| ただしインフィニティの向かう方向にはマッチしていない |
日産が過去数回に渡り公開しているコンセプトカー、「インフィニティQ60プロジェクト・ブラックS」。
これはインフィニティとルノーF1チームとのコラボレーションによって開発されたハイパフォーマンスカーで、ハイブリッドシステムを採用することにより「パフォーマンスと効率性」とをバランスさせたクルマ。
初出は2017年のジュネーブ・モーターショーですが、その後もインフィニティはアップデート版を公開しています。
現在、パワートレインの開発は終了
インフィニティによれば「パワートレーンの開発は終了した」としており、3リッターV6エンジンに熱回生システム(MGU-H)、エネルギー回生システム(MGU-K)をドッキングさせて563馬力を発生。
これら回生によって得た電力はリチウムイオンバッテリーに蓄えられ、クランクシャフトに連結されたモーターを駆動し、エンジンを「アシスト」すると言われます。
つまりPHEVではないということになり、さらにモーターのみでは走行ができず、このハイブリッドシステムは純粋に「走りのため」ということに。
そしてパワートレインが完成した今、オーストリアのザルツブルクリンクに車両を持ち込み、 ニコ・ヒュルケンベルグが走行テストを担当するとも報じられています。
なお、インフィニティQ60プロジェクト・ブラックSのベースとなるのは現在発売されている「Q60 Red Sport 400」で、これに比べると563馬力というのは実に163馬力ものパワーアップ。
F1直系の技術というのは大きな効果を得られる反面、同様の技術を採用すると思われるメルセデスAMG ONEは開発の難航から発売が2年ほど(合計で)遅れるとも言われるほど市販車への転用が難しく、しかしインフィニティがこれを市販車に採用できれば「大きなアドバンテージ」となるのは間違いナシ。
ただし気になるのはその価格で、「誰も買えないような価格」になってしまうと本末転倒。
よって、F1の技術といえども、どこかでコストダウンを図るものと思われます(耐久性を考慮しても、”理論はF1と同じだが、実際のシステムは大きく異る”ことになるのかも)。
ただし市販化には「最後の大きな壁」も
そしてインフィニティが乗り越えなければならないのが「役員の承認」という壁。
現在、プロトタイプ生産までは予算がおりているものの、その先の「市販」ということになると最終決定はなされておらず、プロトタイプを完成させ、その結果をもって最終的な「発売のゴーサイン」を得ることになる、と報じられています。
ただ、ぼくが思うのは「現在、インフィニティはエレクトリックブランドへと向かおうとしており、かつスポーツイメージも薄い高級車ブランドなので」、このQ60プロジェクトブラックSを発売したとしてもイメージ向上や販売の活性化にはつながらないだろうということ。
よってインフィニティ上層部は、このQ60プロジェクト・ブラックSの市販を許可しないんじゃないか、とも考えるわけですね(加えて、インフィニティ含む日産は大変な時期でもあり、こういった”夢を売る”モデルにお金をかけたくないはず)。