
| 現在、クルマに備わるカメラは「単なるカメラ」ではなく、車両制御に大きく関わっている |
よって「カメラの故障」は映像が映らないだけではなく、車両の挙動そのものにも影響しうる
ポルシェが発売したばかりのマカン・エレクトリック(電動マカン)につき8,571台のリコールを実施中。
その理由はリバースカメラ(バックカメラ)に関する不具合の可能性だとされていますが、この問題はまずヨーロッパのディーラーから報告され、そこからポルシェ本社で調査が行われた後に「カメラを固定する接着剤の密閉性に問題があり、そこから湿気やゴミが侵入して画像に影響を及ぼす」ということがわかっています。
原因は詳細は製造時の「プラズマ洗浄ミス」
ポルシェはこの不具合の詳細について、「製造過程での取り扱いミスによるプラズマ洗浄の不完全さ」が原因だと発表していますが、問題のあるリバースカメラは特定の製造ロットに関連しているとされており、現在ポルシェの製品安全部門は影響のある市場に対しそれぞれ個別に対応中。※アメリカではNHTSA(国家道路交通安全局)へとこの問題が報告され、リコール対象国に含まれる
マカン・エレクトリックの「カメラ」修理内容は?画像がぼやけたり、映らない症状が対象
今回のマカン・エレクトリックのリコールにつき、湿気や異物の混入によってリバースカメラの映像がぼやける、あるいはまったく映らないことが典型的な症状だと報告されており、リコール対応としては、カメラの検査と必要に応じた無償交換が行われるほか、関連するソフトウェアのアップデートも含まれる、とのこと。
関連資料によると、スタンバイ状態からカメラがうまく起動しないといったソフト的な不具合もあり、それがアップデートの一因となっている可能性があるようですね。
「基本中の基本」に見える問題、でも今は事情が違う?
バックカメラの故障とソフトウェアの不具合──これは一見すると「無関係」のようにも思えます。
とはいえ、現代のクルマはカメラが精密機器化しており、しかも屋外の過酷な環境に常に晒されているため、こうした「関連する不具合」不具合は決して珍しくありません。
さらに最近の車両はソフトウェアが非常に複雑化しており、複数のセンサーや機能と統合されることで、ひとつの不具合が広範囲に影響を及ぼすこともあり、かつてはただの「バックカメラ」だったものが、今では後方交差点警告や自動ブレーキと連動する安全システムの一部になっているわけですね(いわゆるソフトウエア定義車両の弱点でもある。これまではスタンドアローンとして機能していたものがシステム内に組み込まれることで、その不具合があちこちに影響してしまう)。
カメラは今やクルマにとって“命”のような存在
NHTSAへの提出書類によれば、「バックカメラに画像が表示されないことは視界を制限し、事故リスクを高める」と記されており、しかし幸いなことに、現時点でポルシェは現時点で事故や怪我に関する報告を受けておらず、ただしちょっと面白いのはNHTSAの文言に「皮肉が含まれていること」。
要約すると、「人間はもともと肉眼を持って生まれているのだから、それでしっかり周囲を確認すれば事故は防げるはず」というニュアンスが含まれており、これはある種の警鐘であると受け取ることも可能です。
参考までに、北米においてバックカメラが義務化されたのは2018年以降で、それまでドライバーたちは“目と耳”だけで後方を確認していたわけですね。
しかし、最近のクルマは安全性確保のためにウインドウが小さくなり、ピラーが太くなって視界が悪化しているため、バックカメラに頼る傾向が強くなっています。
そしてその結果、「カメラが映らないこと」自体が危険と認識されるというのが現在の状況であり、技術に頼る生活が進む中、センサーやカメラに“依存しすぎる”ことのリスクについて再考すべき時期にさしかかっているのかもしれません。
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