
Image:Ferrari
| さすがにこのコレクターはフェラーリの「ブラックリスト」入りだろう |
インスタグラムへの投稿を見るに、もともとフェラーリに対して愛情を持たない人物なのかもしれない
フェラーリが威信をかけて開発したブランド初の電気自動車(EV)「ルーチェ(Luce)」。
革新的な未来への一歩となるはずだったこのハイパーEVを巡り、今、世界のスーパーカーコミュニティを揺るがす前代未聞のスキャンダルが起きているというのが今回のニュース。
フェラーリは伝統的に、希少な限定モデルを一般販売せず、ブランドが認めた一握りの優良なコレクター(VIP)のみへと直接アプローチして手売りする手法を取っていて、当然ながら今回のルーチェについてもも選ばれしVIPたちに先行して商談メールが送られることとなったのだそう。
しかし、あろうことかその極秘のアプローチメールと、それを受け取った超大物コレクターからの「冷酷すぎる返信内容」のスクリーンショットがネット上に流出・拡散されてしまい、これがネット上の匿名のアンチによる批判ならフェラーリも無視できたかもしれませんが、しかし今回の対象は彼らがまさに「買ってほしい」と認定したターゲットそのもの。
自動車業界のEVシフトが直面する、富裕層のリアルな“本音”を見てみましょう。
この記事の要約
- 極秘メールの流出: フェラーリが初EV「ルーチェ(Luce)」の限定枠を販売するため、手塩にかけたVIPコレクターへ送った勧誘メールとそれに対する容赦ない返信内容がネット上に流出
- 大物コレクターの猛烈な拒絶: ターゲットとなった有名コレクターのジェフリー・チェン氏は、「絶対に乗りたくない」「フェラーリの名に値しない」と一蹴し、セールス担当者に同情すらしてみせる
- デザインへの痛烈な批判: 単に電気自動車であることへの反発だけでなく、「世界最高峰のイタリア人デザイナーが承認したとは信じがたい、まったくイタリア車らしさのない醜悪なデザイン」とスタイルを酷評
- 跳ね馬のステータスへの疑問: チェン氏は「テスラやリヴィアン、ルーシッドを買ってプライベートジェットで旅行した方がマシ」とし、これを買うのはフェラーリの限定車購入権(割当システム)のランクを上げたい人だけだと断言
いったいどういった「やりとり」が行われたのか
流出したスクリーンショットによると、ことの発端はフェラーリのセールスコンサルタントであるリー・パーキンス氏が、世界的なハイパーカーコレクターとして知られるジェフリー・チェン氏(Instagramアカウント:@speedy_jeff)に送った一通のEメール。
パーキンス氏はメールの中で、新型EV「ルーチェ」を「フェラーリが描く未来のビジョン」と表現。
EVになっても、ドライビングエクスペリエンスは跳ね馬のDNAに完全に忠実であることを熱心にアピールし、さらにルーチェの購入枠(アロケーション)や注文プロセスについて優先的に案内したいという内容にて「チェン氏をお気に入りのVIPとして」誘ったわけですね。
しかし、チェン氏から返ってきた言葉は、フェラーリ側の期待を木っ端微塵に打ち砕くもので・・・。
「本気で言っているのか?冗談だろう」
チェン氏はそう切り出すと、「死んでもこんなクルマには乗りたくない」と猛烈に拒絶。さらに、このクルマを売らなければならないフェラーリの営業担当者に対して「同情を禁じ得ない(ほぼ恥ずかしく思う)」とまで書き、ルーチェを「忌まわしき存在(Abomination)」と切り捨てることに。
なお、チェン氏の怒りは単に「フェラーリがガソリンエンジンを捨ててEVを作ったから」という理由だけではなく、彼が最も耐え難かったのはその「スタイリング(デザイン)」にあり・・・。
フェラーリ初のEV「ルーチェ(Luce)」を巡る評価の比較
| 評価のポイント | フェラーリ側の主張(セールス) | 大物コレクター(顧客)のリアルな本音 |
| デザインと伝統 | ブランドの未来を担う、革新的かつ最先端のスタイリング。 | 「ヒョンデやキアのバッジすら値しない」「まったくイタリア車らしくない醜悪さ」。 |
| 走りのDNA | EVになっても跳ね馬の走りの血統、エモーションは健在。 | テスラやリヴィアン、ルーシッドなどの既存の優秀なEVで十分代替可能。 |
| 購入する価値 | 選ばれたエリートオーナーだけが手にできる至高のステータス。 | これを買うのは、次の限定ガソリン車(12気筒モデル等)の購入権を得るためにフェラーリへの忠誠心を見せたい(機嫌取りをしたい)顧客だけ。 |
チェン氏はメールの中で次のように持論を展開し、フェラーリのデザインの方向性を痛烈に批判しています。
「ルーチェのデザインは、ヒョンデやキアのバッジをつけることすらおこがましい。フェラーリのバッジなど言語道断だ。間違いなく世界最高峰の自動車デザイナーが集まっているはずのイタリア人のチームが、これほどまでに『イタリア車らしさ』を失ったデザインを承認したとは、文字通り信じがたい。あらゆるレベルにおいて完全なジョークだ」
さらに、コストパフォーマンスの観点からも、「テスラ(Tesla)、リヴィアン(Rivian)、ルーシッド(Lucid)といったトップクラスのEVを購入し、浮いたお金でプライベートジェットを借りてバカンスに出かけた方がよほど有意義だ」とも指摘しています。
浮き彫りになったフェラーリ独自の「アロケーション(割当)システム」の闇
この流出劇の中で、最も核心を突いていると話題になっているのが、チェン氏が指摘した「誰がこのEVを買うのか」という点です。
フェラーリの世界には、将来発売されるであろう超限定モデル(ラ・フェラーリの後継車や特別な12気筒モデルなど)を手に入れるために、ディーラーでの購入履歴を積み重ねて「優良顧客スコア」を上げなければならないという暗黙のルール(アロケーションシステム)が存在するという「都市伝説」があり、チェン氏は、「ルーチェを喜んで買う人間がいるとすれば、それはクルマが欲しいからではなく、フェラーリ社内での自分の『立ち位置』を良くして、次の本命のガソリン限定車を割り当ててもらうための点数稼ぎをしたい奴らだけだ」と断言しているわけですね。
そしてメールの最後を、「この私の返信を、そのままフェラーリの経営陣(エグゼクティブ)に転送して見せてくれ」という挑発的な言葉で締めくくっており、つまり「これまで築いてきた地位を奪われるリスクを承知してまで」ルーチェを全力で拒否したということに。※同氏はケーニグセグがお気に入りのようである
結論
自動車の歴史において、フェラーリというブランドは常に「人々の憧れ」であり、顧客は跳ね馬に選ばれることを誇りとしてきましたが、しかし、今回のルーチェを巡る流出劇は、ブランドとトップコレクターとの間のパワーバランスが、EVシフトという過渡期において変化しつつあることを証明しています。
インターネット上の掲示板やSNSで一般のクルマ好きが「EVのフェラーリなんて認めない」と騒ぐことと、数々のハイパーカーを実際に所有し、フェラーリにとって最重要顧客であるはずのVIPが「死んでもいらない」と直接突きつけることとでは、その重みが全く異なっていて、フェラーリが直面している「電動化への壁」は、技術的な問題以上に「顧客が求めるエモーションやブランドのヘリテージ(遺産)をどう守るか」という、極めて精神的な問題となっていることが浮き彫りとなったのが今回の一件なのかもしれません。
いくら静かで速く、ハイテクなEVであっても、そこにイタリアの情熱や、息をのむような美しい造形美が伴わなければ富裕層は冷酷にそっぽを向く――この流出事件は、すべてのラグジュアリーカーブランドにとって、電動化時代を生き抜くための大いなる教訓となる可能性を秘めています。
ただ、ぼくが思うのは、こういった超富裕層にとって「1億円のクルマ」は高い投資ではないのだとも考えていて、たとえ売却時に価格が下がろうともそれが「0円」となるわけではなく、仮にルーチェを購入することで限定モデルの生産枠を回してもらえるのであれば、ルーチェの購入と売却による損失分は「一瞬で元を取れる」こととなり、トータルで考えれば「損はしない」話ではないかということ。
そう考えるならば、今回の話はちょっと理解しがたい部分もあり(正直、ぼくにこれだけのお金があり、ルーチェの話が回ってくれば、2つ返事で購入するだろう)、少しモヤっとした印象を残す一件だとも捉えています。
フェラーリをコレクションするということは「歴史の証人になる」ということ
そしてぼくが思うのは「フェラーリのコレクターになるということは、フェラーリの歴史の証人になる」ということでもあり、つまりそのクルマ単体ではなく「流れ」を考えて購入すべきだとも考えており、その意味では歴史の転換点となるルーチェはコレクションの中核となる可能性も。
たとえば「ウルトラマン」や「仮面ライダー」「ガンダム」「スター・ウォーズ」「スタートレック」などにおいて、その単発の作品を愛するのも素晴らしいことではありますが、シリーズ全体を一つの流れとして愛することも重要なんじゃないかとも考えており、中には「駄作」と評されるものもあるかもしれませんが、それはそれで意味があるとも捉えています。
もう一つ例を挙げるとするならば、ぼくは生粋の吉野家ファンでもあるのですが、かつて「狂牛病」にて吉野家が苦境に陥った時、「牛」を捨てて「豚」に走った吉野家に行くかどうか迷ったものの、ぼくが下した判断は「それでも吉野家に行く」。
その理由は、ぼくは単に「牛丼が好き」なだけではなく「吉野家そのものを愛している」からであって、吉野家が苦しい状況にあるときこそ、吉野家に率先して行くのがぼくの使命であると感じたわけですね。
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参照:speedy_jeff











