| この声明からは様々な解釈ができるが、ひとまずは額面通りに受け取るしかない |
さらにこの「転売防止誓約書」に対しては独占禁止法も問題も指摘されているようだ
さて、色々と話題になっている新型トヨタ・ランドクルーザー。
日本国内では予約受注が2万台を超え、そして新規注文が停止されたことが報じられていますが、これについてトヨタはなんらプレスリリースを発してない状態です(これまでであれば、受注状況や納期見込みなどが公表されてきた。ただしランクル300は正式発表前なので、そういった情報を公開していないだけなのかも)。
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トヨタは転売を懸念
そして今回、MAG-Xがトヨタ広報のコメントとして以下を掲載しており、まずはトヨタの見解を見てみましょう。
トヨタ販売店とトヨタ自動車は、日本のお客様に車両を販売するにあたり、販売したら終わりではなく、お客様の安心・安全を守るため、アフターサービスを含めた責任をもったお付き合いを各販売店が続けていくことを共通の理解としております。
MAG-X
また、ランドクルーザーは海外での人気が特に高く、発売直後の車両が日本から海外に流れ、さらには安全保障上規制をされている特定地域に輸出されるような事態を懸念しております。
そして、万一外国為替及び外国貿易法(外為法)違反にトヨタ販売店が関与したとの嫌疑で捜査対象となるような事態に発展すれば、当該トヨタ販売店はもちろんのこと、すべてのトヨタ販売店やトヨタ自動車にとって大きな問題になると認識しております。
トヨタ自動車としましては、車両を供給するメーカーの責任として、法令遵守(じゅんしゅ)の観点から、上記の外為法違反の可能性を理解いただき、法令違反リスクを最小限にするため、全国のトヨタ販売店に注意喚起しました。
これを参考に、各販売店が法令遵守の観点から判断され、お客様から誓約書を受領しているものと認識しております。
このような対応は、昨今の世界情勢と、ランドクルーザーという車の特性を踏まえての措置でありますので、独占禁止法に違反するものではないと考えております。
トヨタ自動車は、これからも世界中の販売店やディストリビューターを通じて、世界各国の法令を遵守しつつよい商品をお届けしていきたいと考えておりますので、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
受注停止と転売は関係ない?
これを見ると、受注停止そのものについては触れておらず、受注停止と転売との因果関係は読み取れない状態。
むしろ、転売しない旨の誓約書を交わせば注文可能だと受け取ることもできますね。
そして、このコメントの骨子としては「転売対策」。
トヨタいわく、「安全保障上規制をされている特定地域に輸出されるような事態」を懸念しているとのことで、これが起きた際にトヨタが「外国為替及び外国貿易法(外為法)違反にトヨタ販売店が関与したとの嫌疑で捜査対象となる」ことを恐れている模様。
企業としてこれは当然のことだとは思いますが、穿った見方をすれば、「発売直後から、転売によって、世界中の中古市場へと大量にランクル300の中古が出回る」ことを避けるためにこういった事情を利用していると受け取ることができるかもしれません。
実際のところ、現在のクルマは世界中で広く販売されることを前提に(仕様地向けの変更が最小限に留まるよう)設計されており、よって(日本仕様といえど)特定地域で問題となるような仕様を持っているとは考えられず、日本から中古が流れなかったとしても、他の国から中古が流出する可能性もあり、時間が経てばどのみち日本からも中古車両が出てゆくことにはなるわけですね。
そう考えると、「そもそも安全保障上の規制にかからない」設計やパーツを持たせる必要があり、トヨタがその認識に至っていないとも思えず、かつ日本では問題はないものの、特定地域では問題となる仕様をランクル300に与えているとも捉えにくい、と考えています。
ただ、かつては(ウワサですが)HIDヘッドライトに使用されるインバーターが武器に転用される可能性があるとのことで、HIDヘッドライトを装備するクルマを中東に輸出する際はハロゲンヘッドライトへと交換する必要が生じたことも(ただ、実際にそれでHIDユニットが大量に中古市場に流れ、アフター品として横流しして大儲けした人もいるので、単なるウワサではなかったのかも)。
さらに現代のクルマは非常に複雑であり、とくに「通信機能」を備えているため、これは各国の電波法に相当する法規に抵触する可能性があるのかもしれません(しかしそれは輸入する国が対応すべき問題でもあり、正規の税関を通って輸入されるのであれば、インポーターがなんらかの対応を行うはず)。
加えて「想定外の」使用方法がなされる場合もあり、たとえば(クルマではありませんが)2015年に起きた、127人が死亡したパリ同時テロにおいては、テロリストが「通信にPS4を使用していた(対傍受性能に優れ、さらには乗っ取りが容易だとされた)」と報じられたことも。
よって、本当に「安全保障上の問題」を抱えている可能性もありますが、「ランクルだけ」がこれに該当するとも思えず、じゃあ海外にバンバン流れているアルファードはどうなるのという疑問も生じてしまいます。
これについて事実を判断するのは難しく、現時点ではトヨタの主張を額面通り受け止めたほうがいいのかもしれません。
※追記:「6年ほど前、ウォール・ストリート・ジャーナルにて、”米政府がトヨタに対し、イスラム国(IS)がランドクルーザーやハイラックスを数百台規模で使用していることについて、入手経路を説明するよう求めた”という記事を掲載したことがある」という情報、そしてトヨタは同様の事態に陥ってしまうことを強く懸念しているのではないかというご意見をいただきました。ありがとうございます。
海外のディーラー対策という可能性も
それでももう一つ思いついたのが「海外の販売店対策」。
現在、新型ランドクルーザーについては「トヨタディーラーのあるすべての国」で販売しているわけではなく、もし発売していない国で新型ランドクルーザーの中古がなだれ込めば、現地の正規ディーラーからクレームが生じることになり、それは発売済みの国であっても同じこと。
それぞれ問題の内容は異なりますが、逸失利益が生じるという点では共通しており、トヨタとしてはこの問題を看過できない(対処する責任がある)ということになりますね。
新型ランドクルーザーは、主に右ハンドル国へと輸出されることになるかと思われ、現在「右ハンドル国」だとイギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、 南アフリカ 、インド、インドネシアあたり。
参考までにですが、日本車ではなく輸入車においてはこの問題が生じたことがあり、「聞いた範囲では」ミニ、そしてアウディQ2。
これらについては「日本への供給が多く」、しかし一部の国では在庫が足りないという時期があって、組織的に「日本のディーラーで買付けた車両が、大量に海外に流れていた」ことがある模様。
もう一つ参考までにですが、今回トヨタの公式声明の中では「独占禁止法」という言葉が出ており、つまりすでにこれが問題視されているということにもなりそうです(ブローカーがその不当性を訴えている可能性がある)。
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参照:MAG-X