果たしてここに注力する価値があるかどうかは疑問に思えてくる
昨年、なにかと世間を賑わせた「空飛ぶクルマ(フライングタクシー)」。
アウディとイタルデザイン、そしてエアバスがここへ参入し、デロリアン創業者の甥が立ち上げた会社、ロータス/ボルボの親会社である吉利汽車、メルセデス・ベンツとドバイのスタートアップとのジョイント、そしてトヨタも研究を開始した、という状況です。※基本的には自動運転、そして都市部での移動を前提としている
仏エアバス「あと10年かかる」
なお、エアバスは「2018年に実験を行う」としていたものの実験の様子や結果は報道されず(ミニチュアでの実験は行っている)、トヨタの場合は「飛ぶ前に失敗」し、しかしそれはまだいいほうで、残る殆どは「現実的に実験もできていない」というのが現実でもありますね。※ドバイのVelocopterは試験飛行に成功したと言われるが乗員を想定した重量物を載せてない
そんな中、世界最大の航空宇宙機器開発製造会社である「ボーイング」版の空飛ぶクルマ「パッセンジャー・エア・ビークル=PAV」がテストを行い、「60秒間だけ浮いた」と公開。
BREAKING: It’s another first for us. Along with @AuroraFlightSci we’ve successfully tested our passenger air vehicle. We continue our progress towards a safe and sustainable urban mobility ecosystem. #TheFutureIsBuiltHere pic.twitter.com/hwuw4d5jmz
— The Boeing Company (@Boeing) 2019年1月23日
つまるところ、世界最大の航空機関連会社でも「60秒浮くのがようやく」ということで、これを考えるにまだまだ実用化への道は遠そう。
ただ、ボーイングとしては現時点でも「大きな進歩」だとしていて、世界で最も安全で効率的な移動手段として期待できると述べており、ここからさらに研究を進める、としています。
今回のプロトタイプは理論上では80.47キロの移動距離をカバーし、そのサイズは全長9.14メートル、幅8.53メートル。
空飛ぶクルマはたぶん実現できない
なお、ぼくは空飛ぶクルマはたぶん実現できないだろうと考えていますが、その大きな理由は「安全性」。
いずれの会社も自動運転をその前提としていますが、乗員の体重や荷物がバラバラで、かつ天候(雨や風)も多種多様な中で安定した飛行ができるとは思えないわけです。※ちょっと風が強いと「運休」になるようであれば、それは交通手段としてアテにはできない
かつ、現在の性能だと「乗員一名と荷物」がせいいっぱいで、家族4人が移動するには「4台」が必要。
加えて今回のボーイングの機体のように「10メートル四方」であれば、家族4人移動するのに「40メートル四方の駐機スペース」が必要で、とても「効率的」とは言えないんじゃないか、というところ。
さらに4台に使用する電力、コストもまた膨大なものとなるので「一般的な家庭での移動」としては現実的ではなく、「それだったら地面を走るクルマのほうがいいんじゃないか」とも。
地面を走るクルマには「渋滞」という問題もありますが、空飛ぶクルマにしても駐機場まで、そしてそこからは必ず移動する必要があり、待ち時間や乗り換えを考慮するとやはり時間的にも優位性があるとは考えられない、と思います。
そして一件でも「街中に墜落」すれば社会的に「空飛ぶクルマ」は許されなくなるでしょうし、技術面以外での障壁も高く、セグウェイやドローンと同じく「限られた場所でしか運用できず」、実用性は低いままに終わるのかもしれません。
ただ、ぼくは夢想家なのでこういった新しい技術については可能性を感じており、現在のインフラに空飛ぶクルマを割り込ませることは難しくとも、オリンピックや万博という「街ごと新しく作れる」場合や「国家規模のプロジェクト」であれば十分に実現可能だろう、とも考えています。
VIA:BOEING