| ある意味ではスバルのデザイナーは「どこを抑えればクルマが格好良くなるのか」をよく理解している |
その上で、実現不可能なデザインをコンセプトカーに盛り込み続け、新型車への期待を高め続けたのは「ギルティ」?
さて、「コンセプトカーとその市販モデル」との差異が大きなことで知られるホンダとスバル。
もちろんスバルとホンダに限らず、いずれの自動車メーカーも「コンセプトカーでは格好良さをアピールし、市販モデルでは実用性を重んじる」ことになるため、どうしてもデザイン的な劣化が生じてしまうのですが、とくにこの二社はその落差が大きいということですね。
そしてスバルはつい先日、新型WRXのティーザー画像をリリースしており、つまり新型WRXも発表間近ということに。
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なお、新型WRXについて、スバルは「ヴィジヴ・パフォーマンス・コンセプトにも似た、カッコいいクルマになる」ともコメントしているものの、スバルの市販車については「コンセプトカーから大幅に劣化する」ことを知る人々からは「そううまく行くかな」と疑問の声が上がっているようですね。
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先代スバル・インプレッサはこう劣化した
そこでまずは時をさかのぼって4代目のインプレッサ。
2010年に発表された、スバル・インプレッサ・デザインコンセプトはこんな感じですが・・・。
2011年に発売されたインプレッサはこう。
ヘッドライトが大きくなり、グリルが小さくなり、タイヤとホイールが小さくなり、カメラが廃止されてドアミラーとなり、ドアハンドルもポップアップからアイロン型へ。
グリル周りの造形やフロントバンパー、前後フェンダーあたりはコンセプトカーの面影を残しているものの、全体的な印象は大きく変わってしまっていますね。
こちらはスバル・インプレッサ・デザインコンセプトのリア。
市販モデルはこう。
テールランプは保守的な形状となり、リアバンパー下部もフツウっぽくなり、リアディフューザーも廃止されることに。
スバルWRXコンセプトはこう劣化した
こちらは2013年に発表されたスバルWRXコンセプト。
そして市販バージョンのスバルWRX。
やはりドアミラー、タイヤ、ドアハンドルが「普通に」変更されていますが、ヘッドライトの眼光するどさ、ボディサイドの「くびれ」、リアフェンダーの張り出しが消失しています。
加えて、クーペライクなルーフラインも一般的に、なによりサイドウインドウ面積が拡大してしまい(車体上半分のキャビンも大きくなり)、これによって「ファミリーカー」的なルックスに。
リアからスバルWRXコンセプトを見るとこう。
市販バージョンになるとテールランプやテールパイプ、ディフューザーが普通に戻されていることもわかり、この角度での比較だとルーフラインが全く異なるということもわかりますね。
現行インプレッサもやはり劣化した
次は2015年に発表された、スバル・インプレッサ5ドアコンセプト。
市販モデルのインプレッサはこう。
他モデルと同じくヘッドライトが大きくなど、ボディサイドが平坦になり、ドアミラーが大きくなり、反面タイヤとホイールは小さくなっています。
こちらはスバル・インプレッサ・セダン・コンセプト。
やはり市販モデルになるとメリハリが失われていますね。
スバル・インプレッサ・セダン・コンセプトのリア。
市販モデルのインプレッサ。
サイドウインドウの下側のラインなど「コンセプトカーと市販車との間で変わっていない」部分もあるものの、全体としてはなんかこう、「ちょっと違う・・・」という感じですよね。
ひとつひとつのパーツ、ラインを見ると、市販車がコンセプトカーのデザインを受け継いでいることは間違いないのですが、全体的に見るとそれらの連続性や整合性、バランスが失われており、それが「違うクルマのように見える」理由なのかもしれません。
新型WRX STIの劣化も必至?
そして本題のViziv Performance Concept。
正直言うと、ぼくはスバルのコンセプトカーのデザインは非常にカッコいいと考えていて、というのも躍動感に溢れ、力強さを感じるから。
ただし市販車になると非常に劣化してしまうという流れは不可避ではあるようで、新型WRXについても「ヘッドライト、タイヤ/ホイール、ミラー、ボディサイド、サイドウインドウの面積」は間違いなく変更されることになりそうですね。
(コンセプトカーのデザインを見るに)スバルのデザイナーは「どこをどうすればクルマが格好良く見えるのか」をよく知っているということになり、加えてこの10年の流れを見ると「市販されるときには、どこが変更されて現実的になるか」ということも十分理解しているはず。
にもかかわらず、スバルのデザイナーはこの10年ずっと同じことを繰り返しており、ある意味で「スバルは、市販時に実現できないことを承知で、コンセプトカーには”格好良く見せるための”デザインを盛り込み、周囲の期待感を高めている」という意図的な(誤用のほうの)確信犯的行為を行っているとも考えられます。
ただ、レヴォーグを見る限りでは、コンセプトカーの持つヘッドライトのシャープさ、テールランプの立体的造形も再現されており、このあたりは「技術がコンセプトカーのデザインを再現できるまでに進化した」部分だと言え、デザイナーが(これまでは実現できなかったことを十分理解しつつ)いつかは実現できると信じて理想を描き続けた成果なのかもしれません(BRZのリアデッキ形状も、これまでの技術だと成形が難しかったと思われるものの、技術の進歩にてコンセプトカー様の形状が実現できるようになったひとつの例だと思われる)。
そう考えると、スバルの市販車が「コンセプトカーに追いついてきた」とも言えそうですが、「ドアミラー、タイヤ/ホイール、サイドウインドウの面積、ドアハンドル、ボディサイドのくびれ」についてはまだまだ実現の見込みは低そうですね。
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参照:CARSCOOPS