらに利益率の高い「フラッグシップハイパーカー」や「3列シート超高級SUV」に割り当てるための布石という見方も。
なぜポルシェは「今一番必要なクルマ」を自ら終わらせるのか?
今回の生産終了が「謎」とされる最大の理由はシンプルな販売データにあり、直近の2025年における販売実績において、ガソリンエンジン版のマカンは鳴り物入りで登場したマカンEVに対して「2対1」という圧倒的な大差をつけて売れているという現状がまず存在します。
さらにポルシェは現在、世界新車販売台数において継続的な落ち込みを更新しているうえ、製造コストや開発費の高騰による利益の圧迫、加えてトランプ関税に起因して(主要マーケットである)米国市場での営業利益率がわずか0.3%にまで落ち込むなど、収益性の確保に激しく苦しんでいるわけですね。
登場から12年目を迎えた初代ガソリン版マカンは、設計コストや生産設備の減価償却が完全に終わっているため、売れれば売れるほど純粋な利益になる「金のなる木」でもあり、その最高の資金源を”EV需要が世界的に停滞しているこのタイミングで”廃止することは、自らの首を絞める行為としか目に映らない、と捉えられても不思議はありません。
いずれにせよ今後、ポルシェのSUVを購入しようとするユーザーは、価格帯が近くとも充電インフラのハードルがある「マカンEV」に乗り換えるか、あるいは一回り大きく高価な「カイエン」を選択するしかなくなります。

そして今ポルシェがガソリン版マカンの生産を終了させる理由とは「(欧州市場に導入された)サイバーセキュリティ規制」であり、ガソリン版マカンはこれに適合せず、すなわち今後欧州市場での販売ができなくなるから。※718ケイマン・ボクスターの販売終了も同じ理由
もちろんこれは事前にわかっていたことなのですが、当時ポルシェは「電動化が計画通りに進む」「そのためマカンをピュアEVのみのラインアップにする」という決断を下していて、つまり「コストのかかるサイバーセキュリティ法への対応を行わない」という判断をもってガソリン版マカンの「販売終了」を決めています。
「100% EV化」の撤回と、数年間の空白
ただしその後にはEVシフトが予想より(世界的に)遅れることとなり、結果的にマカンEVも「ガソリン版マカンの半分しか売れていない」という状況となってしまい、ポルシェは顧客からのフィードバックを受けて(マカンをEVのみとする)方針を修正することになり、ガソリンエンジンを搭載した「第2世代のコンパクトクロスオーバー(マカン後継車)」を開発し、並行販売することを約束しています。※ただしこのSUVは「マカン」を名乗らないと見られている
しかしここで最大の問題となるのが、「現在のガソリン版マカンは今月で終わるが、ガソリン版の後継車が出るのは数年先」という事実。
ポルシェが「第2世代のコンパクトクロスオーバー」を投入すると決定したのはつい最近であり、そしてすぐにこのクルマが発売されるわけではなく、発売に至るまでの数年間に及ぶミドルサイズガソリンSUVの「空白期間」が生じることとなり、これがポルシェの販売ネットワークや全体の業績に打撃を与えることになる、と見られているのが現在の状況というわけですね。

つまり、ポルシェは「ガソリン版マカンを廃止する」という決定において致命的なミスを犯してしまい、その後「第2世代のコンパクトクロスオーバーを投入する」という決定を行うまでの判断が遅れるという二重の失態を演じてしまったわけですが、同様の現象はミドシップスポーツの「718ボクスター/ケイマン」でも起きており、2025年10月にガソリン車の生産を終了したものの、次世代モデルの全貌はいまだ見えていない、というのが実情です。
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1. ガソリン版ポルシェ・マカン 暫定スペック(米国ベース仕様)
| 項目 | ベースグレード(Base) | マカンT(Touring) |
| エンジン形式 | 2.0L 直列4気筒 ガソリンターボ | 2.0L 直列4気筒 ガソリンターボ(専用調律) |
| 最高出力 | 261 HP @ 5,000 RPM | 261 HP @ 5,000 RPM |
| 最大トルク | 400 Nm | 400 Nm |
| トランスミッション | 7速PDK(デュアルクラッチ) | 7速PDK(デュアルクラッチ) |
| 駆動方式 | 4輪駆動(AWD) | 4輪駆動(AWD) |
| シャシー特徴 | 標準サスペンション | PASM(アクティブサスペンション)標準、車高-15mm |
| 車両重量 | 約1,845 kg | 約1,865 kg |

2. 「マカンT」に見る、ポルシェ伝統の走りの美学
エントリーグレードと同じ261馬力の2.0リッター直4ターボエンジンを搭載しながらも、スポーツクロノパッケージやポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメント(PASM)を標準装備し、車高を15mmローダウンした「マカンT」は、車重のあるV6モデルよりもフロントアクスル(前輪側)が軽量なため、ワインディングロードでの俊敏性は目を見張るものがあります。
強力なパワーだけがポルシェではないことを証明する、極めてバランスの取れた名車であり、これが新車カタログから消えてしまうのは、純粋な内燃機関スポーツを愛するファンにとって大きな損失なのかもしれません。
市場での位置付け:ライプツィヒ工場の「生産枠」をめぐる高度な経営戦略
なお、ここ最近になって報じられるようになった「ガソリン版マカンの生産終了に関する本当の理由」が「ポルシェが誇るライプツィヒ工場の生産キャパシティの再配分(ポートフォリオの入れ替え)にある」という見方。
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ポルシェは現在、目先の販売台数を追うよりも、1台あたりの利益率(マージン)を爆発的に高める戦略へとシフトしていて、償却が終わったとはいえ、比較的安価なマカンの生産ラインを空け、そのかわりに以下のような「超高利益率モデル」の生産枠を確保しようとしている可能性があると見られているわけですね。
- 新型フラッグシップ・ハイパーカー(918スパイダーの後継)
- コードネーム「K1」と呼ばれる、新開発の3列シート・超高級ラグジュアリーSUV
つまり、限られたリソースの中で「1,000万円前後のマカンを多く売る」ステージから、「3,000万円以上の超高級セグメントへ生産を集中させる」という、ブランドのさらなる高級化(アップマーケット化)を狙った布石とも考えられ、これが「リスクの高い決断に踏み切った」真の理由であるとも囁かれています。

Image:Porsche
結論:下半期のポルシェの動向から目が離せない
長年ポルシェの財務を支え続けたガソリン版マカンの終了はブランドにとって大きな賭けであることは間違いありません。
短期的には販売台数の減少や、ガソリン車を求める顧客の離脱といった痛みを伴うことは避けられませんが、ポルシェはすでに2035年を見据えた長期経営指針「ストラテジー2035」へと突き進んでいます。
今秋に予定されているキャピタル・マーケッツ・デイ(資本市場日)において、このマカン終了の穴をどのように埋め、どのように収益性を回復させるのか、その具体的なロードマップが明かされる予定であり、こちらにも大きな期待がかかるというのがいま現在。
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「マカン難民」の発生と中古車市場の予測
今回のニュースは、これから数年間の自動車市場、特にプレミアムSUVの「中古車市場」および「リセールバリュー」の勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めていて、ここで導き出される重要な結論は「極めて深刻なマカン難民の発生」と「後期型ガソリンマカンの価格高騰(リセールバリューのバブル化)」。
1. なぜ「中古のガソリンマカン」の価値が跳ね上がるのか?
これまでマカンはポルシェの中では比較的生産台数が多く、中古車市場での値落ちも緩やかに進んでおり、しかし今回の発表により以下の条件が重なります。
- 「EVにはまだ移行したくない」というポルシェオーナーの強い需要
- ガソリン版の「新車」が完全に途絶えるという供給のシャットダウン
- ガソリン版の後継車が出るまでに「数年間の完全な空白」がある
この結果、走行距離が少なく、状態の良い2024〜2026年式のガソリン版マカン(特にマカンS、GTS、マカンT)は、新車生産終了と同時に中古車市場で奪い合いになり、リセールバリューが異例の超高水準を維持、あるいはプレミア価格化する可能性が極めて高いのでは、とも見られているわけですね。

2. 他ブランドへの「顧客流出」という副産物
その一方、数年間の空白期間中、ポルシェディーラーが「ガソリンのコンパクトSUV」を提案できなくなるため、これまでマカンを検討していた層がBMW「X3 / X4」、メルセデス・ベンツ「GLC」、あるいはマセラティの「グレカーレ」といった、欧州ライバルブランドのガソリン/ハイブリッドモデルへ流出するリスクもはらんでいます。
これは「911とは異なって」マカンが「絶対的代替が存在しないクルマ」ではないためではありますが、ポルシェがこの流出を覚悟の上で「さらなる高級化へと」リソースを振り分けるという経営判断下したことが吉と出るか凶と出るかについても興味が尽きないところだと捉えています。
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参照:Porsche











