| この成長率鈍化に大きく影響しているのはテスラ、一方で9ブランドが販売を大きく伸ばす |
EV市場の成長率が大きく下がり、頭打ち感が鮮明になっていることは否定できない
さて、現在世界各地で「EV販売の伸びが鈍化している」と報じられていますが、テスラのお膝元であるアメリカでもその傾向が鮮明となり、2024年第1四半期のEV販売につき前年比2.6%の成長を記録したものの、これは2023年第1四半期の「前年比46.4%」、その前の2022年第1四半期の「前年比81.2%」に比較するとじつに大きな落ち込みです。※さらに、2023年第4四半期に比較しても15.2%減少しているので、トレンドとして伸び率が鈍化していることが鮮明になっている
参考までにテスラのシェアは51.3%と相変わらず強く、これは「なんだかんだ言いながらテスラはそれほど大きく落としていない」ことがわかり、しかし一方では9ブランドがその販売を大きく伸ばすなど、ブランドによってかなり状況が異なるもよう。※BMW、キャデラック、フォード、ヒョンデ、起亜自動車、レクサス、メルセデス・ベンツ、リビアン、ビンファストの9社が50%以上販売を増加させている
ここでその内容を見てみましょう。
2024年第1四半期におけるアメリカのEV販売状況はこうなっている
アメリカでの2024年第1四半期では26万8909台のEVが販売されていますが、これは「前年同期比で伸びてはいるものの、その伸び率が大幅鈍化」。
そして成長率が低くなってきているところを見ると、EV市場の成長そのものが頭打ちになる可能性が考えられ、そしてこの成長率が低迷している原因は「テスラ」です。
たしかにテスラの2024年第1四半期の成長率はマイナス13%を記録しており、これはフォルクスワーゲンの-36.8%やシボレーの-55.8%に比較すると下げ幅が小さく、しかし販売台数自体が多いので全体の成長率をスポイルしてしまっているわけですね。
この結果について、「テスラはけっこう頑張っているほうである」とも「やはりテスラは終わり」だとも解釈することができますが、多くの自動車メーカーがEVよりもPHEVやハイブリッドに注力すると宣言し、発売済みのEVの生産を縮小するメーカーも出てきているところを見るに、このままEV市場は縮小に向かうのかもしれませんし、その中で「ラインアップがEVのみ」のテスラのシェアが相対的に上昇するのかもしれません。
ブランド | 2024年第1四半期 | 2023年第1四半期 | 増減率 | 市場シェア |
テスラ | 140,187 | 161,630 | -13.3% | 51.30% |
フォード | 20,223 | 10,866 | 86.1% | 7.40% |
リビアン | 13,588 | 8,558 | 58.8% | 5.00% |
ヒョンデ | 12,290 | 7,824 | 57.1% | 4.50% |
メルセデス・ベンツ | 12,250 | 7,341 | 66.9% | 4.50% |
BMW | 10,713 | 6,588 | 62.6% | 3.90% |
キア | 9,654 | 5,930 | 62.8% | 3.50% |
シボレー | 8,701 | 19,700 | -55.8% | 3.20% |
フォルクスワーゲン | 6,167 | 9,758 | -36.8% | 2.30% |
キャデラック | 5,800 | 968 | 499.2% | 2.10% |
アウディ | 5,714 | 4,438 | 28.8% | 2.10% |
日産 | 5,284 | 5,214 | 1.3% | 1.90% |
ポールスター | 2,210 | 2,340 | -5.6% | 0.80% |
ルシード | 1,967 | 1,406 | 39.9% | 0.70% |
ポルシェ | 1,925 | 1,527 | 26.1% | 0.70% |
トヨタ | 1,897 | 1,698 | 11.7% | 0.70% |
GMC | 1,668 | 2 | - | 0.60% |
フィスカー | 1,660 | - | - | 0.60% |
レクサス | 1,603 | 185 | 766.5% | 0.60% |
スバル | 1,147 | 1,359 | -15.6% | 0.40% |
ボルボ | 1,069 | 2,924 | -63.4% | 1.90% |
ジェネシス | 992 | 937 | 5.9% | 0.40% |
ヴィンファスト | 927 | 110 | 742.7% | 0.30% |
ミニ | 742 | 672 | 10.4% | 0.30% |
ブライトドロップ | 256 | - | - | 0.10% |
ジャガー | 256 | 53 | 383.0% | 0.10% |
ホンダ | 19 | - | - | 0.00% |
マツダ | - | 15 | -100% | 0.00% |
合計 | 268,909 | 262,043 | 2.6% | 100% |
こうやって各ブランドのEV販売状況を数字で見てみると、けっこう「意外」な部分もあり、EVラインアップが少なく、そしてその価格性能比が絶望的であると言われていたトヨタとレクサスの販売が意外と多く(トヨタはポルシェに迫る勢いである)、一方でボルボやポールスターといった「電動化に注力しているブランド」がさほど売れていなかったり。
今後EV販売がどうなるのかは五里霧中であり、値下げを行い「過去最低レベルにまで」モデルYの価格を引き下げたテスラが巻き返すのかもしれません。
ただ、この「値下げ」の影響がほか自動車ブランドに影響を与えることは間違いなく、一体今後市場がどう動くのかについては注視を要するところですね。
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