セイコー アストロン ジウジアーロ・デザイン 2017限定モデル(Seiko Astron 2017 Limited Edition Designed by GIUGIARO DESIGN / SBXB121)を購入。
2015年にも発売されたジウジアーロとアストロンとのコラボモデル第二弾となりますが、今年のモデルは昨年のモデルに比べて大きくデザインが変更に。
2017年モデルのデザインについては、1980年代にジウジアーロがセイコーとのコラボレーションによって発表した腕時計シリーズと同じ「ケースとベルトとをオフセットさせた」デザインを今回「アストロン」で再現した、ということになります。
なお当時の「セイコー×ジウジアーロ」腕時計シリーズはこんな感じ。
ケースが右側にオフセットしてあるのは「レーシングスーツの袖口に当たらないよう」「運転中にプッシュボタンの操作をしやすいよう」と言われています(今回のアストロン×ジウジアーロについては「ドライビング中の操作性向上」とある)。※文字盤が斜めになっているのはバイクに乗っていても時間を読み取りやすいよう
2016年モデルのアストロン×ジウジアーロはこんな感じ。
通常のアストロンとケース形状は同一で、ダイアルやベルト、ケースバックを変更、というのが主な変更内容となっています。
ダイアルの文字盤はイタリック書体の数字となっていますが、これは立体で再現するにはコストが追いつかなかったのか「印刷」を採用(多分アストロン唯一の”数字”インデックス)。
2017年はこちら。
ケース、ベルト共に今回のコラボモデル専用であり、相当に通常モデルからの変更が大きくなっていますね。
なお、ケースとベルトはチタンですが、2015年モデルのようにベルトにセラミックが採用されておらず、また「(レザー製の)替えベルト」が付属しないためか、2015年モデルと希望小売価格は同じ設定。
限定数量は2015年モデルが5000本、2017年モデルは3000本。
デザインの他にもう一つ変更があり、それは「デザインした人」。
おそらく2015年モデルについてはジョルジエット・ジウジアーロ本人がそのデザインに関わっていると思われますが、2017年モデルについては関連性はない、と考えられます。
ジウジアーロ氏が立ち上げた「イタルデザイン」は2010年にフォルクスワーゲン・アウディグループに吸収されていますが、その後イタルデザインの株式はVWアウディグループ傘下のランボルギーニが保有することに。
その後もジウジアーロ氏はイタルデザインの株式を一部保有し続けており、実際に業務にも従事。
「イタルデザイン」では自動車関連、「ジウジアーロ・デザイン」としては自動車以外の工業製品をリリースすることになりますが、その一環として2015年モデルの腕時計「アストロン×ジウジアーロ」をリリースしており、当時のセイコーの製品サイトでは(現在は消えている)ジョルジエット・ジウジアーロ氏自らがデザインについてコメントしていますね(ジウジアーロ氏個人を中心にしたページ構成だった)。
しかしながら2015年7月にジウジアーロ氏は保有していたイタルデザインの株式全てを売却し、イタルデザインとは完全に決別。
今回のモデルはジウジアーロ氏が退任後のモデルとなるので「ジウジアーロ氏がデザインに関与」できないことになるわけですね(ジウジアーロ・デザインはジウジアーロ氏の名前を冠しているものの、すでにジウジアーロ氏とは関係がない)。
ジウジアーロが退任。保有株式も売却しイタルデザインは100%アウディに
確かに2017年モデルのアストロン×ジウジアーロにおいて、その製品ページではジウジアーロ氏個人ではなく「ジウジアーロ・デザイン」というプロジェクトを押し出しており、ジウジアーロ氏個人色がなくなることに。
加えて「イタルデザイン」のロゴ(IDGと記載してあるもの)が今回のモデルから付与されていることを考えても、「新体制となった(ジウジアーロ氏抜きの)イタルデザインによってデザインされた」のが今回のアストロン、だと考えられます。
ただ、ジウジアーロ氏本人よりもイタルデザインのメンバーの方が「ジウジアーロ氏が行ったデザイン」を意識した(オフセットデザイン)ことは非常に興味深い事実であり、ここにもジウジアーロ氏の与えた影響、そして偉大なる功績を見ることができそうですね。
なお現在イタルデザインは上述の通りランボルギーニの所有となっており、その意味においてもぼくにとって「これは購入しておかねばならない」腕時計。
ただ「ウラカンとの共通点」という意味において、2015年モデルのアストロン×ジウジアーロのケースバックに採用される「ホイール状のデザイン」の方がウラカンに装着されるホイールの形状に近くなっています(オプションの鍛造ホイール、”ミマス”に似ている)。
ちなみにジウジアーロ氏のデザインした車としては、VWゴルフ、ロータス・エスプリ、ランチア・デルタ、いすゞ・ピアッツァ/ジェミニ、デロリアン、トヨタ・アリスト、ダイハツ・ムーヴ、マセラティ3200GT、スズキSX4などがありますね。
さて、前置きが長くなりましたが「セイコー アストロン ジウジアーロ・デザイン 2017限定モデル」。
駆動方式は「ソーラーGPS衛生電波修正」、つまり電源不要のソーラー式。
電波時計なので時刻を正確に自動修正できるものの、電波を受信できる時間帯が限られるために「移動が多い」人だとそのメリットを享受できない可能性があり、それをカバーするために「GPS」という要素を導入し、位置情報と時刻情報を取得し反映する仕様となっています。
ケースとベルトはチタン(着色方法は”ダイヤコーティング”)、ベゼルはセラミック。
サファイアガラス採用に10気圧防水となっており、実用上の頑丈さは十分以上。
ケースとベルトは「面」によってフィニッシュが異なり、ヘアライン仕上げと光沢仕上げとを使い分けており、「ブラック単色」ながらも高級感が。
なおセイコーによるとケースには「ザラツ研磨」を施し、歪みのない曲面を実現、とありますがやはりロレックスやオーデマピゲの「磨き」には随分劣るように思われ、それなりに「歪み」は見られます。
風防は無反射コーティングガラス。
これはかなり優秀で、「ガラスなど無いかのように」文字盤がくっきり確認可能。
インデックスは先代の「文字」から「バー」に。
立体的な構造を持ち、比較的高級感があるように感じるものの、白い部分は「樹脂っぽさ」が目立つかもしれません(スポーツウォッチということを考えると問題はない)。
秀逸なのは「針」で、これは六角形をモチーフとした時針と分針を持っており、先代に比べて「ジウジアーロっぽく」なったところですね。
リューズにはルビーのようなものが埋め込まれています。
リューズには滑り止めの凹凸がありますが、これは成型が甘く、ルビーノような物体も「平坦」なので、宝石のようなカットがあるか、もしくはカルティエ(パシャ)のように卵型であればよかったのかもしれません。
ケースバックは先代同様に「ホイール」をイメージしたもの。
気になる部分はベルトのバックルとブレスレット。
30万円オーバーの腕時計としては非常に安っぽく(加工精度や操作感は優れている)、デザインとしてもこれは如何なものか、と思います。
こういった部分についてはたとえセイコーであっても「ヨーロッパのメゾン」には圧倒的にかなわない部分と言えますね。
加えてベルトのコマとコマとの間はちょっと隙間が大きく、買った時点から結構遊びがあり、それらが動いてちょっと嫌な音が出ることも。
さらにはコマを連結するピンもかなり細く安っぽいもので、ホームセンターなどで売られている安価な腕時計と大差がないものです(よって使用しているうちにさらにコマとコマとの隙間が拡がると思われる)。
ざっと見てみると「気になる部分」が多く感じられますが、それはロレックスやオーデマピゲ、カルティエといった製品と比較しているためで、全体的な雰囲気としては気に入っており、パっと見た感じではオーデマ・ピゲ・ロイヤルオーク・オフショアクロノよりも高級に見える、という意見も。
加えて上述のように「GPS+ソーラー」という絶対的な安心感があり、総合的に考えて「購入してよかった」と思える満足度の高い製品。
こちらはオーデマピピゲ・ロイヤルオーク・オフショア・クロノグラフとの対比。
価格差は10倍といったところですが、お金がかかっている部分が異なるので、外観では単純な比較はできないところ。
こちらはカシオG-SHOCKと。
G-SHOCKは電波ソーラー採用モデルとなりますが、アストロンと性格が近い、と言えそうです(やはり価格には10倍ほどの開きがある)。
なお、「パっと見るとよく見えるが、細部のツメが甘い」「信頼性は高いがステータス性に欠ける」といたっところは日本車と共通する部分もあり、やはり腕時計と自動車、というのはなんらかの似通った部分があるのでしょうね。