| LVMHは多くのブランドを再生させてきたが、それは「宣伝広告費をかけたから」ではない |
そのブランドの持つ資産を正しく理解し、正しく活用したからである
さて、前回は2016年にリモワがルイ・ヴィトン(LVMH)に入る前のスーツケース、そして加入した後のスーツケースの外観的差異についてお伝えしましたが、今回は「その内装の差異」、そして「変わっていないところ」について触れてみたいと思います。
なお、外観については主に美観の向上を目的とした変更がなされているように思え、一方で内装の変更、逆に変わっていない部分を見るに、いかにもともとのリモワが優れた製品であったのか、そしてLVMHがいかにそれを理解し尊重しているか(そして変えるべき部分のみを変え、変える必要がない部分を残しているか)といった部分が見えてきます。
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新旧リモワの内装はこう変わった
そこでまずは旧トパーズ、新オリジナル チェックインの内装を比較してみると、旧バージョンのブランド表示タグはこう。
こちらは新バージョン。
裏地は旧バージョンだと「RIMOWA」文字。
新バージョンでは(新しい)ロゴマークへ。
バインダーを固定するベルクロテープの先端はこういった感じで「レザーっぽい素材を縫い合わせたもの」で・・・。
新バージョンでは「RIMOWA」文字がエンボス加工される(柔らかい)樹脂パーツへ。
ちなみに前バージョンだと裏面は攻撃性のある突起が並びますが・・・。
新バージョンではちょっと丸めの突起へと変更されています。
これはおそらく、旧バージョンだと「ニットなどに引っかかると、繊維がほつれてしまうから」なのでしょうね(ただし固定力は旧バージョンのほうが高い)。
細かいところですが、ジッパーにも変更があり・・・。
新モデルではジップタブの形状がシンプルになり、凹凸も減っていて、この「シンプルで滑らか」というのは新リモワに共通する要素だと思います。
逆に「新旧リモワ」ではこんなところが変わっていない
なお、新旧リモワでは「パーツ接合部の精度やパーツそのものの加工品質が大幅に向上した」とお伝えしましたが、旧モデルではリブの段差がちょっと曖昧、そしてパネル間の隙間が不均一ではあるものの・・・。
ニューバージョンではリブが明確で均一になり、隙間が最小化されています。
一方でパーツを固定する「リベット」は見たところ変化がなく、これはLVMH側としても「このリベットはリモワの視覚的特徴であり変更すべきではない」と考えたのかもしれません。
そして「ガワ」上下をつなぐ蝶番の形状や構造にも変更はない模様(ただし表面上の刻印につき、内装同様に「RIMOWA」から「Mマーク」へと変更されている)。
こちらはニューバージョンのヒンジ。
トップ部分のハンドルそのものについても変更はなく、こちらはトパーズのハンドルで・・・。
クラシック・チェックインでも同様のハンドルが継承されています。
ロック部分とその周辺も同様で・・・。
新旧リモワでも変更なし。
そしてこの「噛み合わせ部分」も大きな変化がないところで・・・。
その構造・形状ともに同様です。
ちなみにこのかみ合わせ部は非常によくできており、「裾広がり」となることにより、上下がずれることなく接合できるようになっているわけですね。
そしてかみ合わせ部分にはラバー製パッキンが用いられることで気密性が高まっています。
そしてこの構造は新モデルにも引き継がれているのですが、こういった「変わっていない」ハンドルやヒンジ、かみ合わせ部、ロックといった部分を見るに、これらはいずれも「スーツケースとしての基本的な部分」。
つまり機能的な部分はすでに前世代であっても確立されており、新世代のリモワであっても「変える必要がないレベルである」ということに。
一方で変更したのは現代の製品そしてハイブランドに要求されるクリーンでミニマルなデザインや細部の仕上げだと考えてよく、つまりLVMHはリモワを傘下に置きつつも「変えなくていいぶぶんはそのままに、変えるべき部分のみを変えた」ということに。
現在のところ、LVMHグループに買収されたブランドは「ほぼ例外なく」華麗なる復活を遂げていますが、それはLVMHそのものが各ブランドの強みと弱みをよく理解していて、ブランドとしての強い部分を残しつつ、強化すべき部分をしっかり強化しているからなのかもしれませんね(なんでもかんでも変えることがリブランディングではない)。
そしてLVMHはリモワの真の価値を理解していたからこそリモワをグループへと招き入れ、最適な手法をもって、より良いブランドへと成長させることができたのだと思われます。
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