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シャオミの新型SUV「YU7」が24万台を瞬時に受注→BYDがこれに対抗し発売した「価格も安くスペックが上」のTang(唐)Lには誰も反応せず

シャオミの新型SUV「YU7」が24万台を瞬時に受注→BYDがこれに対抗し発売した「価格も安くスペックが上」のTang(唐)Lには誰も反応せず

Image:Xiaomi

| シャオミが新型SUV「YU7」を発表、わずか18時間で24万台の注文 |

ライバルはテスラだけじゃない──BYDや新興EVメーカーへの影響も甚大

2025年6月、中国・北京を拠点とするシャオミ(Xiaomi)は、待望の電動SUV「YU7」を正式に発表し、わずか18時間で24万件のロックイン(返金不可)オーダーを獲得しました。

この驚異的な受注数は、テスラの「モデルY」への影響はもちろん、中国国内のEV新興メーカーやBYDなどの老舗自動車メーカーにとっても大きな脅威となっています。

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BYDの最新フラッグシップSUV「Tang L」、なぜ注目されなかったのか?

中でも特に大きな打撃を受けるのが、深センに本拠を置くBYD(比亜迪)。

同社が発売した中〜大型SUV「シーライオン8」や「宋L」、そして今年4月、(YU7の先行アナウンスに対抗して)発表された「Tang L(唐L)」は、YU7の登場によって売上に大きな圧力がかかると見られています。

シャオミはYU7の販売戦略において、自社のブランド力とコアなファン層をフル活用し、これはいわば“アップル的手法”で市場を熱狂させたのだと考えてよく、この手法によって中国のEV市場に「地殻変動」が起ころうとしているわけですね。

実際のところ、BYD Tang Lは、価格もスペックもYU7に対抗できる製品で、しかし発表当時はメディアの注目も予約数もほとんど得られず、販売面での勢いも「限定的」。

これは、同車が搭載する超高速充電機能──370km分をわずか5分で充電可能というBYDの独自技術──をもってしても、シャオミほどの話題性には繋がらなかったということを意味します。

Tang L vs YU7──価格、スペック、充電性能を徹底比較

項目Xiaomi YU7BYD Tang L
価格253,500元239,800元
駆動方式RWD、235kW(22,000rpm)RWD、500kW(30,511rpm)
トップスピード240km/h240km/h
バッテリー96.3kWh LFP(CATL)100.5kWh LFPブレード(BYD製)
航続距離(CLTC)835km670km
急速充電800V、15分で465km1000V、5分で370km
エネルギー消費13.3kWh/100km17.4kWh/100km

BYD Tang Lは、モーター出力、急速充電、デュアル充電などで技術的にはYU7を上回る部分も多く存在し、しかしエネルギー効率や航続距離、そして「ファンが喜ぶ細部へのこだわり」ではYU7が勝っていると総括していいのかもしれません(その直前にアナウンスされた、SU7 ウルトラの”中国社初”グランツーリスモへの収録による影響も大きいと推測)。

ADAS性能でもガチンコ勝負、しかし実力差は?

なお、ADAS(先進運転支援システム)についても両車は競り合っており、スペック上ではYU7が優勢ですが、実際の使用感においては“やや保守的”という評価もあるもよう。

  • Tang L:DiPilot 300(NVIDIA Drive Orin X搭載 / 254TOPS)
  • YU7:Xiaomi Pro ADAS(NVIDIA AGX Thor搭載 / 700TOPS)

シャオミのブランド力がすべてを凌駕する時代に

それでもBYD Tang Lが消費者の心を引き付けることができなかったのは「価格や技術だけでは勝てない時代が到来した」ということで、つまりは圧倒的にブランド力が勝るシャオミに軍配が上がったということに。

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たしかにBYDは「伝統的な自動車メーカーで知名度もあり販売網も充実し」、その反面シャオミは「家電メーカー出身で、自動車業界では新参者」ではありますが、シャオミのCEO・雷軍(Lei Jun)は中国においてカリスマ的存在で、ブランドイメージの構築や熱狂的なファンベースを通じ、EVの販売を成功させたのだとも考えられます。

実際のところ、同氏はこれまでにもスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクを連想させる発言を行っており、つまり「ビジネス界のカリスマ」を非常によく研究しているのかもしれません。

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その反面、中国の多くの企業では「安易な値引き、見せかけのコストパフォーマンス、キャンペーンなどのプロモーション」に販売を頼る傾向があるといい、しかし中国の消費者はもはやそこに魅力を感じておらず、「未来を創ろうとするリーダー」を支持するという傾向がより強くなっているのかもしれませんね。

参考までに、スマートフォン業界において、「価格もスペックも中国製のスマホに劣る」iPhoneが一定のシェアを確保し続けている理由もここにあるのだと思われ、一方でノキアやモトローラなど、一時は中国市場で圧倒的なシェアを持っていた携帯電話ブランドは「壊滅状態」。

そう考えるならば、今後中国で生き残るには、「明確なビジョンを示し、それを実行する」能力およびアイコンとしての指導者が必要であり、消費者におもねるような姿勢を取る企業は(消費者に敏感にそれを察知され)淘汰されてゆくのだと思われます。

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JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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