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「グッチが衝撃的に売れなくなり、時価総額が一瞬にして1.3兆円も減少」。いったいなぜグッチが売れなくなったのか、ボクはグッチ自らが暗黒時代を招いたと考える

「グッチが衝撃的に売れなくなり、時価総額が一瞬にして1.3兆円も減少」。いったいなぜグッチが売れなくなったのか、その栄枯盛衰を考える

| 早い話が「近年のグッチはその派手さでニューリッチやインフルエンサーに支持されたが、もうイケてるブランドではなくなった」 |

さらにはその成功を上書きできるだけの製品をリリースできず、「その他大勢」のブランドになってしまった

さて、ここ最近報じられるのが「欧州の高級ブランドの失速」。

とくにグッチの失速が顕著だとされていますが、これを受けてグッチを擁するケリングの株価が大きく下がり、72億ユーロ(現在の為替レートだと約1兆3500億円)分が一瞬にして消し飛んだと報じられています。

なお、グッチの不調について、その大きな理由は「主要市場であった中国の景気が低迷しているから」だと伝えられていて、しかしぼくは「グッチ失速の理由はそれだけではない」とも考えているわけですね。

なぜグッチは失速したのか

たしかに中国市場の景気はいま”下り坂”にあるかもしれませんが(中国の発表する指標の透明性が低く正確な判断ができない)、おそらくグッチはそれ以上の速度で販売を失っているのだと捉えていて、ぼくが考えるその理由は「もうグッチを買う理由を見いだせないから」。

そもそも近年のグッチの成長の理由は(2015年にクリエイティブディレクターに就任した)アレッサンドロ・ミケーレによる過激なデザインにあったと考えているわけですが、「デカいロゴ」「奇抜なコラボ」などを採用し、500メートル先からでも「それがグッチであることがわかる」デザインを採用したため、それが当時急激にお金持ちになりはじめた中国市場にとって絶妙にマッチしたのだと思われます。

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つまり、自分がお金を持っていることを誇示したいという人々に歓迎され、かつSNS映えするということもあって急速に人気が拡大したのが当時のグッチだと認識しているわけですね(たしかについ最近までの中国では、猫も杓子もグッチの製品ばかりを身につける傾向が目立ち、とくにスニーカーはとんでもなく多く見られた)。

そして「猫も杓子もグッチ、そしてSNS上ではグッチばかり」となってしまうことにより、当の中国人の間でも「グッチを身につけるのは承認欲求の強い、自己主張の塊のような人ばかりである」「そういった人々は、お金はあるが心が貧しい人である」という理解が進むことになってしまい、そして一部の人は「そう判断されることを嫌い」グッチから離れ、またある一部の”承認欲求を捨てきれない”人々はグッチという”ありふれた”ブランドから離れ、より目立つ方向へとシフトしたのだとも考えられます(それが近年よく報じられる”丸見え””スケスケ”ファッションなのかもしれない)。

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今のグッチには「買う理由が見当たらない」

加えて、グッチのデザイナーが(2022年11月に退任した)アレッサンドロ・ミケーレから(2023年に)サバト・デ・サルノへとチェンジしたことも大きく影響していて、もちろんサバト・デ・サルノはデザイナーが変わったということ、そして自身の存在感をアピールするためにそれまでのグッチ色を一掃することになりますが、同氏はヴァレンティノやプラダにて実績を積んだ人物であり、この人物をセレクトしたということは、グッチ(ケリング)自身も「行き過ぎ感が強く、一部で批判され、旧来の上質な顧客を失う原因になった」アレッサンドロ・ミケーレのイメージを一新したかったのだと思われます。

そして現在のグッチが展開するのは「比較的シックなデザインを持ち、色使いもシンプル、ロゴも最小限(使用されていても悪目立ちしない)」といった路線であり、過去のデザインをリバイバルするなどして以前の顧客を呼び戻そうとしているように見えるものの、やはり「SNS映え」を狙ったブランドに(一時的に)成り下がってしまったグッチに戻ろうという(品の良いかつての)顧客は実際にはほとんどおらず、しかし新しい顧客も呼び込めず、しかもアレッサンドロ・ミケーレ時代からグッチに入ってきた顧客に対する決定力も欠けているというのが現在の状況なのかもしれません。

つまり現在のグッチは過去の成功を上書きするだけの魅力的な製品を発売できておらず、よって販売低迷は「中国経済」という外部的要因ではなく、グッチの内部的要因だとぼくは考えているわけですね。

要約すると(ぼくの考える)グッチ凋落の原因は以下のとおりですが、ぼく自身としてはグッチが以前から持っている「品質」「歴史」については非常に高く評価していて、それだけにアレッサンドロ・ミケーレ時代は「一種の悪夢のよう(クルマに例えるならば、デ・トマソ時代のマセラティのようである)」だとも考えています。

グッチはなぜ売上を失い、落ちぶれたのか

  • 大きなロゴ、話題性のあるコラボ、SNS映えを狙ったシルエットや色使いによってニューリッチ、若年層の取り込みに成功し、急激に拡大
  • そのデザインや客層の変化が従来の顧客に敬遠され、客離れを引き起こすことに
  • SNS上にグッチが氾濫することで、もはやグッチが「イケてるブランド」ではなくなった
  • デザイナーの交代によって地味なデザインになり、「派手なグッチ」から入ってきたファンにとっては物足りない、買う理由がないブランドになった
  • グッチの持つヘリテージを活用したデザインを取り入れるものの、過去のヒットにすがっているために全般的な印象が「古臭く地味」であり、グッチの製品を購入する理由に乏しい
  • 他のブランドにはない魅力、「新しいグッチ」を提供できていない
  • 一方でいったん離れてしまった従来の顧客はグッチに見切りをつけており、なかなか戻ってこない

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参照:Bloomberg, Gucci(X)

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