| ただしそれも「既存ラインアップを入れ替え終わるまで」のことだと思われる |
現在、アストンマーティンはそのラインアップを刷新することが最大の課題である
さて、先日はニューモデル「DB12」を発表し、その後も絶えず変革を続けているアストンマーティン。
今回は「ボルボ、ロータス、ポールスター、スマートなど、吉利汽車傘下のブランドからのパーツ供給を増加させる」との報道が出ています。
なお、アストンマーティンは2020年1月に(財政難のため)中国の吉利汽車へと身売りすべく交渉をはじめたと報じられ、しかしその直後には現アストンマーティンCEO、ローレンス・ストロール氏による買収が発表されることに。
しかしその後、アストンマーティンは吉利汽車との関連性を強める
ただしその後、吉利汽車(Geely)はアストンマーティンの買収を諦めることができなかったのか、アストンマーティンの株式を買い進むことで「4番目の大株主」に浮上しています。
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中国の吉利がアストンマーティンの株式を9.7%し4番目の株主に!おそらくこのまま株式を買い進めて経営権を取得するんじゃないかと予想
| ボクはむしろ、吉利汽車がアストンマーティンを買収したほうがいいんじゃないかと考えている | 現在吉利汽車はボルボ、ロータス、ポールスター、Lynk&Co、Zeekr、LEVCを所有 さて、 ...
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さらには敵対的買収も報じられ・・・。
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アストンマーティンが黒い陰謀に包まれる・・・。中国・吉利汽車が敵対的買収を仕掛ける可能性が生じ、現経営陣が対抗のために自社株を購入するという攻防戦に
| ただ、ボクはアストンマーティンは吉利汽車が買収したほうが長期的に見ていいんじゃないかと考えている | そして吉利汽車が本気になったならば、なんとしてでもアストンマーティンを手に入れるだろう さて、 ...
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結果的にはアストンマーティン合意の上で株式の譲渡、その対価としての資金注入が行われることになり、これによって吉利汽車は現在アストンマーティンの3番めの大株主となっているわけですね。
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中国・吉利汽車がアストンマーティンの株式を394億円分買い集め「3番めの大株主」に!メルセデスも対抗し持ち株比率を増やす計画が報じられる
| おそらく、吉利汽車は隠れて株式を買い集めることになるものと推測 | ただし、ボクはアストンマーティンが吉利汽車傘下となるのも悪くないと考えている さて、中国の自動車メーカー、吉利汽車(Geely) ...
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なお、この吉利汽車の創業者である季書福氏は現在メルセデス・ベンツの筆頭株主であり、同社からスマートの株式の50%を買い取ることでスマートの経営権を獲得しています。
それまでにもボルボとポールスター、ロータスを手中に収めるなど買収に次ぐ買収を繰り返してきたという歴史があるのですが、基本的に吉利汽車は「カネは出すが口を出さない」という理想的なパトロンであり、そのためにボルボ/ポールスター、ロータスについても、豊富な資金を背景として今まで以上の大きな飛躍が可能となったのは特筆すべき点(ただしスマートは中国市場向けに大きく舵を切った)。
そして今回、吉利汽車はアストンマーティンの株式取得によって同社との関係性を強め、もとから関係の深かったメルセデス・ベンツとともにパートナーとしての性格を強めることになり(もともとアストンマーティンとメルセデスAMGとも協力関係にあった)、これによって「メルセデス・ベンツ、吉利汽車、ボルボ / ポールスター、ロータス、スマート」という協調関係ができあがったというのが現在までの流れです。
なぜアストンマーティンは吉利汽車からのパーツ供給を?
そして気になるのが「なぜアストンマーティンは吉利汽車からのパーツ供給を受けるのか」ということ。
アストンマーティンはそのコアバリューのひとつを「超高級」に定めており、そこから考えると「中国生産となるボルボ、ポールスター、ロータス、スマート」からのパーツ供給を受けることはむしろその価値を損なうようにも。
ただ、アストンマーティンは年間販売台数が6,400台程度の(まだ)小さな自動車メーカーであり、その規模の自動車メーカーが自社でパーツを開発するのは多大なるコストそして時間を要します。
しかしアストンマーティンは新体制のもとでどんどん新しいクルマを発表する必要があり、そのためには開発速度を引き上げなくてはならず、よって「自社で開発する部分とそうでない(他社から供給を受ける)部分」とを分けることで開発のスピードアップとコスト削減を図っているわけですね。
そのためにアストンマーティンはメルセデスAMGとの契約を延長し、AMG製ツインターボV8エンジンだけでなく、トランスミッションやエレクトリックアーキテクチャー、さらにドライブトレインに関連するコンポーネント / パーツも利用できるようにしているわけですが、さらには今週初めに報道されたように、エレクトリックパワートレインとバッテリーに関してはルシードからの供給を受けるという契約も締結済み。
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アストンマーティンが「まさかの」米ルシードとの提携を発表。ルシードの技術を使用しエレクトリック「ハイパーカー、スポーツカー、GT、SUV」を開発
| アストンマーティンは内燃機関に固執するかのように見えたが、2030年までにはピュアEV中心のラインアップへ移行するようだ | それにしてもまさかルシードと提携するとは予想だにしなかった さて、アス ...
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そういった流れから、今回の「ボルボ、ロータス、ポールスターなどのブランドを所有する吉利汽車からシートやエアコン関連(暖房、換気、空調)部品を調達し、さらにスマートのパーツを使用する」という方針へとつながるわけですが、アストンマーティンにて開発部門を指揮するロベルト・フェデリ氏によれば「吉利汽車の幅広いパーツリストから入手できるものすべて」を調達しようと考えているそうで、さらにアストンマーティンCEO、アメデオ・フェリーサ氏は「吉利汽車への依存度を高めることで、現在約300社あるサプライヤーリストを30%削減することができる」とも。
ただ、ルシードとの契約発表時のコメントにあったように、当初は(おそらく開発速度向上を目的として)既存のコンポーネントの提供を受けるものの、ゆくゆくはコンポーネントやパーツの供給ではなく、技術提供を受けることで独自のパーツやコンポーネントを設計し作ってゆくことになるものと思われ、吉利汽車からパーツの供給を受けるのも「ひとまずラインアップを入れ替えるまで」なのかもしれません。
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参照:Autocar