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エレクトリックモーターは内燃機関にけして「取って代わることができない」。ガソリンエンジンは「五感」を刺激し人間の記憶に深く刻まれることがその理由か

フェラーリのエンジンとf1マシン
Life in the FAST LANE.

| 「感情論」ではなく「論理的に」ガソリンエンジンがエレクトリックモーターに勝る理由を考えたい |

重要なのは「どれだけ心に残るか」だと考えられる

自動車業界の電動化(EVシフト)が進むにつれ、「ガソリン車は時代遅れだ」という意見、「いやEVにはロマンがない」という反論の間で”終わりのない激しい議論”が続いているのがいま現在。

もちろんEVを頭ごなしに否定するわけでもなく、どちらの言い分も一理あって、たとえばクルマに興味がない人々にとればEVは極めて効率的で優れた「移動のための家電」であるのもまた事実かと思います。

しかしながら、ぼくらカーガイが確信しているのは「エレクトリックモーターによって走る乗り物は内燃機関(エンジン)が持つ特別さには決して届かない」ということで、トランスミッションを擬似的に再現し、どれほど素早くトルクを分配できたとしても、エレクトリックモーターには絶対に真似できない領域が存在し、ここで「エレクトリックモーターが内燃機関の代わりになれない決定的な理由」を”人間の「五感」と「本物への渇望」”という視点から考察してみましょう。

フェラーリのエンジンとF1マシン
Life in the FAST LANE.

この記事の要約

  • EVは優れた「家電」だが万能ではない: 電気自動車(EV)は移動手段や環境対策の「パズルの1ピース」としては優秀だが、地球の気候変動をすべて解決する魔法の道具ではない
  • 内燃機関は「五感の饗宴」: 疑似ギアチェンジやトルク制御がどれほど進化しても、数千回の「爆発」を推進力に変える内燃機関(ガソリンエンジン)が持つ官能性には、エレクトリックモーターはけして追いつけない
  • 音と匂いが呼び覚ます原始的な感情: 爆発に伴うサウンドは、人間の「戦うか逃げるか」という原始的本能を刺激し、排気の匂いは幼少期の記憶やエモーションと深く結びついている
  • デジタル時代だからこそ求める「本物(オーセンティシティ)」: スピーカーの擬似音やシートの振動といった「シミュレーション」があふれる現代だからこそ、人間は合成できないリアルな機械の温もりと対話を求めている

五感で紐解く内燃機関の官能性とEVに足りない「4つの要素」

「内燃機関(ICE)は、人間の五感をすべて満たしてくれる至高の饗宴である」――。これは決して古臭いノスタルジーや感情論ではなく、人間の脳と身体が本能的に求める科学的な反応です。

エンジンという機械は、シリンダー、ピストン、排気管が完璧に調和して初めて「独自の音、匂い、触感、そして美しさ」を生み出しますが、それらはデジタル技術でどれほど精巧にサンプリングしても決して人工的には合成しきれない「生(ナマ)」のエネルギーというわけですね。

ランボルギーニのエンジン
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そこでなぜぼくらはガソリンエンジンにこれほど惹かれるのか。

人間の感覚器が捉える「領域」を4つの要素に分解し、擬似技術(シミュレーション)を施した最新EVと比較してみましょう。

内燃機関が持つ「五感への刺激」と最新EVの疑似技術比較

感覚要素内燃機関(ガソリン・ディーゼル車)の実態最新EV(電気自動車)による再現アプローチ
聴覚(Sound)マルチシリンダー(V8/V12等)特有の複雑な倍音。人間の闘争本能を刺激する。車外・車内スピーカーからの擬似エンジン音(ヒョンデ「アイオニック5 N」等)。
嗅覚・味覚(Smell)オイルやガソリンが燃焼した独特の匂い。記憶や感情に最も強く直結する。再現不可能。(モーターやバッテリーが臭う時は故障や火災のサイン)。
触覚(Touch)7,000〜9,000回転まで回るエンジンの微振動。ペダルやシフトを通じて車の状態を察知。シートやステアリングに仕込まれたアクチュエーターによる擬似的な振動。
視覚(Sight)「機能美」を極めたエンジンベイ。美しいエキゾーストパイプの取り回しなど(De Tomaso等)。モーター「カバー」。フェラーリは「ガソリンエンジン風に見せるモーター」の特許を出願中。
ヒョンデ アイオニック5N
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フェラーリ
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1. 聴覚:脳の奥深くに届く、調和された爆発音

科学的な研究によると、往年のV10やV12エンジンが放つ高周波サウンドは、人間に「猛獣に追われている」かのような野生の闘争本能(闘争・逃走反応)を呼び覚まし、脳の最も深い部分を刺激して興奮度を最大化させることが分かっています。

加えて、「音」は古くから人を鼓舞するために用いられており、軍隊における「突撃ラッパ」もそのひとつであると考えられ、「マッドマックス:怒りのデス・ロード」のギターマンもこれを体現する存在であると考えていいのかもしれません。

加えて、太古の昔より「火」「爆発」は人間の本能に直接訴えかけるものとしても知られていますが(キャンプで焚き火が人気なのも同じ理由かも)、爆発というエンジンの鼓動を前にして、ぼくらは抗うすべを持たないのだとも考えられます。

2. 嗅覚:エレクトリックモーターが絶対にコピーできない領域

五感の中で、最もエモーショナルな記憶と結びついているのが「匂い(嗅覚)」でもあり、ふとすれ違った人の香水の匂いによって、一瞬にして青春の思い出が鮮明に蘇るのという体験をした人も少なくはないかと思います。

エンジンが始動した瞬間の”ガソリンとオイルが混じり合った独特の排気の匂い”。

ガレージにクルマを停め、クルマから降りた瞬間に漂ってくるあの匂い。

それらは環境の観点からはネガティブな副産物かもしれませんが、クルマ好きにとっては「父親とガレージでスカイラインのインライン6(直列6気筒)をいじった記憶」や、「初めてサーキットで味わった高揚感」といった、人生の輝かしい瞬間と分かちがたく結びつくものでもあり、EVのバッテリーやモーターから焦げ臭い匂いがしてきたら、それはただの「異常事態」であり、エモーションはそこには存在せず、むしろピンチということに。

3. 触覚:機械と肉体が一体化する瞬間

タコメーターの針が7,000、8,000、9,000回転へと跳ね上がっていくときの、スロットルペダルやシートを通じて身体に伝わる固有のバイブレーション。ドライバーはこの微細な振動を無意識のデータとして受け取り、車の限界を探りながらマシンと対話します。

ランボルギーニのエンジンとアヴェンタドールのローリングシャシー
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シフトレバーを握り、レブリミット直前で次のゲートへと滑り込ませるときに感じる、金属パーツ同士が噛み合う緻密な手応え。フロントタイヤに荷重が乗り、ブレーキペダルが足の裏で震える感覚。これらが重なり合ったとき、機械という野生の獣と、人間の有機的な肉体が一つに融合するというわけですね。

たしかにこれを「再現し」でEVへと搭載することはできるかもしれませんが、それはあくまでも「後づけ」のものであって、「本物」が発する必然(あるいは副サンブル)としての触覚ではなく、どこかしらぼくらに違和感を感じさせるものになるのかもしれません(主従が逆になっている)。

結論:合成だらけの世界だからこそ、私たちは「本物(オーセンティシティ)」を渇望する

近年、自動車メーカーもEVの「エモーショナル性の欠如」に危機感を抱いていて、ヒョンデの「アイオニック5 N」のように、非常に精巧な擬似シフトチェンジやスピーカーによるエンジン音を再現した素晴らしいEVが登場していて、これらはドライバーを楽ませる工夫として大いに称賛されるべき存在です。

しかし、それらはどこまで行っても「洗練されたシミュレーション(偽物)」にしか過ぎず、ぼくらは今、人工物やフェイク、デジタル合成であふれた「シンセティック(合成)な時代」を生きています。

スマホの画面でパチパチと音を立てる焚き火の動画を眺め、電気ヒーターで暖を取っても、本物の暖炉の前でパチパチと爆ぜる薪の炎を見つめるときのような、魂の底からじわっと湧き上がる温もりは得られません。

人生においてぼくらの心を本当の意味で熱く燃え上がらせるものは、単一の感覚のコピーではなく、「音、匂い、視覚、触覚、そしてその場の空気感が織りなす、再現不可能な奇跡のシンフォニー」だからであり、ガソリンの爆発をそのまま命の鼓動へと変える内燃機関はまさにその「本物」の象徴です。

フェラーリのエンジン
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もうひとつ例を挙げるならば、たとえ「同じ料理」であっても、おだやかな光を放つランプの下で、生演奏とともに、暖炉を前にしていただく場合と、無機質なLEDランプの下で、スマホから流れる圧縮音源を聞きながら、電気毛布にくるまって食べる場合とでは「どちらが感情を刺激し、どちらがより鮮明に、かつ素晴らしい体験として記憶に残るのか」は明白だと思います。※あるいは、同じ味のものを、宇宙食のようなチューブで摂取するのか、それとも皿の上に美しく盛り付けて食べるのか

つまるところ、ガソリンエンジンのほうが、「人間の本能を刺激する要素を(エレクトリックモーターに比較して)より多く内包し」、それが故に感情を揺さぶり、記憶に残るのだとも考えることができるのかもしれませんね。

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参照:CARBUZZ

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