| 完全自動運転下の事故ではないというが、周囲の認知システムが機能しなかったのは事実だと思う |
天下のトヨタが自信をもってリッリースした「期待の先端技術」だけにまさに衝撃
さて、トヨタが起こしてしまった「パラリンピック選手村における選手との接触事故」。
これは柔道男子81kg級の北薗新光選手と、トヨタが運行する村内巡回モビリティ「e-palette」とが接触し、同選手が全治二週間の怪我を負いパラリンピックを欠場することになったというもの。
これについて、まずトヨタは下記の通りプレスリリースを公開しています。
2021年8月26日(木)14:00頃、オリンピック・パラリンピック選手村内におきまして、弊社が提供する村内巡回モビリティであるe-Paletteが、横断歩道を横断しようとした視覚障がいのある歩行者と接触する事案が発生致しました。
まずは、お怪我をされた方に深くお詫び申し上げますとともに、一日も早い回復をお祈り申し上げます。また選手村において、弊社のモビリティをご利用頂いている方々に、ご不便をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。
今回発生しました事故の原因特定につきましては、警察の捜査に全面的に協力してまいります。現在、e-Paletteの運行につきましては、全面的に運行を停止しております。このような事案が発生しないよう徹底的な原因究明を進めるとともに、今後の再発防止について、組織委員会とともに検討してまいります。
TOYOTA
豊田章男社長の対応は迅速だった
なお、この事故が発生したのち豊田社長はすぐさま謝罪コメントを発し、警察に協力するとともに独自でも調査を行うこと等を発表していますが、さすがにこれまでにも「フロアマット問題」等で修羅場をくぐり抜けてきただけあってその対応は迅速そのもの。
批判が拡大するよりも速く謝罪を行ったために現在のところ状況は収束しつつあるようですが、e-paletteはトヨタが満を持して投入した車両だけに、業界に与えた波紋はかなり大きいようです。※「自律走行車が通常の道路ではまだ現実的でないことを示している」とも正直に認めている
https://www.youtube.com/watch?v=V-ftyFfu_r8&t=3se-paletteの最高速は時速15キロ
なお、このe-paletteは、”トヨタの車両制御プラットフォームに専用開発の自動運転システム(自動運転制御ハードウェアおよびソフトウェア、カメラやLiDARなどのセンサー)を搭載し、高精度3Dマップと運行管理による低速自動運転を実現した”と紹介されており、その最高速度は時速15キロほど。
事故が起きた状況は「交差点でいったん停止し、オペレーターが手動で発信させた」直後に起きたといい、完全自動運転下での事故ではないようですが、e-paletteには”周囲360°の障害物を常に検知し、周囲の状況に応じて最適な速度で運行。また、システム異常時には、車両に同乗するオペレーターが安全に車両を停止できる緊急停止ブレーキを装備。自動運転時に歩行者とコミュニケーションができるよう、アイコンタクトのように車両の状況を周りに知らせるフロント及びリアのランプを採用”とあり、それでも事故が起きてしまったということは「検知システム」がうまく機能しなかったということになりそうです。※トヨタe-palette詳細はこちら
おそらくこの選手村は自動運転航行を前提に設計されているものと思われ、その環境下にて、しかも時速15キロ以下で運行されている状況で事故が起きてしまったというのはちょっと衝撃的(事故の際の速度は時速1〜2キロだったといい、選手は治療を受けた後、自分で歩いて戻ることができたと報じられている)。
自動運転はまだまだ発展途上の技術ではあるものの、「天下のトヨタ」ですらこのレベルにとどまっているというのは驚きでもあり、いろいろと考えさせられる事故でもありますね。