| ボディパネルはフルカーボン、愛しのリトラクタブルヘッドライトも再現 |
ドナーカーは308系、エンジンは308系の横置きから288GTO同様の縦置きに
さて、2020年にフェラーリ308のレストモッド”プロジェクトM”にて大きくその存在を知られるようになったアウトモビリ・マッジョーレが大胆にして優雅な新作「グランツーリスモ」を発表。
これは言うまでもなく288GTO(グランツーリスモ オモロガータ)へのオマージュということになりますが、現代のテクノロジーをふんだんに盛り込み、そしてボディにはセクシーな抑揚が盛り込まれることで他に例を見ない一台となっています。
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フェラーリ288GTOはこんなクルマ
このマッジョーレ・グランツーリスモのベースは288GTOではなく308。
その理由はもちろんフェラーリ288GTOは非常に希少であり、改造が許されるたぐいのクルマではないから。
まず、フェラーリ288GTOはグループB参戦を前提に開発されたクルマですが、このグループBは1980年代に人気を博したモータースポーツ上のカテゴリのひとつ。
恐ろしく改造された市販車たちが異常なスピードで駆け抜けることで人気を博しており、フェラーリとしてもこれに乗じる必要があると考えたのか、そこで開発されたのが(グループB参戦用車両のホモロゲーション取得のための市販車である)288GTO。
ただしグループBは事故多発のために(288GTOが発表された頃には)カテゴリごと閉じられてしまい、よって288GTOはその参戦の場を失ってしまうことになりますが、それでも「モータースポーツ用に開発された車両のロードゴーイングバージョンが販売される」ということで大きな人気を集め、結果的に(ホモロゲーションを満たすには200台で足りたものの)272台が販売されることとなっています。※近代フェラーリにおいて、レース用に開発したクルマを一般に販売した唯一の例だと思う
メカニズム的な面に触れてみると、搭載されるエンジンは2.8リッターV8ツインターボで、これは308に積まれるエンジンとの共通性はなく、しかも搭載方法は308の横置きに比較して「縦置き」。
車体構造は鋼管スペースフレームとなりますが、ホイールベースが308に比較して11センチ長く、全幅もフレアフェンダーによって拡大されており、こちらも308との共通性を持たず、要は「288GTOと308とは別のクルマ(308の外装パーツを一部流用したので結果的に308に似ているだけ、とも言える)」。
マッジョーレ・グランツーリスモはこんなクルマ
そこで今回発表されたマッジョーレ・グランツーリスモについてですが、「80年代を愛しながらも、(2020年の)プロジェクトMよりもハードコアな雰囲気を求める顧客の要望を満たす」ことを目指し」企画されたもの。
なお、288GTOは当時、フェラーリのエンジニアであるニコラ・マテラッツィ氏によって開発されたものですが、なんとこのニコラ・マテラッツィ氏は今回のマッジョーレ・グランツーリスモの開発に(亡くなる数日前まで)参加していたといい、つまりマッジョーレ・グランツーリスモは288GTOの開発者によって設計がなされたクルマということになりますね。
マッジョーレ・グランツーリスモに搭載されるエンジンは308に積まれる2.9リッターV8をベースにしており、しかし288GTOと同じくツインターボにて加給を行うことでなんと600馬力を発生。
もちろん加給だけでこの出力を達成できるわけではなく、ヘッド、スロットルボディ、インテークマニホールドを再設計し、さらにはハードな走行を想定してドライサンプ化。
重要なのはこれらの改良により補機類込みの容積を30%ほど縮小できたことで、これによってエンジンを(308の)横置きから288GTO同様の縦置きへと変更することが可能となっています。
そのほか6速マニュアル・トランスミッションへの換装、ワイドトレッド化、エルガル(航空機用アルミ合金)製サスペンション、ブレンボ製ブレーキなどが追加され、あらゆる面で「600馬に耐えうる」ように強化が図られているようですね。
その外観は「あらゆるフェラーリへのオマージュ」
そしてエクステアリにおいては「マッシブな288GTOからインスピレーションを得た」うえでこれまでのフェラーリに用いられた数々のモチーフが採用され、たとえばエンジンフードは近年のフェラーリV8ミドシップモデルのように「シースルー」。
288GTOに用いられていたリアフェンダーの「3本スリット」も新解釈されてやはりリアフェンダー上、そしてエンジンフード上にも用いられ、ボディサイドのエアインテーク、スター形状ホイールも3Dシェイプとなって現代風に。
ボディパネルは全てカーボンファイバーによって整形されるそうですが、ここまで「コークボトル」を実現したクルマもそうそうないかもしれません。
灯火類はすべてLEDライトへと置き換えられていますが、リトラクタブルヘッドライトを採用しているのも注目すべき点。
もともとリトラクタブルヘッドライト(ポップアップヘッドライトとも)は、当時「空気抵抗を抑えるために車高を低くし、しかしそうすると当時の技術では前を十分に照らすことができるヘッドライトを装着することができなかったため」に考案されたもの。
その後デイタイムランニングランプが法制化されたり、ヘッドライト技術が光源とともに進化するに際して消滅することとなり、よって現代では「それを採用する論理的根拠」はなく、しかしやっぱりスーパーカーにはリトラクタブルヘッドライトが不可欠だと考える多くの人々に配慮したのだと思われます。
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現在アウトモビリ・マッジョーレはこのグラントゥーリスモについて詳細を公開していないものの、19台程度を製造すること、インテリアについても「ヴィンテージカーを意識し、しかし最新のマテリアルとデザイン、機能を持つ」こと、無限のカスタマイズが可能であること、2023年後半から製造を開始する予定であること、注文にはドナーカーが必要であること(208/308/328系なら何でもOK)、しかし大まかな価格すらまったく決まっていないことだけは分かっているようですね。
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参照:Maggiore, TopGear, PistonHeads