
| ただしボクはナイキの再生を信じている |
いったい今、ナイキに何が起きているのか
さて、ナイキが9月21日からS&P100から外れることに。
これはナイキの株価下落によってS&P100の中での存在感が低下したことが背景にあり、ここでその理由、ナイキの直近の状況や現状について見てみたいと思います。※一方でS&P500の構成銘柄としてはそのまま残る。S&P100は、S&P500の中から選ばれた大型・代表的企業100社で構成される指数である
この記事の要約
- ナイキの株価が低迷し企業価値が低下、S&P100から外れることに(2026年9月21日)
- ナイキは巨大になりすぎたゆえにブランドイメージが希薄化
- 一方でHOKAやonのようにイメージを先鋭化し、希薄化したナイキから「特定分野の」シェアを奪うライバルも
- ナイキは「直販」に切り替えたことで消費者に対する露出の機会を失う
- しかしナイキにはジョーダンはじめ強力な資産がある

なぜナイキがS&P100から外れるのか?
ナイキがS&P100から外れる大きな理由はここ数年の株価・企業価値の低下だとされ、ナイキはかつて「世界最強クラスのブランド」の一つではあったものの、現在では以下の状況が重なったことでその存在感が希薄化してしまうことに。
- 中国市場の低迷
- Adidasなど競合との競争激化
- On、HOKAなど新興ブランドの台頭
- Nike直販モデルへの過度な依存
- 商品のマンネリ化
- 売上・利益成長の鈍化
- 株価の大幅下落
実際のところ2026年9月10日のナイキ株は約36.62ドルまで下落し、52週高値からも52%以上下落していて、しかしこれは「ラグジュアリースポーツブランド全般」に起きている問題を代表する事例であるとも考えられます(ルルレモン、モンクレールも同様で、株価の下落に直面している)。
加えてアナリストからも中国での成長見通しやスポーツウェア市場の競争激化を懸念する声が出ており、短期的な「立て直し」は難しいとも見られているのが現状です。

ナイキの現在地
ナイキの株価は2021年頃には170ドル近辺まで上昇しており、ところが現在は30ドル台。
つまり「世界最高の売上を誇るスポーツブランド」なのに、株式市場ではかつての評価から大きく失われているという状況です。
ナイキは終わったのか
そしてこの状況について簡単に言い表すと「ブランド力は依然として非常に強いが、商品力・販売戦略・成長力が弱くなり、そのギャップを株式市場が厳しく評価している」。
新CEOのElliott Hill氏のもとで再建を進めているものの、まだ市場からは十分な信頼を取り戻せておらず、2026年9月時点でも、10月の決算や11月の投資家向け説明会が再建策の重要な評価ポイントと見られています。

そこで考える必要があるのが「なぜナイキの商品力・販売戦略・成長力が弱くなったのか」。
ナイキが「強すぎるブランドゆえの成功体験」から抜け出せなくなった(限定 / コラボ商法に依存しすぎた)との見方が強い一方、On、HOKA、ニューバランス、アシックスなどが「ナイキが弱くなった部分を狙って急成長した」というのが現在のラグジュアリースポーツブランドの構図ともいえるもの。
これはよくある「大きな成功を収めたブランドが、そこから新しい成功体験を築くことができず、その傍らでライバルが追い上げてきている」という状況だとも考えられます。
ナイキの「2021年→2026年」を見てみよう
ナイキの株価のピークは2021年11月の約179ドルで、しかし2026年9月10日の終値は36.62ドル。
つまり約5年間で-80%弱という凄まじい下落を見せており、9月10日時点でも52週高値から52.4%下落しています。
以下はその業績の推移ですが、2022~24年は売上高が伸びていたものの、2025年度には売上高が前年比10%減の463億ドル、純利益は約43%減まで落ち込むことに。
| Nikeの事業年度 | 売上高 | 純利益 |
|---|---|---|
| 2022 | $46.7B | $6.05B |
| 2023 | $51.2B | $5.07B |
| 2024 | $51.4B | $5.70B |
| 2025 | $46.3B | $3.22B |

2021年――Nike絶頂期
なお2021年はNikeにとって非常に重要な年であり、コロナ禍によって、
- スニーカー需要増加
- スポーツウェア需要増加
- Nikeアプリ
- EC
- DTC(Direct to Consumer)
が一気に伸び、特にナイキはそれ以前から進めていた「NIKE Direct(ナイキダイレクト)」への移行がコロナ禍で一気に成功したことで市場が「ナイキはスポーツ用品メーカーではなく、巨大なデジタル・ブランド企業になる」という評価を下し、これによって株価が(2021年11月に)179.10ドルまで上昇することに。
2022年――「卸売を切る」という戦略が後々効いてくる
そしてこの「ナイキダイレクト」によって「消費者への直販(ネットおよび自社店舗での販売)」を強化し、その反面「卸売店の整理・縮小」を行うのですが、これが思わぬ問題(副作用)を招くこととなり、というのも量販店や百貨店、スポーツ専門店などでの露出が減って消費者との接点が失われてしまい、そこを狙ったのが上述の「On、HOKA、ニューバランス、アシックス」などであったというわけですね。※これは想像以上に大きな問題であったようで、2025年にナイキは卸売チャネルを再び重視する方針を発表している
こういった傾向を見るに、ナイキはおそらく「圧倒的、かつ他では代えられないブランド価値を持っている」と考えて直販スタイルに切り替えたものの、実際には「消費者はより目につきやすいところでスポーツシューズやスポーツウエアを購入しており、それがナイキであるかどうかは気にしていなかった」ということになりそうですね。

2022年――在庫問題
そして2022年頃から大きな問題になったのが在庫過多。
コロナ禍の需要を読み違え、「もっと売れる」と発注した商品が余ってしまい、これによって以下の対策を実施することとなり、これが上で示したように「売上高はそれほど減っていないのに利益が半分に」「ブランド価値の毀損」という結果を招きます。
- 値引き
- アウトレット販売
- 在庫処分
- 商品の絞り込み
2023年――「Nikeの商品が少し古くなった」
ここからが非常に重要で、ナイキ最大の問題は、「Nikeが嫌われた」ことではなく、むしろ、「Nikeじゃなくてもいい」という消費者が増えたこと。
これは「スポーツ」分野だとアシックスやアディダスなどが勢力を強めたこと、「ライフスタイル」分野ではHokaやonの力が強くなったことが考えられます。
そして他勢力が成長したことについても一考の余地があり、たとえばナイキが強いのは「サッカー、バスケットボール、ランニング、トレーニング、ライフスタイル、ファッション」など非常に幅広い分野となっていますが、Onは最初から「プレミアム・ランニング」に集中しており、つまるところ「積極的にOnを履く理由」「専門性」をが非常に分かりやすく訴求することに成功し、「感度が高い人はナイキよりもon」というイメージづくりを行ったというわけですね。※ただし現在はonも需要が一巡し調整局面に入っている
こういった感じでナイキはその牙城を「局所的に」、しかし同時多発的に切り崩されたというのが「販売減少」の原因であるとも考えられます。

中国市場も非常に大きな問題
Nikeにとって中国は重要市場ではありますが、ところがここでも苦戦してしまい、2026年時点では、Nikeの中国売上は2021年から約30%減少したと報じられています。
これには以下の要因が重なっているとされ、ある意味では「EVにシェアを侵食される日米欧の既存自動車メーカー」にも似ているかもしれません(飲食だとハーゲンダッツ、スターバックスも同様で、両者ともドル箱であった中国を現地のブランドに奪われている)。
- 中国経済の減速
- 中国ブランドの台頭
- Anta
- Li-Ning
- 消費者の国産ブランド志向
- Nikeに対するブランドイメージの変化

現在のスポーツブランド勢力図
上で「プレミアムスポーツブランドの苦戦」について触れましたが、この業界についてナイキを含めライバルたちをざっくり整理するとこんな感じ。
| ブランド | 現在の状況 | 強み |
|---|---|---|
| Nike | 🔴 再建中 | ブランド、Jordan、スポーツ全般 |
| adidas | 🟡 回復傾向 | Samba等、サッカー、ライフスタイル |
| On | 🟢 高成長→株価調整 | プレミアムランニング |
| HOKA | 🟢 成長→株価調整 | 厚底・クッション |
| ASICS | 🟢 強い | ランニング |
| New Balance | 🟢 非上場・好調 | ライフスタイル+ランニング |
| Lululemon | 🔴 2026年苦戦 | アスレジャー |
| Puma | 🟡 苦戦 | スポーツ+ファッション |
| Under Armour | 🔴 苦戦 | 北米スポーツウェア |

ナイキの「光と影」
ナイキは巨大になりすぎたがゆえに「ブランドの希薄化」を招き、そしてゲリラ戦に応じることが難しくなってしまったという問題を抱えており、例えばかつては「エアフォース1」「「ダンク」「ジョーダン」「エアマックス」あたりが中心ラインアップであったものの、最近だと非常に多くのシリーズ展開を行っており、消費者からすると「結局、今のNikeを代表する最新商品は何なのか」がわかりにくくなってしまったという現状も(そして新しいラインアップが次々出ては消える)。
その一方でナイキには他社にはない「とんでもない資産」があり、それは「ジョーダン」ブランド、そしてNBA、サッカー、NFL、オリンピック、さらにアンバサダー契約を結ぶ個別のトップアスリート、さらには「スウォッシュ」マーク。
これらがある限りナイキがその輝きを失うことはないであろうとも考えており、現在進める「再建計画」が奏功すれば再び以前のようなポジションを取り戻せるのかもしれません。※多くの人が忘れているかとは思うが、ナイキはかつて1人の若者が創業し、プーマやアディダスに立ち向かって「1世代で」ここまで大きくなった会社である。そしてかつて、街なかでスニーカーを履くという習慣がなかった(スポーツをする人以外はスポーツシューズを履かなかった)時代に創業し、今では「街なかで誰もがスニーカーを履く」までに世界を変革した会社でもある
実際のところ、2026年に入ってOnの株価も大きく調整しているため、「消費者は移り気」ということも明確になっていて、こういった時だからこそナイキの持つ資産が「生きてくる」のでは、とも考えています。

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