日本一売れている車の後継モデルも日本一売れるのか?
ホンダN-BOXに試乗。
N-BOXというと軽自動車で17カ月連続販売トップを記録し、しかもそれが「モデルチェンジ直前まで」続いたという驚異的な大ヒットモデル。
今回のモデルチェンジでは「キープコンセプト」というか、そのコンセプトをさらに熟成させた「正統進化」。
先行受注では現在25000台の受注を集めていますが、これはホンダにとって3世代目フィットでの記録「27000台」に次ぐ2位となっており、その注目度の高さもわかります。
見た目は今ひとつインパクトに欠けるようだが?
ホンダは「モデルチェンジが苦手」な会社で、例えばトヨタがノア/ヴォクシー、日産がセレナにおいてモデルチェンジを成功させたのとは裏腹に、ステップワゴンのモデルチェンジでは今ひとつ成功を収めることができず(というイメージをぼくは持っている)。
これは他モデルにも言えることで、ホンダは「ヒットした車種のモデルチェンジは、その前モデルを開発したチームに担当させない」のが裏目に出ている可能性も。
それはさておき今回のN-BOXのモデルチェンジですが、ぼくはイキナリ「成功」と断じて良いのでは、と思います。
ここでその理由を見てゆきましょう。
まずは内装をチェックしてみた
まずインテリア。
これは衝撃の広さで、そのルーミーさに驚いた日産デイズ・ルークスも比ではない、と思います。
画像ではその広さが伝わらないのが残念ですが、とにかく広いのなんの。
それは自動車というレベルを超えており、何か別の乗り物のよう。
なお、グラスエリアを最大化するためにピラーを細くするなどの対策が取られているようで、実際の広さ以上に「視覚的に」広く見せる努力も行なっている、とのこと。
そして触れておかねばならないのが各部に見られる「細かい配慮」。
例えば画像では左側のAピラー根元に何か鏡のようなものがついているのがわかると思いますが、これはボディ左側の死角をカバーするもので、左前輪と路面との状況を確認できるため「ホイールヒット」も防げるという優れもの。
内装はシンプルではあるものの「チープ」という印象はなく、モケット地で切り替えしを用いたオシャレなシートや、エンボスをうまく用いたパネル、アナログとデジタルとをうまく組み合わせたメーター、スマートフォンのようなエアコン操作部、そしてルーバー風デザインをうまく用いたエアコン吹き出し口などが奏功している模様。
今までに試乗した軽自動車やコンパクトカーは「いかにもコストダウン」「安く作った」という雰囲気がありましたが、新型N-BOXについてはそれがなく、コストを抑えながらも、その「抑えたコスト」をデザイン力でコスト以上にカバーしている、と考えて良いかと思います。
さらにドアは「電動開閉」を選ぶことができ、フラットフロア、(選択したモデルによる)助手席スーパースライドシート、異常に広い後部座席のレッグルームなど子育て世代には嬉しい機能満載。
おまけにシートは「アレルギー対応素材」を使用しており、小さい子供のいる家庭への配慮も光ります。
そして驚くのはバックドアを開けた時の「開口部の低さ」。
ホンダによると「自転車をそのまま乗り入れることができる」としていますが、さらには荷物を積み込む時に周囲を確認できるミラーまでもルーフに設置されており、「こんなところにまで気を使っているのか」と驚かされます。
これがその鏡。
ここまで細部に配慮した車は他にないかも。
その他バックドアにはロールサンシェイドが備わるなど(グレードによる)、この新型N-BOXの装備を体験してしまったら子育て中のママさんは他の車が目に入らなくなるんじゃないかと思われます。
他にも「ドアハンドルに触れるだけでロック解除可能な」スマートキー、輸入車でお馴染み「ワンタッチウインカー」、パック飲料が収納できるドリンクホルダー、UV99%/IRかとガラスなど「これは便利だわ」と感じる装備、さらに軽自動車では初めて装備される「ホンダセンシング(機能がありすぎて説明できないため、詳しくはホンダのサイトにて)」は非常に安心感が高いもの。
その他の機能についても、ホンダのN-BOXオフィシャルサイトが最もよく解説していると思うので、それを参照いただければと思います。
オプションだとドアの下に足を入れると自動開閉できる「ハンズフリースライドドア」、さらにはベントレー・ベンテイガばりにドアを開けるとタラップが出てくる「オートサイドステップ」など高級ミニバンやSUVに装備されるようなものまであって、完全に軽自動車という枠を超えてしまった車といえます。
さあN-BOXで走ってみよう
今回試乗車として選択したのは「G・Lホンダセンシング 2WD」。
FFそしてノンターボとなり、出力は58馬力(ターボ版は64馬力)。
数字だけを見ると「ちょっと物足りないいんじゃないか」という感じですが、実際に走り出して見ると全く不足のないレベルであることがわかります。
男性2名乗車で坂道を登るというシーンもあったものの、全く出力には不足を感じず、おそらくは「先代モデル比で80キロ軽量化」というその軽量な車体が効いているのでしょうね。
さらにはホンダ得意の「低重心」を活かした安定性もすばらしく、それはにわかに軽自動車だとは信じられないほどで、そのためコーナリングについても嫌な揺れを感じさせずにスムーズに曲がります。
ハンドリング、ブレーキングについても申し分なく(そこはホンダなので間違いはないところ)、加えて段差を乗り越えた時の衝撃吸収性能や、不整路を走った時の快適性も非常に高いレベル。
正直なところ「これが軽自動車とは信じられない」ポテンシャルの高さを持っており(ぼくはこれまでの車歴で2台の軽自動車を乗り継いでいて、他に試乗、代車などでけっこう乗っている)、フィットなどコンパクトカーの領域に達しているといって間違いなさそう(N-BOXは価格もそれなりに高くなっていて、軽自動車の常識からするとかなり高価ですが)。
新型N-BOXは試乗していて「もうちょっと走ってみたい」と感じた初めての軽自動車でもあり、「軽自動車だからといって何も我慢しなくてもいい」車。
唯一気になったのは狭い交差点などで直角に曲がったのちのステアリングホイールの「戻り」で、「思ったより戻らない」ことも。
ただしこれはN-BOX特有の現象ではなく軽自動車全般に言えることなので、ぼくの「慣れ(たぶんステアリングを切りすぎている)」、そして「軽自動車ならではのタイヤの小ささ」、そして「安全性を考慮した、大きなロックtoロック」に起因していると考えられ、ネガティブ要素とは言えない部分。
これらを総合すると「とんでもなく高い完成度を誇る軽自動車」「軽自動車だからといって何も我慢しなくていい軽自動車」「完全にコンパクトカーの領域に入った軽自動車」といえ、どう考えても「ヒット間違いなし」だと考えています。
唯一の懸念は「その価格の高さ」ですが、これは販売が伸び悩んだ際にホンダが「値引き」で解決しそうですね。