| いい腕時計はこうやって見分ける |
さて、今日は「いい腕時計」の見分け方を紹介。
よく「腕時計のどこを見ればいいのか」と聞かれることがあり、あくまでも経験上もしくは私見ではありますが、ぼくが腕時計を見分ける時にこういったところを注意して見ている、という部分を紹介してみようと思います。
ケースのエッジ
単純ではあるものの、まずケースのエッジがピンと立っているかどうか。
カットや平面の磨きがうまくできていないとエッジが「曖昧」になるということですが、ここは加工精度が明確に出るところ。
ぼくの知る範囲では、これに優れるのはロレックス、そしてオーデマピゲ。
逆に、価格の割に「イマイチ」なのはウブロ、ルイ・ヴィトンです。
ウブロは平面のカットや磨き自体がイマイチで、そのためにエッジも甘くならざるを得ないようですね。
ルイ・ヴィトンは「面」は比較的綺麗に出せるものの、「エッジ」についてはちょっと苦手なようです。
エッジについては「カットした」というよりも、いましがた「金型から取り出してきた」かのような甘さを感じる部分も(もうちょっとスパっと磨いてほしい)。
↓ただし側面の磨きは比類ない。まさに鏡のように歪みなく像が映る
ただ、これ(エッジが立っているかどうか)は見慣れていたり、比べてみないと判断できないところでもあるものの、まずはロレックスのスポーツモデル(ラグジュアリー系はデザイン上、ケースサイドが湾曲していてエッジがわかりづらい)を見てみると「エッジ」の概念が理解しやすいかもしれません。
なお、腕時計メーカーによっては、この「エッジ」の甘さを知られたくないがためか、あえてエッジを見せないデザインを採用する場合もあるようです。
IWC、ブライトリングはこういった「エッジ」が苦手なのかどうかはわからないものの、デザインにはあまりエッジを取り込んでいないようにも見えますね。
ただ、IWCの場合は、ベゼルやケースサイドにはあまり鋭い角度でエッジを設けておらず、これはシャツの袖に引っかからないようにしたり、どこかにぶつけてベゼルにみっともなく打痕が残らないように配慮したものだと(全体のデザインから)判断でき、意図的に「90度」以上の角度を採用しているのかもしれません。
デザイン上の理由で全くエッジを排除しているのはフランク・ミュラーですが、エッジがあればいい、なければそうでないということではなく、エッジを持つ腕時計の場合はその鋭さを見るといい、ということです。
そしてもうひとつエッジに関していうと、エッジを均等は幅で「磨いて」いるメーカーはかなりの技術を持っている、と言えます。
これもやはりロレックス、オーデマピゲが優れるところ。
↓ロレックスはバックルのエッジもしっかり出ている
なおブルガリ「オクト」はエッジが一つのデザイン的特徴ですが、エッジは綺麗に出ていても、そのエッジが美しく磨かれておらず、ここは「もう一息」だと考えています。
逆にこの”エッジ”はどこかに腕時計をぶつけてしまうと、その打痕が目立つことになり(そしてこれを除去するのは困難)、その意味ではあまりエッジがない腕時計の方が「長く使うことを考えると」いいだろうと思うこともあります。
ケースの「磨き(歪み)」
これもぼくの知る限りですが、もっとも優れるのはロレックスとオーデマピゲ、そしてパテックフィリップ。
たとえばロレックスのスポーツモデルのサイドはこんな感じで「平面(デイトナ、ヨットマスターは曲面)」ですが、これは何かを映してみるとその「平面度合い」がよくわかります。
↓ロレックスは側面に映った文字も読み取れる
こういった「平面」を持つ腕時計は数多く、しかし何かを反射させてみると「像が歪まないほどにきれいに映る」面を持つ腕時計は非常に少なく、たとえばポリッシュがかけられた面に、新聞や雑誌など印刷された文字を映してみると、すぐにケースの面が歪んでいるかどうかがわかります(ロレックスほど広い面を均一に磨けるメーカーはほかに無いと思う)。
ケースの磨きは腕時計における「基本」だともいえ、ここがしっかりできているメーカーは「中身の精度もまず間違い無い」といって良さそう。
フランク・ミュラーも美しい磨きで知られ、腕時計のケースに何かを映しこんでも「歪み」なくきっちりと像が見えます。
なお、平面が磨けないと「曲面」もちゃんと磨けないと考えていて、その意味でもフランク・ミュラーはけっこうスゴいんじゃないかと思うことも。
ちなみにセイコー・アストロンは磨きに関しては相当にイマイチ。
他の部分も著名ブランドに比較して優れるとは言えず、「機能特化型」の腕時計だと言えそう。
↓わかりにくいが、アストロンは結構面が歪んでいる
これは「欧州車」と「日本車」との差異にもあてはめることができ、欧州車は機能と同時にクラフトマンシップも追求するものの、日本車は機能重視で、そしてクラフトマンシップよりも生産性を重視するために「味」が損なわれている、とも言い換えることができるかもしれません。
文字盤と針とのクリアランス
よく「薄い腕時計は高い技術力の証」と言われますが、これはまず間違い無い、と考えています。
性能の良いクルマを小さく作るのが非常に困難であるのと同様、高性能な機械式(とくに自動巻)腕時計を薄く作るのは非常に難しく、これができるのはやはり「いいメーカー」。
とくに機械式腕時計は回転するパーツの集まりで、そして回転するパーツを薄く作るには、パーツや取り付け部に「歪み」があると不可能。
歪みがあるとパーツ同士が干渉してしまう(そうなるとちゃんと動作せず、故障や狂いの原因になる)ためですが、その意味において「薄い腕時計」はパーツの精度が高く、同時に組み立て精度も高い、と言えます。
薄い腕時計というとブルガリ「オクト・フィニッシモ」が有名ですが、見た目でクリアランスの小ささがわかるのはパテックフィリップ。
これはもう、「文字盤に針の絵を直接描いてるんじゃないか」と思えるほど文字盤と針とのクリアランスが小さく(針が文字盤に張り付いているように見える)、驚かされるところでもありますね。
こういった「いい腕時計の見分け方」については相当な点数があり、追って「続編」を公開したいと思います。