| ここからの日産は明確な方向性をもって大きくシフトしてゆくことになりそうだ |
意外と具体的な計画が示され、日産は地に足がついた経営を行ってゆくもよう
さて、日産が「環境問題や社会課題、そして変化するお客さまのニーズに対応し、よりクリーンで安全、インクルーシブな誰もが共生できる社会の実現と、真に持続可能な企業となることを目指す長期ビジョン」としてNissann Ambition(ニッサン・アンビション)2030を公開。
かんたんに言うと「2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種のワクワクする新型電動車を投入する」というもので、そのために今後5年間で2兆円を投資し電動化を加速させ、そのうえでグローバルにおけるエレクトリック比率を50%以上に拡大し、全固体電池を2028年度に実用化する」とういうもの。
日産は過去に「90年代に技術で世界一になる」という901運動を行っていましたが、今回は久々に大きな目標を掲げてきたな、という感じですね。
日産はあくまでも電動「車」が中心
なお、現在は自動車メーカー各社とも未来に向けて様々な計画を発表していますが、トヨタは「輸送機器を製造する会社として、モビリティと社会、人との関わり」という大きな視点での計画を打ち出したのに対し、日産ではあくまでも「電動車」というクルマ単位での計画を示したのが印象的。
このあたりは大風呂敷を広げずに「できることから着実に」やろうという地に足がついた印象、そして既存技術をベースにした現実的な計画であるという印象を受け、なかなかに好ましい、と考えています。
日産は今回の「2030年までの計画」とは別に「2050年にカーボンニュートラル」を目指していて、今回の「日産アンビション2030」はそのひとつだとも紹介され、日産の社長兼最高経営責任者、内田誠氏が語った内容は下記の通り。
社会のニーズや期待に応えるために、企業が果たすべき役割と責任は、ますます大きなものになっています。こうした大きな変化に対応するため、『Nissan Ambition 2030』では電動化の時代に向け、先進技術でカーボンフットプリントを抑制し、新たなビジネスチャンスを追求していきます。そして、お客さまや社会から真に必要とされる持続可能な企業へと日産を変革していきます。
地域によって電動化戦略は異なる
上述のとおり、今後10年で「15車種のEVを含む23車種の電動車を導入」することになりますが、2026年度までの目標として、まずはEVとe-POWER搭載車を合わせて20車種を導入するといい、つまり23車種のうちの20車種までは2026年中に発売されるということになりそうです。
そしてこの電動化戦略は地域によって異なり、2026年度中の目標だと、欧州では75%以上、日本では55%、中国では40%、米国では(これだけ2030年度中に)40%という数値となっていて、中国そしてアメリカの数字が「やや低め」。
日産は3つのコンセプトカーを発表
そして今回、日産は新しくコンセプトカーを公開しており、これらは具体的な市販車を示唆するものではなく、「日産が将来提供する先進的なクルマの幅広いラインナップやエコシステムの可能性を示す」にとどまるもよう。
まずこちらは「日産チルアウト(CHILL-OUT)」。
先進安全技術とワクワクするドライビング、快適な室内空間を実現しているといい、アリアと同じCMF-EVプラットフォームを採用している、と紹介されています。
こちらは「日産マックスアウト(MAX OUT)」。
走りの楽しさを拡張するオープンカーだと紹介されており、「自分の手足の延長のように」自由にコントロールできる、常識を超えたドライビングプレジャーを持つ一台です。
こちらについてはプラットフォーム等の紹介はなく、具体的に「同様の」クルマが登場することはないものと思われ、この考え方が次期GT-Rや、さらに先の世代のフェアレディZなどに(部分的にでも)継承されてゆくのだと思われます。
ついで日産ハングアウト(HANG OUT)」。
リビングのような快適空間を持ち、自宅やオフィス以外の、いわゆる「サードプレイス」としての役割が与えられているのだと思われます。
最後は日産サーフアウト(SURF OUT)。
これは舗装路以外にも行動半径を広げ、かつEVならではのフラットな基本構造(スケートボード型シャシー)を活かして積載性を高めたピックアップトラック。
車体からの電力供給によってアウトドアアクティビティの拡張も考慮されているようですね。
いずれのコンセプトカーも特徴があって、かつ実際の人々のライフスタイルにマッチしたものであり、これらを見るとチルアウトは先進テクノロジー、マックスアウトはスポーツ性能、ハングアウトはファミリーでの移動手段、サーフアウトはアウトドア派に、といった方向性が与えられているように思います。
ちなみにどのコンセプトもヘッドライトやテールランプにはある程度の共通性が見られ、新型フェアレディZ新型にて採用される「インフィニティミラーっぽい」発光グラフィックが(今後の日産のEVに)採用されるのかもしれません。
日産は更に電動化技術に磨きをかける
そして日産は電動化技術をさらに進化させるとの述べており、リチウムイオン電池においてはコバルトフリー化にて2028年度までに1kWhあたりのコストを65%削減すること、2028年度には全固体電池(ASSB)を投入し、このコストについては2028年度には1kWhあたり75ドル、その後は65ドルまで引き下げる(この段階でガソリン車と同等の価格となる試算なのだそう)ことを目指すとしています。
加えてバッテリー生産能力についても向上を図り、2026年度までには52GWh、2030年度には130GWhにまで引き上げる、とのこと。
そして日産は「エコシステム」についても注力し、日産独自のカーボンフリーEV生産ハブ「WV36Zero」の展開と拡大、そしてすでに実施しているバッテリーの二次利用施設の確立を行う、と述べています。
NISSAN Ambition 2030発表会見動画はこちら
参照:NISSAN