>VW(フォルクスワーゲン/Volkswagen)

VWよお前もか。VWが中国シャオペンに投資しEVを共同開発するもよう。もはや中国市場では現地EVメーカーの助けなしには魅力的なクルマを作れない?

2023/07/28

フォルクスワーゲン

| いったいいつからこういった「逆転現象」が起きるようになったのか |

なんだかんだ言いながら世界は中国の思うとおりに動き始めている

さて、現在世界中にてEVシフトが進んでおり、中国がEV生産、そしてバッテリー生産において「覇権」を握りつつあるという状態です。

これは中国政府の目指すところでもあり、中国政府では様々な手法を使用して「EV/バッテリー生産拠点」としての地位を確たるものとしつつあるわけですが、その結果として「中国以外の自動車メーカーは、競争力のあるEVを製造しようと考えた場合、中国の自動車メーカーを手を組まねば生き残れない」状況ができつつある、というのが現在の状況。

実際のところ数日前には、(EVの設計や製造において)世界の最先端を行っていたと思われるアウディが「中国の自動車メーカー、上海汽車からEVプラットフォームやEV関連技術を購入することで合意」という報道がなされましたが、今回はその親会社であるフォールクスワーゲンもまた「中国の新興EVメーカーとの提携を行う」と報じられています。

アウディ
アウディが中国・上海汽車とEVの共同開発に合意。アウディは上海汽車に助けを求める形となり「アウディにできないことが上海汽車には可能」ということに

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フォルクスワーゲンはシャオペンに何を求める?

今回の報道によると、「フォルクスワーゲンは中国の新興自動車メーカー、Xpeng(シャオペン / 小鵬汽車)に7億ドル(現在の為替レートにて約1兆円)を投資すると発表しており、この対価としてシャオペンの株式4.99%を取得することに。

そしてその投資と株式取得に関連しなされた契約が「中国向けに2種類の中型EVを共同開発・生産する」というもの。

シャオペン

今回の合意によって投入される電気自動車は「中国国内」にとどまるということになりますが、これはつまり「フォルクスワーゲンは、自力では中国内で競争力を持つEVを作れない」ということを意味するのだと思われます(アウディと上海汽車との契約もやはり、中国内にとどまるものであった)。

その理由はいくつかあり、安価な労働力やパーツの確保、そして”安価なEVを製造するため”の設計ノウハウ、そして設備など多種多様な問題があるものと思われ、これらを解決してくれるのが(中国内で)より効率的なサプライチェーンや設計システム、製造環境を持つ「EV専業メーカー」「新興EVメーカー」なのかもしれません(最新の理論と技術をもってEVに特化してスタートしている会社なので無駄がない)。

なお、この合意に基づいて設計・製造される新型バッテリー電気自動車(BEV)は、中国・合肥に新設されるフォルクスワーゲンの開発・革新・調達センターで生産され、中国ではフォルクスワーゲン・ブランドを冠して販売されることになる、と報じられています(同じ工場ではシャオペンのEVも製造されるようだ)。

そしてこのうちの1車種はシャオペンのフラッグシップ「G9」をベースにするといい、コネクティビティと先進運転支援システムに関するソフトウェアもシャオペンから提供され、早ければ2026年にも生産がスタートするようですね。

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今回の合意は「Win-Win」でもある

なお、今回の合意は両者にとって非常に実りあるものだと考えていて、まずフォルクスワーゲンにとっては、自社のソフトウエア会社(カリアッド)経由でのEV用ソフトの開発遅れを無視し、シャオペン経由にて車両制御/コネクティビティ関連ソフトを入手できること。

こによって新型EVを「より早く」市場投入できるようになるわけですね。

フォルクスワーゲン

そしてもうひとつは「コストを抑えてEVを製造できること」であり、中国市場は他の市場に比較しても「価格」が販売に及ぼす影響が大きいとされ、実際のところ割高に見える欧米のEVは(テスラを除いて)元気がない状態です。

さらにフォルクスワーゲンは「可能な限り全ラインアップをEVへと」移行したいと考えているものの、同社の中では大きなシェアを占める中国市場でEVが売れないために計画を推し進めることが難しくなってきています(よってデザイン含め、多くをリセットするということも示唆している)。

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しかしながら今回の提携によって、フォルクスワーゲンは中国市場を切り開くための武器を入手することになり、ここから「反撃の狼煙」を上げることができる可能性も見えてくるわけですね。

一方、シャオペンはというと、展開初期こそ華々しい販売状況が報じられて「テスラを超えることができるのはシャオペンだけ」ともてはやされるものの、その後(同じ中国からBYDやLi AUTOなど多数のライバルが出てくることで)販売が失速し、さらにテスラの値下げに対抗する形での「後追い値下げ」によって大きく利益を失っています。

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ただ、今回の共同開発によってEVの開発コストを下げることが可能となり、さらには生産台数が増えることで製造コストも下がり、それ以前にも多額の出資を受けているので運転資金にも余裕が出てくることになり、つまりシャオペンにとっても「いい事づくめ」。

その意味で今回の合意を「Win-Win」と考えているわけですが、もしかすると同様の例がいくつか出てくるかもしれませんね。

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参照:Bloomberg

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